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ポータル戦争
――「ヤフー」を超えろ!

“ネット流通カード”最大手へ
「楽天・みずほ体制」結成



 われても末にあわんとぞ思う――。3月10日に開かれた「楽天、国内信販買収」の記者会見の席。仲人役となった齋藤宏みずほコーポレート銀行頭取は、かつての部下、三木谷浩史楽天社長に向けて恋人を思う和歌を捧げた。

 これに対し、深々と頭を下げる三木谷社長。会見の席には、まるで、「楽天、みずほグループ入り」かのごとき雰囲気が流れた。

親密だった三井住友との関係

 楽天はそもそも、ポータル(玄関)サイト「ライコス」(現「インフォシーク」が吸収合併)、ネット証券「DLJディレクトSFG証券」(現楽天証券)の買収などを通じ、メーンバンクでもある三井住友銀行を擁する三井住友グループと親密な関係を築いてきた。

 金融事業においては、ネット証券参入に続き、昨年8月に三井住友カードと提携してクレジットカード「楽天カード」を発行している。

 それだけに、三井住友グループとの関係は今後、楽天グループが決済周りのサービスを含む金融事業を拡大していく中で、より深まるであろうと考える向きは多かった。

 ところが、楽天はみずほがメーンバンクを務める中堅信販会社、国内信販を約165億円で買収することとなった。国内信販は楽天の業績規模を上回り(直近の売上高ベースで楽天は約455億円、国内信販は約582億円)、与信額相当の多額の負担が必要となる信販業。今回の買収により、今後、「金融機関は重要な事業パートナー」(三木谷社長)になることを考えると、みずほが楽天の実質的なメーンバンクになる可能性も高い。

 実際、国内信販が「楽天KC」と社名変更して10月から本格展開するクレジットカード「楽天KCカード」(仮称)について、金融部門を担当する國重惇史楽天常務は「(『楽天カード』ではなく)『楽天KCカード』を中心にやっていく」と決意を語る。

 しかも、「楽天カード」を展開する中、「楽天KCカード」を発行することについて、「三井住友とも話し合わなければならない」(三木谷社長)と三井住友カードに事前説明がなかった可能性も示唆している。

 楽天がみずほとの関係を深めたことについて、金融界の中では「三井住友(フィナンシャルグループ)の前期(2005年3月期)最終利益が大幅赤字(約2400億円)になることが関係しているのでは」「メガバンクの金融コングロマリット化によるカード事業再編で、三井住友は出遅れている」「みずほは流通系カード事業に強い」――など諸説ある。

 楽天がみずほとの関係を深めた真意については分からないが、今回の買収により、ネット販売を含む大きなポテンシャルを持つ流通系カードが誕生する可能性は高い。【つづく】
(島田昇)

注目の人「三木谷浩史楽天社長」


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