2002.5 無料公開記事 ネット販売2002.5
 
特集1 「マルチチャネル販売」の研究<1>
ここまできた!通販企業のネット活用「クリック&カタログの現状
 
4.「化粧品通販のクリック&カタログ」

(1)カタログの認知度(2)顧客とのコミュニケーションの質と量(3)商品訴求方法の3つを拡大していくという狙いのもと加速する「クリック&カタログ」という考え方。化粧品や健康食品などを商材とする大手企業も積極的にこれに取り組むが、そこにはリピート通販ならではの独自の手法や考え方も垣間見える。そこで事例研究として、化粧品通販のオルビス(本社・東京都品川区、春名敏弘社長)の取組みをみていく。


キーワードは「新規の開拓」と「サービスの向上」

 「ベースとなるのはカタログ。そこにネット、または店舗という新しいチャネルをどうリンクさせていくのかということですね」。
 オルビスのマーケティングを一手に管轄する高谷成夫氏(マーケティング1・2・3部長)は同社のマルチチャネル戦略をこう位置付ける。
 ポイントとなるキーワードは、「新規顧客の開拓」と「サービスレベルの向上」。この二点を重点に、ネットへの取組みを行っているとする。
 同社の通販展開において、新規客開拓の基盤となってきたのが、「折込チラシ」と「雑誌広告」。これを軸に顧客リストの構築を進めてきた。そうした中で新しい顧客にアプローチする手段として、ネットと店舗という新しいチャネルがある訳だ。

ネットで既に月商2億円超の売り上げ、新規・リピート獲得に独自の施策

 同社のネットへの本格的な取組みは99年8月からと比較的新しい。しかし、既に10万近いネット会員を抱え、現在、月商2億円弱をネット経由で売り上げる。既に全体の売り上げの10%近くはネットからのオーダーとなっていることになる。
 ネットユーザー伸長の秘訣は、ネット単体で新規客獲得とリピート客獲得の方法論を確立したことにある。
 そもそもネットで新規のユーザーを取り込み、なおかつそのボリュームをあげていくとなると、単に「商品紹介」だけでは、ストレートに製品購入に結びつけることは厳しい。いくら顧客がサイトに来てくれても、実際の売り上げには繋がらない。
 そこで、同社が行っているのが肌のカウンセリング。肌の状態を「17項目」の質問により、細かくチェック。その後、「アドバイスシート」と「スキンケア製品のサンプル」を送付するというものだ。
 現在、月平均数万人が、このチェックを受けているよう。これらの多くが見込み客になっていることになり、その後、メールなどで、フォローを行う。レスポンス率もかなり高いようだ。
 さらに、同社では、リピート促進のため、2回目以降購入の会員には専用のページを設ける。一回目の購入時に会員番号とパスワードを送付。一度登録することで、その顧客専用のページで買い物が出来る。
 ここでは、これまでの購買履歴が表示されるため、自分の定番アイテムは購入数をチェックするだけでオーダーが可能。このほか、購入を予定する「お気に入り商品」をまとめて表示させることも可能。
 もともと同社は「送料無料」「全品サンプル付」「返品・交換自由」「料金後払い」などユーザーへのサービスレベルの高さでは定評がある。「安心して購入出来る」という利点をネットでも活かすとともに、専用ページの構築により顧客との接点をさらに強め、情報提供の密度や質を高めたい考えだ。

課題は3本柱の連携。カタログ・ネット・店舗をどう串差すか。

 同社の現在の戦略では、店舗やネットといった新しいチャネルで開拓した顧客にカタログをかぶせていくというのが基本方針。つまり、ネット・店舗から基盤となる「カタログ」に誘導しているわけだ。そして、その中で顧客が最も使い勝手の良いチャネルを選んでもらうということになる。
 「ただ、うちの場合、カタログ通販の形でシステムが出来上がっているため、新しいチャネルとの間でサービスを均一化して展開するのが現状では難しい」。高谷氏は今後の課題についてこう語る。顧客サービスだけでなく、マーケティングの部分においても、3つのチャンネルが切り離された形にならないようにならないように、どう連携を進めるか、その方法論の確立も求められることになろう。

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