2001.5 無料公開記事 ネット販売2001.5
 
ブロードバンド時代のショッピング・コンテンツ
動画や双方向性重視のサービスが始まった  インタビューPart1
 
USENに聞く
(株)有線ブロードネットワークス
稲葉豊取締役(コンテンツ/放送オペレーション担当)


BROAD-GATE01そのものがeコマースのプラットホーム

――3月1日のFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)事業の開始と同時に、オリジナルコンテンツを提供する「BROAD-GATE01」を立ち上げました。ネットショッピング関連のコンテンツ強化は考えていますか。

当社のサイト(BROAD-GATE01)は音楽や映像やゲームなどのコンテンツ提供や、そうしたコンテンツのダウンロード速度だけが注目されがちです。しかし、5月からはコンサートのチケットや音楽・映像のパッケージなどが購入できるようになります。 プロモーションビデオを見てCDやDVDなどを購入していただく仕組みは、このサイトで提供しているすべてのカテゴリーに応用できるので、BROAD-GATE01自体がコンテンツ販売や、コンシューマー向けEC事業のプラットホームになるわけです。 このプラットホームで物販をしたいというオファーもたくさん来ています。

――光ファイバー網の貸与や切り売りの要望もあるでしょうね。

ネットワークやコンテンツを部分的に切り売りしてほしいという要望が多いのですが、ネットワークとコンテンツは不可分のものだというのが当社の考えですから、そうした要望にはお応えできません。

――通販会社からのアプローチはどうですか。

地上波やCS放送でTVショッピング番組を提供している企業からのアプローチは盛んにあるようです。ただし、ブロードバンドのサービスを開始してまだ1カ月ですし、当社としての事業立ち上げの優先順位もあるものですから、ネットショッピングに関する各社の要望をどうやって実現していくかは今後の検討課題です。もちろん、私どもとしてもショッピング機能を強化していきたいと考えております。

――これだけ広帯域のネットワークができると、映像のストリーミングは別として、ネットショッピングなどでは器が大きすぎるという声も出てきそうですが・・・。

従来のネットショッピングは、消費者サイドでは常に通信コストを考えながらサイトを巡るので、テキストと小さな静止画像で判断できる商品しか買えないというネックがありました。EC事業者サイドでも、短時間に商品の特徴を理解していただくためのサイトづくりを最優先せざるを得ませんでした。
ところが、ブロードバンドでの常時接続なら、1つの商品をじっくり吟味していただくことができますし、動画を使うことによって訴求力も格段に強化されますから、商品紹介の方法やコンテンツも劇的に変化することになります。当面は試行錯誤が続くでしょうが、時間とともにコンテンツも充実し、ネットショッピングにおけるブロードバンドの効果的な利用法もノウハウとして確立するだろうと思います。

テレビショッピングに比べ格安の運営費で提供できる


――このサイトをEC事業のプラットホームとして提供するに当たって、どんなやり方が考えられるでしょうか。いくつかのパターンを準備しようと思っています。例えば、すでにコンテンツをお持ちの事業者に対しては、当社がそのコンテンツをBROAD-GATE01上で提供できるようにエ ンコードだけを行うといったパターンです。この方法だと事業者側の資金負担が少なくてすむ。当社はエンコード費用とプラットホームの利用料として、売り上げの中からある割合をちょうだいすることになります。 一方、自社でエンコードまで含めてすべてのコンテンツを制作できる事業者に対しては、プラットホームの料金だけをいただく。また、自社でコンテンツを作れない(作らない)事業者に対しては、当社がコンテンツ制作込みでプラットホームを提供するパターンもあるだろうと考えています。

――パターンごとの具体的なメニューや料金表は?

サービス提供を始めて1カ月ですから、決まったメニューとして提示できる段階にありません。事業者と個別に折衝する中で形ができていくだろうと思います。今の段階で事業者向けにお話しできるのは、このチャネル(ネットワーク)の可能性をお試しになってみませんか・・・というレベルでしょうね。

――リスクに対するリターンの関係もまだ見えないでしょうし・・・。

当社のプラットホームを利用したからといって、すぐにお金になるというわけではありません。 ブロードバンドという新しいチャネルを利用することによってどんなサービスが提供できるのか、その手掛かりをいっしょに探しましょうという段階です。ですから、試行錯誤の過程では当社と事業者が費用負担を折半しておいて、半年後に契約を見直すという形でスタートさせることになるでしょう。半年もあれば、契約条件を決めるのに必要な基礎的な数字も出てくると思います。

――プラットホームの利用料を推測する手だてはありますか。

まだ値付けをしていませんが、たとえばCS放送でテレビショッピング番組を提供しようと思えば、月々800〜900万円の運営費用がかかるといわれます。これは電波を時間帯で買い切るための値段です。プラットホームとしてのBROAD-GATE01は、電波を買い取る必要がありませんから、既存のテレビショッピング番組とは比べものにならないぐらい安い費用でお使いいただけることになります。


他社に先駆けFTTHに挑み経験値やノウハウを蓄積したい

――BROAD-GATE01では、すでに有線ブロードネットワークスの関連会社であるネットプライスがショッピング・コンテンツを提供しています。このプラットホームを他のEC事業者に提供すれば、ネットプライスの事業展開とバッティングするのではありませんか。

ショップやモールなどのEC事業者は、あらゆるチャネルを使って露出度を高める努力をしています。ネットプライスの立場で考えれば、BROAD-GATE01は会員制のサイトということもあって、数あるチャネルの1つにすぎません。また、ブロードバンド環境が普及するまでの間は、EC事業者もナローバンドにおけるサービスを提供し続けなければならないし、そちらのパイのほうが大きいわけですから、BROAD-GATE01を他社に提供することがネットプライスとのバッティングになるとは思えません。 インターネットが登場したときと同じように、たくさんの事業者にブロードバンド環境を利用していただくことによって、ブロードバンドの魅力を一般の消費者に認知してもらうことが大事だと考えています。

――プラットホーム事業の成否は契約世帯数の増加にかかっています。世田谷区や大田区からサービスを開始したのは、そうした理由からですか。

当社の場合はプラットホームとコンテンツは不可分ですから、BROAD-GATE01の契約世帯数だけでなく来店数も成否のカギになります。当然、光ファイバー網は居住人口が密集しているところから敷設することになります。

――NTTの専用線はオフィス需要を見込んで始まりました。有線ブロードネットワークスは世帯中心に普及を図るわけですね。

必ずしもそうではありません。BROAD-GATE01はコンシューマー向けのプロジェクトですが、これとは別のインターフェースを持ったBtoBのサービスも予定しています。これはビジネスゲートというプロジェクトで、4月1日からサービスを開始します。

――どんな事業を予定しているのでしょうか。

法令文書など業務ソフトのダウンロードや、福利厚生などアウトソーシング関係のメニューを用意しています。もちろん、ビジネスゲートでもコンテンツのホルダーやサプライヤーの協力を得て実現していきます。

――それにしても、急ピッチの業容拡大ですね。

当社の競争力の源泉は、他社に先駆けて新しい技術やサービスに挑戦し、試行錯誤の過程でノウハウを得て蓄積することにあります。NTTに先駆けてFTTHに乗り出したともてはやされましたが、2〜3年先にはどのプロバイダーもブロードバンド対応をすませているはずです。他社がその時点で経験する苦労を当社は先に経験し、ノウハウや経験値を他社に対するアドバンテージにしていきたいと考えています。

――これからも、ネットワーク、プラットホーム、コンテンツの3本柱でやっていくわけですね。

ネットワークはスペックと料金の勝負になりますから、他社が容易に追随できない100Mbpsベストエフォート、月額4,900円という設定でスタートしました。プラットホームもいろんな事業者にお使いいただいて、新しいサービスを生み出せるようにしていきます。ブロードバンド環境が普及した段階では、当社がコンテンツに関するコンサルティングやコンテンツ自体の提供を行う場面も出てくるかもしれません。

UP