2011.12 無料公開記事      ▲TOP PAGE


「おせち通販」が急拡大

――“スカスカおせち”の影響は?






前年同期比で60%増に
 
楽天では、8月から自社仮想モール「楽天市場」でおせちの予約販売を開始した。10月末時点でのおせちの売り上げは、昨年より約60%増加。「お試し」の実施や、早期割引特典など、早いタイミングでの仕掛けが売り上げ増に奏功しているという。
 特に注目すべきは「お試し」サービスだ。8月ごろから10月上旬までの期間に、本商品から数品をピックアップして500〜2000円程度で販売するというもので、実施する事業者は「昨年よりぐっと増えた」(楽天)。2007年ごろからの動きだが、ここ1〜2年で急速に拡大している手法のようだ。
 同社では、こうした背景には件の「スカスカおせち事件」の影響もあると指摘。「消費者の不安を払拭する目的で始めた店舗は多いのでは」(同)とみる。
「届くまで分からない」のがネット販売が抱える弱点のひとつであり、「スカスカおせち」はそこを顕著に露呈させた事件といえる。おせちのような高単価商材では特に不利だが、事前にクオリティーを確認できる「お試し」でこうした弱点を克服。途中キャンセルの減少にも効果があるようで、今後、さらに実施する店舗が増えそう。「おせち通販」の定番として浸透する可能性は高そうだ。
 「楽天市場」では現在、「おせち&年越し特集」を展開。送料無料商品や有名店の商品などをアピールしている。
 平均単価は1万5000円〜2万円程度。4〜5人用の3段重の商品が一番人気だが、「一人用」やフランス料理版の「洋風おせち」、さらには「子供用」「愛犬用」などのユニークなおせちも近年は伸びているという。
 今後は売り上げが多い店舗をピックアップした「おせち選手権」の開催などを予定。結果は12月25日からサイト上で発表する。これから到来する受注のピークに向け、販促を強化して好調を維持したい考えだ。


「取扱高は100%増、200%増も」
 
同じくヤフーでも、11月から仮想モール「ヤフー!ショッピング」でおせち特集を展開、昨年を上回る取扱高を叩き出している。
 同社の10月の取扱高は、楽天には劣るものの前年同期比30%増と大幅に拡大。10月上旬は「(前年の)100%増、200%増もあった」(ヤフー)という。特に、「手ごろな価格で豪華」な商品や、有名シェフが手がける商品などが売れ筋だったようだ。
 ヤフーでも楽天同様、1000円台で手軽に味わえる「お試し」サービスの実施店舗が増加。「お試し」おせちの取扱高は前年同期比で340%増まで伸長した。「お試し」が両モールで拡大しているのは、モール間で重複する店舗が多いため当然といえば当然の傾向。楽天同様、今後、急速に普及する可能性は高いだろう。
ヤフーでは今後、「年末年始特集」などで販促を強化する。年末のニーズを取り込み、さらなる成長を目指していく構想だ。


安心感高める工夫を実行

また、仮想モール「ぐるなび食市場」を運営するぐるなびも、今期おせち商戦は前年比2倍と大幅増を見込む。
おせち商戦を開始したのは8月24日から。11月現在は150店舗、492品を扱う。「スカスカおせち事件」受け、ネット購入に対する安心感を高めるため、出店数や商品数をサイトに掲載している。初出店店舗はテストマーケティングと位置付け、確実に販売できる数量のみ取り扱うことにした。
売れ筋は3〜4人前の和洋折衷おせち。過去の人気店舗を中心に早期受注を獲得している。販促はポイントより送料無料が有効で、早期受注のお得感への理解が深まっているとしている。 
11月と12月は限定おせちを販売。新コンテンツ「安心安全おせちランキング」も開始しており、ネット購入への不安の払拭に力を注ぐ。
 昨年の売り上げを大幅に上回るなど「スカスカ事件」の影響を微塵も感じさせずに拡大する「おせち通販市場」。果たしてこれからも成長し続け、お正月の食卓の「定番」の座を獲得することができるのか。今後はいい意味で注目を集めそうだ。

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