2011.11 無料公開記事      ▲TOP PAGE


ローソン、ネットスーパーに参入

――らでぃっしゅぼーやと組み売上高100億円へ






商品開発から発送まで行う安心感で差別化を

開始したネットスーパーは「らでぃっしゅローソンスーパーマーケット」。取扱商材は野菜などの生鮮品や惣菜、調味料などの加工品、飲料、日用雑貨となる。このうちの8割をらでぃっしゅぼーやが、2割をローソンがそれぞれ供給する。今年中にローソンの自社農場「ローソンファーム」で栽培した野菜を発売するほか、今後、3社共同で商品開発を行う計画。将来的には1500〜2000アイテムまで商材を拡大する考え。「商品開発から販売、発送までを直接行う安心感で他社ネットスーパーとの差別化を目指す」(らでぃっしゅローソンSM野田和也社長)とした。
ネットスーパー「らでぃっしゅローソンスーパーマーケット」では購入金額100円ごとに「Ponta」1ポイントを、定期購入は100円ごとに2ポイントを付与するほか、Pontaでの決済が可能。Pontaの利用機会を増やしコンビニ「ローソン」利用者などのPontaユーザーをネットスーパーに誘導する。今後、通販サイト上で食材のレビューやレシピの投稿機能を実装するほか、メニューの提案を行う予定。また、ローソングループサイトのHMVやローチケ.comと連携。食に興味を持つアーティストのライブイベントに絡めた販促を行う。
ターゲットは30〜40代の女性で、客単価は5000円前後を想定。1日あたり1000〜2000件の受注を見込んでおり、「3年後にこれを10倍まで増やす」(野田社長)考えだ。

ローソンの狙いはネットと店舗の相互送客

ネットスーパーに参入したローソンの狙いは、店舗とネットの相互送客の加速だ。ローソンの加茂正治常務執行役員は「ネットスーパーの商品を店頭販売し、店頭に新しい価値を生む」と相乗効果に期待する。男性がメーンだったコンビニにネットスーパーの商品を販売することで主婦層を店舗に送客し、客層の拡大を図るという。
ローソンはこれまで、身近に店舗がある安心感を強みに、ネット販売の品ぞろえを強化することで相互送客を図ってきた。例えばネット販売では、「ヤフー!ショッピング」との提携で5000万SKUの品ぞろえを実現したほか、HMV買収でエンタメ関連商品を強化。また成城石井と組んでワインの専門店を展開してきた。今回のネットスーパーの参入で「生活に根ざした日常食品の品ぞろえの充実を図り、満足度向上につなげたい」(ローソン)とした。
とは言え、ネットスーパーはすでに大手GMSが先行して展開中。らでぃっしゅローソンSMではこうした先行企業に対抗するため、「メーカー商品を仕入れ販売する従来のネットスーパーではないビジネスモデルを真剣に検討してきた」(野田社長)という。その答えが、商品や情報を通じて直接顧客とつながることができる「製造小売型ネットスーパー」だったわけだ。
こうしたことから、ローソンはらでぃっしゅぼーやに連携を打診。らでぃっしゅぼーやでは3500万人の「Ponta」ユーザーの開拓を見込めるほか、これまで積極化していなかったスイーツや菓子の充実が図れると分析。「ローソンと組むことで一気に新規客を獲得し、成長スピードを加速させたい」(らでぃっしゅぼーや)とした。

リピート購入の動機付け、どこに?

ただ、複数の食品のネット販売事業者からは、早くも課題を指摘する声があがっている。「1品から購入できるネット販売は、“食材宅配とは顧客のロイヤリティーが異なるのでは。そのサイトで購入する顧客の理由を何とするかで成否が分かれるだろう」(食品ネット販売A社)とみている。食品は1アイテムの商品単価が安く、利益率が低いことから、顧客のリピート購入が収益を左右する。リピート購入を促す“動機付け”が重要となるわけだ。
らでぃっしゅローソンSMの強みのひとつは3500万人が利用するローソンのポイント「Ponta」だが、「ポイント以外に、繰り返して購入する仕組みがなければユーザーは続かない」(食品ネット販売B社)という。
ネットスーパーではリピート顧客向けに定期購入の野菜セットの内容を自由に変更できる「マイらでぃボックス」を用意。だが、商品の魅力やブランドの信頼などで顧客が購入し続けたいと感じることが重要で、便利な仕組みとして用意するだけでは難しい。
加えて、商品の価格帯も課題になりそう。らでぃっしゅぼーやの会員制食材宅配と同じ商品を扱うため、ネットスーパーでは5〜10%高く設定した。ネットスーパーの品ぞろえの8割をらでぃっしゅぼーやが供給するため、サイト全体が高額イメージになり買い控えを引き起こしかねないという声も。
実際、過去にらでぃっしゅぼーやの食材宅配は不況の影響を受け、一般流通よりも高い価格帯がハードルとなり客単価が伸び悩んだことがあった。3社共同の商品開発で今後、商品単価の低い商品が増える可能性はある。しかし、PB商品は在庫を抱えるリスクがあるため、ある程度の顧客のボリュームを確保した上で、一定の需要が見込めるアイテムを選定しなければならない。「その規模にどのタイミングで到達するか注目したい」(食品ネット販売A社)とした。

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