2011.5 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
テレビ通販の訴求力が 簡単に手に入る ライブ動画から直接商品へ誘導できる ――まず、「ソーシャル通販」のサービス化の経緯について教えてください。 企画自体は去年の秋ごろには決まっていました。この頃はUstreamなどのライブストリーミングサービスの人気が高まってきていて、一般企業でもプロモーションの一環で使う動きが増えていました。そこで、さまざまな形で横展開できないか、と考えたのがきっかけです。 ただ、それまでは企業がプロモーションの一環に使うのがメーンでした。実際にプロモーションしてみて、結果がどうだったのか、という効果測定がなかなかできず、効果が把握しづらい状態だったのです。そうすると、せっかく盛り上がっている動きが冷え、サービスの利用が落ち込んでしまいます。当社ではもともとソーシャルストリームと呼ばれるチャットのようなサービスの仕組みを持っていて、それをUstreamとマッシュアップして組み合わせればより良いサービスができると以前から考えていました。我々のサービスも利用者数が着実に増えていたので、この波を消さないためにもUstreamを企業が利用する動きを支えていきたいな、と思ったわけです。そこで、直接サービス内でモノが売れれば、企業もその場でお金が落ちてくるモデルを構築することができますので、きちんとサービス化しようと考えたわけです。 ただ、Ustreamというプラットフォームの商業利用は契約で禁止されています。そこをどうにかしなければならないので、直接当社からUstream Asiaの中川社長に「こういう企画があるのだが協力していただけないか」と持ちかけ、物販ができる「ソーシャル通販」が実現した、という流れです。 ――「ソーシャル通販」のサービス内容を教えてください。 ライブ動画とソーシャルストリーム、そして商品を紹介できるスペース、この3つを合わせたものをプラットフォームとして提供するサービスです。一番の特徴は、訴求力の高いテレビ通販と24時間販売できるネット販売、そして世界的に利用者の多いソーシャルメディア、これらの良い部分を掛け合わせたサービスが行える、ということです。 まず、ソーシャルメディアと連動させることで集客効果、くちコミ効果が期待できます。そして、テレビ通販の商品の説明力、表現の仕方などの訴求力を活かせるということ。テレビ通販の持つ訴求力にはどのメディアも敵わないと思いますが、これを一般の企業が行うのはハードルが高い。資本の大きい企業などでなければ実現させるのは困難ですが、これと同様の販売手法を簡単に手に入れることができるのは大きいと思います。 もうひとつの特徴は、顧客の生の声が拾えること。通常のネット販売でもレビューなどがありますが、「これどうなっているんだろう」という疑問を、その場で顧客が販売者に投げられる仕組みはまだないですよね。ネットの強みを活かしたこの「会話ができる通販」という特徴は大きな強みでしょう。 ――最近は、Ustreamを活用して自社でネット販売する例もいくつか出ています。そうしたケースと「ソーシャル通販」はどこが違うのでしょうか。 Ustreamはあらかじめテンプレートが決まっているので、プラットフォームをそのまま使うと、この「ソーシャル通販」のようにライブ動画、ソーシャルストリーム、商品紹介スペース、という形はできません。「ソーシャル通販」では商品を紹介する領域があり、そこでリンクから商品へ誘導を行えるのですが、Ustreamにはそれがないわけです。 さらに、このソーシャルストリームも「ソーシャル通販」では我々独自のものを使っているのが大きな違いですね。これはTwitterやFacebookのアカウントでもログインできます。Ustreamでもソーシャルストリームの機能は持っていますが、Ustreamのソーシャルストリームを販売者の通販サイトに貼り付けても、URL経由で視聴者をサイトに誘導できないようになっています。 ――どういうことでしょうか。 例えば、ある視聴者がソーシャルストリームにログインしてコメントを投稿したとします。Twitterのアカウントでログインした場合、その投稿したコメントは自分のTwitterのタイムラインに掲載され、その際コメントの後ろにサイトのURLがつく仕様になっているのですが、Ustreamのソーシャルストリームを使ってしまうと、そのURLのリンク先はUstreamのサイトしか設定できないのです。ですが、我々のソーシャルストリームの場合は自分の好きなようにそのURLを書き換えられる仕組みになっているので、販売者が誘導したいページに誘導できます。視聴者の多くは、自分のTwitterのフォロワーのコメントを見て、そこに出ているURLをクリックしてライブ動画に入ってくるので、集客に大きな差がでるわけですね。実際、今まで利用されたクライアントはサイトへのアクセス数が通常の3倍近く伸びています。ライブ動画以外の他のページも見ていただくことができますから、サービスを知ってもらうきっかけにもなります。 ――そうしたアクセスの解析などもできるのですか。 我々はアクセスログを持っているので、視聴者数の推移や誰がコメントを書いたのか、そのユーザーのフォロワーは何人か……などを可視化したデータを提供することが可能です。これはUstreamでも提供していません。 自社リソース活用して効果的な集客を ――ライブ動画サービスを展開している他の企業で、多くの視聴者を集めた事例はまだあまり聞きません。集客面で苦労が多いようですが。 そうですね。ライブ、という要素が特徴であると同時に時間を縛ってしまうので、難しい面はあります。集客の問題は、我々に限らずライブ動画配信を行っている企業すべてにとっての最重要課題でしょう。ただ、我々としても通販のプラットフォームを提供する以上、買っていただける視聴者を増やしていかないといけません。その辺りの戦略を今は少しずつ手がけているところです。 ――具体的には。 我々は2006年から提供している「wiwitチャット」という独自のソーシャルストリームを持っています。これは今、月間で20〜25万人のユニークユーザーがいるので、ここを効果的に活用しようと考えています。例えば「この日にこういう通販をやりますよ」という案内や広告を出す、という戦略ですね。また、「wiwit live」という独自のライブ動画サービスの番組表も持っているので、そこで「通販専用の番組表」を用意するとか。あとはTwitterやFacebookで継続的にプロモーションを展開していくなどが短期的な戦略として考えられると思います。中長期的な戦略としては、媒体力のあるポータルサイトと提携する、などですね。 ウェブカメラとパソコンが あれば始められる 1時間で21人の新規客を開拓 ――番組を配信するにあたり、利用者側で最低限必要な機材は? ウェブカメラとパソコンですね。あとは自社のショッピングカートと連動してもらえばオーケーです。 ――配信にあたって、撮影の技術や番組の構成などをサポートすることもあるのでしょうか。 オプションという形でサポートします。例えば、機材がない方には機材のレンタルをしますし、配信自体を頼まれれば配信代行もします。あと、番組内での商品販売までやって欲しい、という依頼にも対応できる体制を作っていくつもりです。ただ、利用者の方にはウェブカメラなどのできるだけミニマムな構成で商品を販売してもらうのが理想ですね。間に配信代行などの業者が入らないほうがサービス利用料は安く済みますし、利益率も高いまま維持できますから。 ――「ソーシャル通販」の配信時間の上限は。 最長で1時間です。ライブなので、視聴者は2〜3時間も見続けられません。紹介する側にも長時間出演できるのかという問題があります。あと、「ソーシャル」という部分がキモだと先ほど言いましたが、視聴者の質問に答える時間や、場合によっては値段交渉することもありますので、そうした時間も含めると1時間ぐらいがちょうどいいのかな、と。 逆に、今までで一番短かったのはみかん農園でみかんを通販したときです。このときはみかん農園で生産者の方に出演していただき、その場でみかんを食べていただいたのですが、バッテリーが持たず30分程度で終了してしまいました。それでも40人ぐらいが集まり6人のユーザーさんに購入していただきました。 ――これまでの実績は。 今まで通販利用ですと、5社の動画を配信しました。これまでの視聴者数の平均は50人前後ですので、この数字をもう1桁は増やさないといけないと思います。ただ、1000円で珈琲のドリップバッグを販売したときですが、1時間の配信で34人中、21人の視聴者に購入していただいたこともありました。1時間で21人の新規客を開拓した計算になりますので、成果としては悪くないと思います。 ――サービスの利用料金は。 今は実証実験期間、という位置づけですので、1回の利用につき1万円、プラス手数料として販売金額の10%を手数料としていただいていますが、今後は料金体制を変更してパッケージプランを用意する予定です。 予定しているプランは3つで、1つは単発でお試し的に配信するプラン。これは利用料が1回3万円で手数料が10%です。2つ目は6回パックで1回2万5000円、手数料が7.5%です。3つ目は12回パックで、1回2万円、手数料は5%です。ただ、これらの料金体制は3カ月ごとにフレキシブルに見直していくつもりです。 ――どういった企業の利用を想定しているのでしょう。 イメージとしては、楽天やヤフーなどの仮想モールで、売り上げで1~3位に入っていないような店舗さんです。広告宣伝費をかけているのに埋もれてしまっている、という店舗に効果的に活用していただければと。商材自体は公序良俗に反しなければ何でも構いません。 ――目標は。 1年間で1000商品、もしくは1000社の利用を目指しています。先ほど言ったような店舗さん以外では、地方のデパートや商店街などのリアルの店舗にもアプローチしています。ITに精通していない売り手さんもいますので、そういった部分にも柔軟に対応していき、利用を拡大していきたいですね。 ――今後の課題は。 まずは買い手候補となる視聴者をどれだけ集められるか、それが直近の課題です。あとは、ソーシャルストリームを使って質問をやり取りする形に、システム的にゲーム性を持たせることなどを構想しています。コメントしてくれた人の中から、抽選で数名に数%割り引いて販売する「抽選システム」とか、差別化の機能としてそうしたサービスも展開していくつもりです。売り手からすると、商品に対するコメントはマーケティングデータですので、そこを有効に使えるサービスにしていきたいですね。
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