2010.12 無料公開記事      ▲TOP PAGE


始まった「Googleショッピング」

――価格比較サイトの送客力への影響は?






カカクコム「蓄積データで勝負」

11月4日の中間決算発表の席上、カカクコムの田中実社長は「グーグルは外部のデータを検索するのは上手だが、当社は内部に蓄積されたデータを提供することで勝負したい」と強気の発言に終始した。
現在のGoogleショッピングは、検索すると商品名や価格、画像が検索結果に表示されるシンプルなもの。価格.comのようにレビューやくちコミ情報などを集積する機能はなく、「複数の商品を比較検討する」といった用途には向かない(個別の通販サイト上にあるレビューやくちコミ情報などは検索結果に一緒に表示されることもある)。また価格.comはユーザーによる店舗評価があることも強みの一つだが、Googleショッピングだけでは店の評判を知ることはできない。
「現状では(競合サイトである)コネコネットや比較.comの方が、まだしも日本人の買い物の感覚に合っているのではないか」(田中実社長)。ただ、あくまでもGoogleショッピングは試験運用中。グーグルのトップページからも「ショッピング」のリンクをクリックすれば価格が検索できるようになったほか、検索された商品のスペックが表示されるようになるなど、機能も進化している。アメリカやドイツではすでに提供しているサービスだけに、一定のノウハウもあるだろう。田中社長も「技術力のある会社だけに軽視はしていない。ユーザーのニーズを読み取って価格.comの機能を高めることで対抗したい」とする。

利用企業は歓迎も「現状は期待薄」

しかし、価格比較サイトに情報を提供する店舗にとって、Googleショッピングの誕生は朗報といえる。価格.comは、利用者のクリック数を元にした従量課金で参加費用を徴収する仕組みを採用しているが、ここ数年、1クリックあたりの料金値上げやクリック数に応じた割引制度の廃止など負担増が続いており、大手家電通販サイトからは不満の声も上がっていた。しかし価格比較サイトは価格.comの一人勝ちだけに、顧客流入の導線として頼らざるをえないのが実情だった。
Googleショッピングの場合、検索連動型広告が表示されるだけで、店舗から費用を徴収することはない。そのため、同サイト経由の流入が増えれば「価格.com頼みの集客から脱却し、リスクを減らすことができる」(大手家電ネット販売企業の幹部)。そうなれば、クリック料金の値上げに歯止めがかかる可能性も出てくるわけだ。
ただ、価格.comに情報を提供している家電通販サイトに話を聞くと、カカクコムの田中社長と同じく「現状のサイト構成ではあまり大きな流入効果は期待できない」という意見で一致している。また、価格.comを利用する各企業は、自動的に値段を変更する仕組みを導入していることが多いが、Googleショッピングで同様のことを行いたい場合は、グーグルのAPIを使ってシステムを開発し、自動連携させる必要がある。

利用増には使い勝手改善が必要

 では、ネット販売企業はGoogleショッピングにどう対応すれば良いのだろうか。
現在、大手家電通販サイトは軒並み検索対象となっているものの、しばらくは様子見という企業が大半のようだ。Googleショッピングからの顧客の流入に関しても「まだまだ微々たるもの」(同)なのが実情だけに、価格変更システムの導入を先延ばしにしているサイトもある。
ある大手家電ネット販売企業の幹部は「Googleショッピングの利用者は最安値の店しか相手にしない可能性がある」と危惧する。価格.comは店舗への評価を重視して購入する利用者が多いため、必ずしも最安値を目指す必要はなかった。ところが、現在のGoogleショッピングにはそうした基準がないため、価格でソートして一番上にきたサイトに集中するのでは――というわけだ。
とはいえ「最安のサイトを効率良く知りたい」というニーズは根強い。価格.comに登録していないサイトも多くあるだけに、検索対象のサイトが増加し、使い勝手が改善されれば価格.comの利用者を一定数奪うことになりそうだ。店舗や商品のレビューに関しても、グーグルの検索能力を用いて外部サイトから収集し、利用者が参考にしやすい形で提供することも可能だろう。
 どこまで機能が進化するかは未知数だが、価格.comのような課金制度の導入は考えづらいだけに、利用者が増えればネットショップにとっての利用価値は高くなる。現在検索対象に加わっていないサイトは対応を検討する余地はありそうだ。

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