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ベネッセが携帯の再販事業に参入
――中高生の携帯抑え、事業拡大へ?





ベネッセコーポレーションは携帯電話事業に参入した。2月9日から、独自携帯電話「ベネッセモバイルFREO(フレオ)」を、「進研ゼミ」を利用する中高生の保護者に販売する。FREOには使用頻度に応じてフィルタリングレベルを自由に変更できる設定や、曜日や時間帯で利用を制限できる「安心設定機能」を搭載。ゲームやサイト閲覧などで学習時間が減るなど携帯電話の負の側面を払拭することでベネッセの携帯電話を訴求。保護者経由で中高生の携帯電話を抑え、将来的にメール配信や学習コンテンツを搭載し売上拡大策として機能させる狙い。
独自携帯電話の販売はすでにECナビやウォルト・ディズニー・ジャパンが展開しており、通販事業者にとっても携帯電話が囲い込みに活用できる可能性があるとして注目を集めている。しかし、その効果や収益性については未知数な部分も多く、参入を検討する通販企業は見極めが必要となりそうだ。

事業のリスクは低い?

 ベネッセはソフトバンクの回線や技術を使用し、ソフトバンクテレコムから携帯電話「SoftBank 840SH」を借り受ける再販事業として携帯電話事業を始める。ベネッセが電気通信事業者となり自社サイト内で携帯電話をレンタル。ユーザーから端末利用料や無料通話、独自機能の「安心安全設定」の利用料金などをパッケージとした1カ月の利用料金5950円を徴収する。
ベネッセの収入はユーザーから徴収した通話料などの利用料金で、そこからソフトバンク側に支払う回線利用料や端末料金、コールセンター委託費などを差し引いた残りが利益となる。「事業自体は仕入れ販売になるためコストコントロールのリスクは低い」(携帯電話担当嶋田氏)という。
また、収益分岐点については明らかにしていないが、複数のシミュレーションが成り立つようだ。機種の拡充や機能強化に伴う料金プランの変更、また複数の料金プランの提案や3キャリアでのサービス対応などでそれぞれ目標販売台数が異なるという。事業成長に合わせてフレキシブルな計画ができるため、事業を成立させやすいメリットがあるとみられる。
一方で、外部の影響を受けやすい不安定な面もある。それは将来的な条例の改正だ。ベネッセによると各都道府県の条例で携帯電話販売事業者は契約内容の説明義務はあるほか、フィルタリングを外す場合は自治体への書類の提出義務など厳しい規定が定められているという。「現在の条例はショップでの販売が前提になっている。自社サイトのみで取り扱う場合、条例の改正内容によっては事業を継続できない可能性も出てくる」(嶋田氏)という。

収益性は未知数

コスト的なリスクが低いとされる携帯電話事業。しかし、「安心設定機能」の開発コストをどの程度の期間で回収できるかは未知数だろう。
料金面でみると、ベネッセの料金設定はパッケージ料金で5950円。キャリアで同程度の契約する場合、4410円のパケット定額プランとホワイトプラン980円に加え、端末料金が発生することを踏まえるとキャリアとの契約よりもベネッセの料金プランのほうが割安となるようだ。回線などの仕入れ価格は不明だが料金プランをみると「安心設定機能料金」自体はそれほど高くないと見られる。とは言え、独自の「安心設定機能」の開発にはそれなりのコストを投資し開発してきた模様で、初期投資を回収するには時間がかかりそうだ。
「まずは受け入れられるかどうかを見極め、それからサービスを拡充したい」(嶋田氏)考えで、将来的には使用頻度や年齢に合わせた機能の見直しや、複数の料金プランを用意する可能性も検討。これらを踏まえてかなり柔軟な事業計画を用意しているという。

「所有率5割の中学生」に市場あり

事業成長のハードルを指摘しつつもベネッセが参入を決めたのは、「携帯電話所有比率の低い中学生をターゲットとすることに市場性があった」(嶋田氏)ためだ。携帯電話の所有率は中学生が約5割、高校生が9割以上となる。初年度は「中学講座」ユーザーをターゲットに新規契約者を開拓する方針で、ターゲットとなるユーザー数は09年4月から12月時点で624万人。携帯電話の所有比率から携帯電話を持つ可能性のあるユーザーを単純計算すると300万人以上での契約が見込めることになる。ターゲットを限定していることから「ギリギリの事業規模」(嶋田氏)だが、進学や進級は初めて携帯電話を持つきっかけになりやすく、「進研ゼミ」でこうしたタイミングを抑えていることもユーザーの開拓につながりそうだ。
とは言え、独自携帯端末自体が魅力的でなければ契約を獲得するのは困難だろう。中高生を持つ保護者からすると従来の携帯電話は、持たせたいが、高額料金の請求や生活習慣の乱れなど心配も多いという。「専用コンテンツの搭載なども含めて社内で議論した結果、携帯電話が学習に使えるツールとして認識してもらうには、利用制限やフィルタリング機能を充実させることが先決ということになった」(嶋田氏)。
独自携帯電話の「FREO」に搭載した「安心設定機能」は曜日と時間帯で利用を制限できる。また、レベルの強弱を使用頻度や年齢に応じて6段階で変更できるフィルタリングを実装した。子どものスケジュールにあわせて時間帯や曜日、利用頻度で設定できる制限はキャリアの安心設定で対応しているケースは少ないことから、ベネッセではジレンマを抱える保護者のニーズがあるとみている。
ベネッセの携帯電話が仮に保護者のニーズを捕らえることができれば、保護者経由で中高生の携帯を抑え、生活に密着する端末で各種の販促も可能となる。その上で将来は学習スケジュール管理などの独自コンテンツを提案し、リマインドツールとして活用できれば会員の離脱を防ぎ囲い込みに寄与するのかもしれない。「まだまだ先の話で詳細は決まっていないが、第3、第4のステップと考えている」(嶋田氏)としている。携帯電話を囲い込みに活用したい通販各社はベネッセの試みがどう推移するのか、注視する必要がありそうだ。

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