2010.3 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
日本の機能を「フルスケールで」展開 楽天と百度が設立する合弁会社では、BtoC仮想モール事業の運営をメーンに行う。会社名や設立時期は不明だが、所在地は百度本社がある北京が有力だという。出資総額は3年間で総額約43億円で、出資比率は楽天が51%、百度が49%。代表者は楽天から派遣する予定だが、これは三木谷社長ではなく、別の役員が就任するようだ。 開設する仮想モールの名称や開設時の出店店舗数、商品ジャンル、売り上げ目標などについても、現段階では未定。ただ、海外拠点は「ケースバイケースだが、できれば楽天ブランドで統一したいとは思っている」(三木谷社長)としており、仮想モールの名称は「楽天百度」や「楽天by百度」、「楽天powered by 百度」など、百度の知名度を活かしつつ楽天ブランドを標榜する形が有力のようだ。 出店店舗については中国のネット販売事業者を対象としているが、将来的には日本の「楽天市場」との連携も視野に入れているとしており、具体的には、日本の「楽天市場」出店店舗の商品の販売などを考えている。また、仮想モールの機能面では、タイのタラッドへの考え方と同様、レコメンドやレビュー、ポイントなど現在の「楽天市場」の機能を「フルスケールで注入する」(同)考えだ。 "タオバオ超え"の戦略は? 以上が、現在の楽天の中国進出における概要だが、中国は仮想モールを運営する同業他社が数多く存在し、特に前述の通りタオバオが圧倒的なシェアを誇っており、これに打ち勝つのは容易ではない。成功するためには他社にはない"武器"が必要になるが、楽天ではそれを「百度」の中国内における圧倒的な認知度からくる"集客力"とみており、この部分を最大限に活かした戦略を描いている。 「(タオバオは)だいぶ先行しているが、我々は我々のやり方でやる。手厚いサポートと、充実したシステム、そして今までにない武器として百度のトラフィックがあるので、この3つを合わせてやっていく」(同)とし、百度の集客力と自社のECプラットフォーム技術や運営ノウハウを組み合わせて「中国最大規模の仮想モール」を構築する――それが楽天の描く青写真だ。 ただ、こうした施策のみで楽天がタオバオを上回る存在になるかというと、やはり現時点では疑問符が付く。楽天自身がそうだったように、タオバオには先行者メリットがあり、仮想モール事業は参入障壁がそれほど高くないため「早くシェアを押さえた者勝ち」(業界関係者)な面があるからだ。 また、タオバオは独自の決済手段として、アリババグループで中国におけるネット決済最大手の「支付宝(アリペイ)」を持っていることも大きい。決済手段の選択は利便性という観点から、ネット販売では非常に重要なため、タオバオはこの点でも大きなアドバンテージを持っていると言っていいだろう。 「ブランドと価格」の壁 さらに、タオバオという高い"壁"の存在のほかに、中国でのモール展開を難しくさせているのが「ブランドと価格の問題」だ。楽天では中国のネット販売事業者のほか、日本の楽天市場との連携、すなわち日本の「楽天市場」出店店舗の中国での商品販売も展開していくことは前述の通りだが、いくら百度の認知度が高いといえども、実際に商品を販売する日本の事業者自体の中国での「ブランド力」は皆無に等しい。事実、タオバオに出店している日本のある大手総合通販企業でも、「想定していたより上手くいっておらず、見直しを図っている状態」だという。 また、価格においても、輸送・製造コストの面から日本の商品はどうしても現地のものより値段が高くなる傾向にあるため、「価格面での比較が日本よりもシビア」(同)とされる中国で地元の事業者には価格競争で勝ちづらい、というわけだ。 近年、国内市場が早晩頭打ちとなるのを見越し、日本のネット販売事業者の中国進出のニーズは日々高まっているが、「実際には成功している事例は少ない」(同)のが現状。成功するためには、長期的なスパンで現地でブランドを構築する必要があるが、他国でイチからブランドを根付かせるのは容易なことではない。楽天が果たしてこれらの問題をどのように解決し、自身と日本からの出店者を成功に導くのか――中国進出を検討するネット販売事業者の注目が集まる。
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