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2008年のモバイル通販市場、3770億円に拡大

――有店舗小売りの本格参入が市場拡大を後押し




モバイル通販市場は、相次ぐプレイヤーの新規参入や消費者の購買意識の変化などから順調に拡大している。従来のファッションや美容系、健康食品などの売れ筋商品に加えて、低価格の家電なども人気を集めており、リアル店舗を持つ家電やアパレルなどの専門店がモバイル通販に本腰を入れてきている。総務省とモバイル・コンテンツ・フォーラムが7月17日に発表した2008年度(1〜12月)の「モバイルコンテンツ関連市場規模調査」によると、「物販系」の市場規模は前年比14.5%増の3770億円となった。


若者中心に"低価格志向"が反映

「物販系」利用者の中心は若者が中心で、店舗やPCなどと同様に携帯電話が一般的な購入手段になってきている。国内の携帯電話契約数が1億件を超え、そのうち、インターネット対応の携帯電話も9000万件を突破するなど、通販の利用環境の整備が進んでいる。また、昨年の金融ショック以降、より安く買い物をしたい消費者にとって、"店舗"や"携帯電話"といったデバイス自体にこだわりがなくなってきているとみられる。
同調査では、モバイルコマース市場を「物販系」、「サービス系」、「トランザクション系」の3つに分類して集計しており、モバイルコマース全体では前年比18.6%増の8689億円まで拡大した。
携帯電話での興行チケットや交通チケットの購入を含んだ「サービス系」については、同24.6%増の3497億円。予約購入、改札、チェックインができる方法として、特に交通系の市場が増加している。
オークションや証券取引、公営競技などの手数料を集計した「トランザクション系」は、証券系の伸び悩みが影響しているものの、同15.5%増の1422億円と増加傾向にあり、今後も成長が見込まれている。
それでは、08年度の主要なモバイル通販プレイヤーの状況はどうだったのだろうか。

各社が大幅な増収、「受注ツール」から脱却?

 モバイル通販における主要プレイヤーは大別すると、「カタログ通販事業者」「ネット(PC+モバイル)通販専業者」「モバイル通販専業者」に分けられる。売上高ベースで見ると(表参照)、カタログの受注ツールとしての機能も持つ「カタログ通販系」がやはり市場をけん引しているといってよいだろう。以下、各プレイヤーの動向を見ていく。
 まず、「カタログ通販事業者」を見てみると、前年に比べ、各社が大きくモバイルのシェアを拡大していることが分かる。モバイル売上高トップはニッセン。モバイル売上高は47.1%と大幅増で、占有率も25.4%と前年より5.5ポイント伸長。カタログ経由ではない「純モバイル」売上高も前年比倍増となるなど、モバイルの好調ぶりが目立つ。トップページでリンク数を減らし強いカテゴリーの商品を前面に出すなど、モバイルの限られた画面でメリハリをつけた施策が奏功しているようだ。
 他に注目すべき動向としては、ムトウ、イマージュ、ベルーナがそれぞれ占有率30%超を記録している点だ。増収率でも、PCを含めた全ネット販売売上高の増収率を上回っているなど高い増収ペースで推移しており、これまでの「カタログの受注ツール」からようやく脱却しつつあると見ることもできそうだ。

各社とも占有率が拡大傾向に

続いて、「ネット通販専業者」は、占有率において総じて前年に比べて高い伸びを示しており、モバイル利用が一般に広がっているのが分かる。ツタヤオンラインは100億円を突破(本誌推定)と見られ、CD・DVDの、小さな画面でも購入しやすい商材特性が表れていると言える。また、注目はモバイル占有率が約70%の夢展望。効率的にテレビ番組へ出稿しQRコード経由でモバイルへ誘導するビジネスモデルが、若い顧客層の消費行動と合致し、着実に成果を出しているようだ。
他にも、スタイライフが19.3%増(占有率43.7%)、サルースが22.3%増(占有率53.3%)となるなど各社のモバイル売上高は年々拡大しており、占有率から見ても、モバイルは成長ための最重要テーマとなりつつある。ネット通販専業者にとって、モバイルでの集客が今後の行方を左右すると言えそうだ。

テレビ連動やレコメンドなど、独自性で勝負

最後に、「モバイル通販専業者」。シーエー・モバイルが減収となったものの、他のプレイヤーは概ね2桁増を達成するなど、モバイル通販市場の拡大を裏付ける数値となっている。これら専業各社の08年の主な動向としては、テレビや雑誌など他メディアとの連動を積極化している点が挙げられる。例えば、モバコレは通販専門チャンネルのQVCジャパンと組み、テレビ通販を開始。通販サイトで番組との連動企画を実施している。ブランディングも以前からジュピターショップチャンネルと協業し、テレビ通販を展開中。こうしたモバイルに留まらない「新たな売り場」を求める動きは、今後、より加速すると見られる。
また、モバイル通販専業者に見られるもう一つの特徴として、レコメンドの活用が挙げられる。PCでは今や当たり前になったレコメンドだが、モバイルではまだ導入が遅れているのが現状。そうした中、シーエー・モバイルやビックタウン、GNTなどが相次いでレコメンドを取り入れており、メルマガと組み合わせることなどでリピートや「ついで買い」を促進、売り上げ増に貢献している。レコメンドについてはカタログ系のニッセンでも既に積極的な活用を進めており、今後、モバイルでの重要テーマになる可能性は高そうだ。【編集部・河鰭悠太郎、神崎郁夫】


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