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千趣会、"衝動買い"喚起で実験サイト

――「ベルメゾン・ラボで"楽しさ"を研究




千趣会は、通販サイト来訪者の需要喚起につながるコンテンツの開発に本腰を入れ始めた。この一環として4月10日、テストサイト「ベルメゾン・ラボ」を開設、同サイトを通じ、サイト上での新たな商品の見せ方や検索方法の提案を行っている。ネット販売は目的買いでサイトに来訪する顧客が多く、これまでは商品の検索性などの機能的な部分が重視されてきた。これに対し同社は、総合通販企業として蓄積してきたカタログ編集のノウハウとITを組み合わせたコンテンツの開発を通じ、ネット販売の新たな展開の可能性を探っていく考えだ。


サイトで"気付き"や"楽しさ"を演出


「ベルメゾン・ラボ」は、ネットショッピングで顧客に"気付きや楽しさを感じてもらえる演出"を研究する場として開設したもので、第1弾の取り組みでは、「動くカタログ」「すぺーすサーチ」、「特集ギャラリー」の3コンテンツを展開している。
 まず、「動くカタログ」は、既存のカタログ製版データを再編集したもので、スタート段階では、カタログ「ファッションプラス」14ページ分のモデル画像を掲載。フラッシュを使いキャッチコピー等に動きを持たせるほか、商品画像上にカーソルを置くと商品の特徴説明やバイヤーのコメントが表示されるといった仕組みを導入している。
無論、同コンテンツから商品購入ページに入ることも可能で、商品ごとに「buy」の文字が入ったボタンを配置し、顧客が画像を見て気に入った商品をすぐに購入できるようにした。
同社では、既存のカタログ資産を活用する子達でデジタルカタログを積極的に活用しているが、さらに同コンテンツでは、ITと絡めた動的な誌面とすることで、見やすく感性に訴えかけるようにしたものだ。

"スペース"から商品を感覚的に検索


また、「すぺーすサーチ」は、家具・インテリアの検索ツールだが、"設置スペース"に着目し、サイズから商品を絞り込むという形にしている。
具体的には、画面上に商品の画像と高さ、幅、奥行の目盛を表示。各サイズの目盛をマウスで操作すると、画面の商品画像が絞り込まれていき、最終的に設置スペースに合った商品にたどり着けるというという仕組みだ。
これまで、サイズで家具やインテリアを探そうとするとカタログやサイトに掲載されたスペックデータを確認する形にならざるを得なかったが、この「すぺーすサーチ」では、部屋の空きスペースにフィットする商品を直感的に検索できるようにしたのが特徴だ。
一方、「特集ギャラリー」は、各カタログで掲載する特集ページを一覧的に見せるコンテンツで、ファッション、インテリア等のカテゴリーを設けて展開している。
画面上で各特集ページを立体的に見せ、簡単なマウス操作でカタログのページをめくる感覚で閲覧できるようにしたのが特徴で、画面の特集ページ画像をクリックすると、当該デジタルカタログの特集ページを表示させるなといった形で、アクセス性を高めている。カタログで前面に打ち出している特集ページという切り口から、サイト来訪者の需要喚起を図っている。
 「ベルメゾン・ラボ」では、原則月1回のペースで新たなコンテンツを掲載し、2〜4カ月程度テストを行う計画。千趣会では、利用者のアンケートなどをもとに結果を検証した上で、効果があるコンテンツについては順次「ベルメゾンネット」に落とし込んでいく考えだ。

目的買い客の需要喚起策が課題


 「目的買いでサイトに来訪した顧客に対して、いかに商品を提案し需要を喚起させるかが課題」。健康関連商品を扱う某ネット販売事業者はこう語る。
パソコンのインターネットの場合、顧客にはあらかじめ購入したい商品があり、価格やスペックを調べ、商品を購入する傾向が強い。つまり、目的買いの利用が多いわけだ。
このため、ネット販売では、検索エンジン対策やネット広告など集客策の強化、さらにサイトに来訪した顧客を取り逃がさないために商品の検索性を高めるなど、サイトのユーザビリティを高め実購入につなげるという手段が定石となっている。言い換えれば、この部分の巧拙がサイトの売り上げを左右することになるが、こうした機能的な要素はすぐに改善されるため、他社との違いが打ち出しにくい面がある。
相次ぐ新規参入を背景に競争の激化が進むなか、ネット販売事業者の間でも、サイト上での顧客の需要喚起、つまり"衝動買い"を促すようなコンテンツの展開がより重要になっているわけだ。
千趣会の「ベルメゾン・ラボ」は、こうした状況を受けて開設したもので、総合通販企業として蓄積してきたカタログの編集ノウハウやデータ等の活用を通じ、ネット販売専業の事業者とは一線を画したコンテンツの展開を構想しているようだ。ネット販売事業者側でも今後、サイト上での新たな需要喚起策の確立に向けた取り組みを進めてくるものと見られ、これまで目的買いをメーンとしてきたネット販売の購買行動が変わっていくことも考えられる。

TBS、ワンセグ独自で通販番組を開始 ――ドラマ型インフォマで訴求


東京放送(TBS)がワンセグ独自の通販番組の放送を始めた。ワンセグは通常、地上波と同じ内容の番組を放送する「サイマル放送」だが、今回は地上波では放送しない「非サイマル」のワンセグ独自番組として放送。通常の通販番組とは異なり、ドラマ仕立ての映像の中に通販する商品を登場させる内容で、美容関連器具や飲料などを紹介した。初回の放送は09年2月27日の深夜に放送。09年3月末まで毎週金曜に放送する予定。
放送時間帯がかなり深いだけに、いきなり大きな売り上げは期待できなそうだが、そもそもワンセグ独自番組自体がまだ数えるほどしか放送されていない。しかも、大半はスポーツ中継などで、地上波では放送できない「延長」をワンセグで放送するケースが多い。ワンセグ独自の通販番組自体、かなり珍しく、今後のワンセグによる通販活用の可能性を探る意味では、結果が気になるところ。
これは他の事業者も同様のようで、TBSの今回の試みにはDeNAやザッパラスといったモバイル関連事業者も集客面等で協力しており、「効果や活用方法がいまだ見えない『ワンセグ』を検証する意味で、興味深い」(DeNA)と期待を寄せている。TBSでも今回の取り組みについて、「ワンセグのビジネスモデルを探るトライアル」と位置付けており、今後も通販を含むワンセグ独自の番組の放送を検討していくようだ。

ドラマ仕立ての通販番組


 09年2月27日から放送を開始したワンセグ独自の通販番組は「ナイト★マーケット」。TBSが行なう通販番組は基本的に通販子会社のグランマルシェが通常、番組等を製作するが、今回の場合は、TBS本体のライセンス事業部の管轄となり、番組制作などを行ったようだ。番組の放送時間はCMなしの約1時間で、番組冒頭には通販とは関係ないバラエティ番組が流れ、その後はショートドラマ仕立てのインフォマーシャル数本が放送される構成。なお、「ナイト★マーケット」が放送されている同時間の地上波はグランマルシェの通販番組「買物大図鑑」が放送されている。
「ナイト★マーケット」ではタレントの井上和香さんや中島愛里さん、八神蓮さんなどを起用。出演するショートドラマ内で、飲料やアクセサリー、美容器具などを登場させ、通常の電話受注のほか、ワンセグのデータ放送などで視聴者を物販サイトに誘導、当該商品の購入を促す仕組みだ。

「モバゲー」が集客面で協力


「ナイト★マーケット」への集客面では連携するDeNAやザッパラスが協力。ちなみにDeNAでは運営するモバイル総合情報サイト「モバゲータウン」内に当該番組の特設ページを用意して番組を告知。また、「モバゲー」内にある有名人の日記サイトでは「ナイト★マーケット」に出演するタレントの井上和香さんが日記で告知。ここから、「ナイト★マーケット」の関連ページなどに飛ぶ仕掛けでユーザーの番組視聴や商品購入を促す仕掛けとしている。
DeNAではTBSへの協力について「当社にもメリットは高い。詳しくは言えないが『モバゲー』のPV向上にもつながる可能性や、当社としても興味のある『ワンセグ』の効果を試すテストケースにもなる」(同社)として期待を寄せているようだ。

これまでよりは反応良い


 2月27日の第1回目の放送(午前2時55分〜4時)ではショートドラマとして「ドラマ(スノボ編)」や「キミダケヲミテル」「李さんと良子」「破如破如(ハニョハニョ)人」などを放送。それぞれのドラマ内で「ジョージアマックスコーヒー/250_g×30本」(税込3600円)、「高島屋厳選 和珠8〜8.5_珠 本真珠ネックレスセット」(同3万9800円)、「プラチナゲルマローラー」(同1万4800円)、「EMSゴールデングローブ」(同1万4800円)を登場させ、視聴者の商品購入を促した。
初回放送後の感触についてTBSでは「詳細な検証はこれからで、具体的な数字などは言えないが、ワンセグでしか見られない『非サイマル番組』であるため、これまでのワンセグ番組よりも良い反応だった」(TBS・ライセンス事業部)としている。

反響次第で今後も放送


TBSはこれまでもグランマルシェなどと共同でワンセグを活用した通販展開などは実施してきたが、地上波と同じ内容の通販番組をワンセグでも放送し、データ放送で通販を促すものだった。今回の新番組はワンセグ独自の通販番組で「たまたま通販だったが、ワンセグのビジネスモデルを探るトライアルの一環。無論、反響次第では今後も同様のワンセグ独自の通販番組を放送していく」(同)としている。
「ナイト★マーケット」は初回放送以降、毎週金曜日、3月20日まで全4回を放送後、一旦、終了。効果検証などを行う予定。モバイル通販の起爆剤として期待され続ける「ワンセグ」。ただ、その具体的な効果や活用方法はいまだ見えていない。そうした意味で言えば、キー局がこうした番組を放送したことは、貴重なデータが取れそうで、今後に向けて大きな一歩となりそうだ。

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