2009.4 無料公開記事      ▲TOP PAGE



東京ベイスタジオ、携帯動画サービスを強化


――「店舗のCM」から通販に誘導







動画が販促に有効なのは今さら説明するまでもないだろう。最近はブロードバンド環境が整い、消費者がネットで動画を見る機会が増えたこともあり、高画質の動画配信は当たり前。ユーチューブやニコニコ動画といった、動画投稿サイトも一般的になった。業者が動画を使った販促や集客を行うことも多くなっている。
ただ、ネット販売での活用に関してはまだ黎明期。実績を挙げている企業は少ないのではないか。確かに、動画には静止画よりも盛り込める内容が多いだけではなく、静止画とは違った視点から商品を見せることができるという利点があるものの、消費者に時間を割いて「見てもらう」ための工夫が必要だからだ。
特に、携帯電話の場合は、パソコンほどの回線速度が期待できないこともあり、短い時間の動画でアピールするのはなかなか難しく、パソコン以上に動画活用は進んでいないのが現状だろう。さらには、動画制作にはそれなりの手間とコストがかかるという問題もある。動画に関心はあるが、費用対効果に疑問を持っている店舗も多いのではないだろうか。

銀座の店舗を動画で紹介


テレビCMなどの制作を手掛ける東京ベイスタジオが、携帯電話向けの動画サービスを強化している。4月に東京・銀座の店を動画で紹介するコーナーを、携帯電話向けの情報サイト「みせポン!」に開設。オプションとして、通販の機能も持たせた。動画の制作料金が年間50万円と安価なのが最大の特徴で、集客力を高めるツールとして店舗に提案する。今後は同サイト以外でも広告動画の制作サービスを拡販する予定で、通販企業などにも売り込む考えだ。
みせポン!は、東京・お台場で産経新聞社が発行するフリーペーパー「東京シーサイドストーリー」(40万部発行)と連動した、携帯電話向けの情報サイト。アクセス数は月200万に達している。2006年からは、店舗情報などの動画配信を開始した。
すでに、お台場のほか渋谷や恵比寿などの情報を動画で紹介している。また、07年にはフジテレビラボが運営する動画サイト「ワッチミー!TV」とコラボ、ワッチミー!TV内に「お台場チャンネル」を設置して、同社が制作するラジオ番組のライブ放送を定期的に流している。
4月からは、新たな地域として銀座を追加。飲食店のほかエステサロンや、小売店舗も紹介する。通販機能を持たせるのは銀座が初めてで、サイトから商品を購入することができる。当初は100店舗を目標に加盟店舗を募るという。料金は、1本の動画を1年間配信する場合は45万円、2本の場合は50万円。動画は一般的なCMと同じく、30秒が基本となる。

動画サービスを安価に提供


同社の川辺保弘社長によれば、「通常、30秒CMの制作費は200万円以上かかる」のだという。もちろん、CMを流すための媒体費用もかかるため、テレビ放映ともなれば、実際に必要な費用は場合によっては1000万円以上になることもあるわけだ。同社の場合、自社のスタッフを活用して社内でのCM制作が可能なこともあり、こうした安い価格でサービスが提供できるのだという。
さらに、川辺社長は「不況の中で、企業も広告宣伝費を絞っているが、今後のキラーコンテンツは動画になるだろう。当社の場合、CMの制作費用に放映するための媒体も合わせて年間50万円になる」と話す。
CM制作は、番組制作などを行っている同社のプロのスタッフが担当するというのもさることながら、「東京シーサイドストーリー」など産経新聞社が発行するフリーペーパーや、「ワッチミー!TV」といった、フジサンケイグループの持つ媒体とも連携しているため、集客力が非常に高い。「動画を作っても見てもらえなければ意味がない。インフラが整っているのが他社とは違うところ」(川辺社長)。
サービスを利用する店舗にはQRコードを付与する。チラシやポスター、新聞広告、ダイレクトメールなど、紙媒体の広告に活用することが可能。QRコードからみせポン!に誘導、店舗を紹介するCMを見てもらったり、クーポンをプレゼントしたりといった使い方ができるため、店に初めて訪れる消費者にアピールしやすいなど、効果を挙げているようだ。
例えばエステの店舗などは、実際に入ってみなければどんな店なのかは良く分からない。ある店舗は、みせポン!に参加し、動画とクーポンを活用することで、大きく売り上げを伸ばしたという。
さらには、CMの流用も可能で「会員の中にはそのままPCサイトで活用している例もある」(同)という。

ページ下部にショップへのリンク


実は、すでにみせポン!内ではすでにCDを販売するコーナーを設けている。川辺社長がおすすめCDを動画などを交えて紹介、ページの下部にショップへのリンクを設けて販売につなげるという仕組みだ。
今回、追加した通販機能もこれと同じ。店舗紹介やCMを閲覧してもらったあとに、商品の購入につなげるという流れだ。通販機能はオプションとなるが、カートの使用料に加えて売り上げの数%がインセンティブとして必要となる予定だ。すでにサービスを開始している地域の店舗が希望した場合も利用は可能だという。商品は同社の倉庫に配送する形だが、生ものや菓子類など、商品によっては直送を採用する可能性もある。
今後は、店舗を紹介する地域を増やしていくほか、東京以外の地方での展開も考慮している。「例えば、歴史のある京都などは銀座と似ている部分もある。行政と連携して、観光の要素も含めたサイトにすることもできるだろう」(同)。また、銀座の場合はコミュニティー放送局である中央エフエムとの提携も決まっており、さまざまなメディアと連携することで集客力の強化と店舗の拡大を狙う。

テレビ通販的サービスとして提案


動画サービスを開始した当初は、まだ携帯電話でネットの使い放題のサービスもなく、苦労した部分もあるようだが、通信環境が整ってきたことでビジネスチャンスが広がってきた。テレビ局のCM収入が減少している昨今、制作会社である同社にとっても他人事ではない。新たな収益の柱を確立することが急務だ。
現在、みせぽん!の店舗紹介以外にも、ゴルフ場の動画による紹介を請け負っている。「実際にホールを見てみたい」というユーザーは多いそうで、全てのホールを動画で紹介するという取り組みには、かなりの効果が期待できるのだという。
こうしたサービスは、ネット販売企業向けにも応用は可能だ。ブランディングに活用することも考えられるし、チラシやDMなどにQRコードを掲載し、商品の使い方を説明した動画に誘導するといった使い方も考えられる。川辺社長は「携帯電話のテレビ通販、言うなれば『テレショップ』として、通販企業にも積極的に提案していきたい」と話す。
携帯電話での動画活用はまだ始まったばかり。ただ、文字で説明するには限界のある携帯電話の場合、動画は言葉や写真を補う存在として期待は大きい。集客に直結する動画販促とは何か、そして、どのような動画を作れば視聴後の購入率を上げることができるのか。ネット販売企業の取り組みに注目したい。




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