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iPhone向けのモバイルECサイトは今、必要なのか?








08年7月に鳴り物入りで日本でも発売された「iPhone(アイ・フォン)」。それまで携帯電話ではあまり馴染みのなかったタッチパネルでの操作性や、ネット閲覧に便利な仕組みが施された端末は話題を集め、発売当日には販売店に長蛇の列ができるなどの騒ぎが起こったことは記憶に新しい。
 ただ、その後、日本の携帯電話では当たり前となっている着メロや着うた、メールに絵文字やデコメが使えない等の事情などで、一般的なユーザーにとっては「使いにくい」とされ、一時の騒ぎは嘘のように静まった。販売台数もそうしたことから、当初、想定されていたほど伸びてはいないようだ。
 しかし、だからと言って、まったく「iPhone」を無視していいのだろうか。確かに一般ユーザーの保有率はさほど多くはなさそうだが、IT機器を使いこなし、情報感度が高い先進ユーザーと言われる層に関しては、iPhoneの優れたWEB閲覧機能や操作性については評価が高く、保有率も高いようだ。
 当該層は他のユーザーにも影響力を与える存在であり、当然、ネットショッピングに関しても、同様であろう。また、こうした層はECで商品を購入する場合も総じて多い。そうした観点で言えば、モバイル通販実施企業も全く無視していいというわけにもいかなそうだ。また、下火になったとは言え、今後、日本市場向けに端末を修正するなどでiPhoneの販売台数が再び、伸びるかも知れない。今すぐに何か手を打たねばならないという段階ではないにせよ、いずれは対策が必要となるかも知れない「iPhone」ユーザー向けのモバイル通販対策について考えてみる。

対策には専用サイトが必要?


 iPhoneの特徴の1つはWEBサイトの閲覧がしやすい点。IMJモバイルが実施したアンケート調査によれば、iPhoneの購入理由として最も多かった回答は「PC機能(PCサイト閲覧など)が備わっているから」だった。
実際、iPhoneユーザーに利用する機能を聞いたところ、「WEBサイト閲覧」と答えたユーザーは約7割に及び、iPhoneの多くが同端末を使ってサイトを閲覧しているという状況が見て取れる。こうしたiPhoneの特徴を考えれば、少なくともネット販売事業者は当該層が見やすく閲覧できる通販サイトを持っておく必要がありそうだ。
 というのも、ごく基本的なことではあるが、現状、iPhoneではモバイル用のサイトを閲覧することができない。iPhoneで基本的に閲覧できるのはWEBサイトのみとなっているためだ。「じゃあ、もうあるからいいや」と思われる読者も多いと思われるが、実際、iPhoneでサイトを閲覧してみると、非常な違和感を感じる。
それはiPhoneの画面ではサイトの全体像を見ることができず、PC用に作られたサイトを部分的にスクロールしながら、見ていかねばならないためだ。それはiPhoneユーザーにとっては見にくい状態となってしまっている(写真参照)。
 それでは解決策があるのかということだが、答えは簡単。iPhone専用サイトを用意すればいいのだ。iPhone専用サイトとはiPhoneのブラウザ表示サイズやインタフェイスに合わせて、サイトを作り、文字のボタンの大きさなどを工夫したもの。
先のIMJモバイルの調査をまた引用すればiPhoneユーザーはPCサイトよりも当然、iPhone専用サイトの方が、操作性や印象という点で評価が高く、「再び閲覧したいサイト」もPCサイトや約35%に対し、iPhone専用サイトは65%に達しているとの回答があったようだ。つまり、情報感度の高いiPhoneユーザーに対して、アプローチするためにはiPhone専用サイトの設置が効果を発揮するということだろう。

現状はアマゾンなど数社のみ


 では現状、iPhone専用サイトはどの程度、あるのだろうか。正確な数は不明だが、約50サイト程度でまだまだ少ないと言える。このうち、通販サイトはどの程度かと言えば、代表的なところではアマゾン。これに加えて、ショッピングサイトと言えるのかは分からないが、DVDレンタルの「ぽすれん」なども専用サイトを構えている。逆に言えば、iPhone専用サイトをいち早く構えることで、iPhoneユーザーのショッピング需要を取り込めるチャンスにもつながる可能性があるわけだ。
 それでは具体的にiPhone専用サイトを構築する際、どういった点を注意すれば効果的なサイトを作り上げることができるのか。iPhone専用サイトの構築支援事業を行うIMJモバイルの真中和彦モバイルユーザビリティ研究所所長は「通販サイトではないにせよ、iPhoneユーザーから評価の高い専用サイトが参考になる」という。
 真中氏によれば、同社のアンケート調査結果からユーザーから評価が最も高いiPhone専用サイトとは「ヤフー」だという。評価の理由としては「ボタンが押しやすい」「ちょうどいいサイズで見やすいから」といったもの。既存のコンテンツをいかにiPhone用に見やすくできるかが、ポイントとなりそうだ。ちなみに評価された専用サイトの順位はヤフー以下、グーグル、iPhone、アマゾンなどとなっている。

タッチパネル携帯ユーザー対策にも


 ちなみにiPhone専用サイトの構築費用は請け負う会社にとって、まちまち。数百万円が相場のようだが、すべてをiPhone専用サイトにするか、トップページのみをiPhone専用にして下の階層はPCサイトのままなど「どこまでやるか」によってまた、費用は変わってくるようだ。
 iPhoneの今後の普及率によって、iPhone専用サイトを今、作るべきか否かは変わってくる。それは各社の判断に委ねるが、一方で各メーカーからiPhoneと同様に、タッチパネルで操作するタイプの携帯電話端末も続々と発売され始めている。iPhone専用サイトをそのまま、それらに転用はできないが、活用できる部分もあるようだ。「タッチパネルの携帯電話ユーザー対策」という観点でiPhone専用サイトの立ち上げを考えてみても良さそうだ。




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