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モバイル通販の集客策の隠れた定番、
"リードメール"とは?






モバイル通販の集客手段は携帯サイトや携帯メールでの広告というオーソドックスな手段以外にも、最近はモバイル検索広告や、モバイルサイトに対するSEO/SEMなどなどプロモ手法は多様化している。しかし、それら以外にも集客のための「知る人ぞ知る」サービスがある。それが「リードメールサービス」だ。
仕組みはこうだ。携帯サイト(PCサイト併設の場合も多い)に、IDとパスワード、携帯メールアドレス、生年月日や性別、郵便番号や未婚/既婚程度の属性情報を匿名で登録するだけで、携帯電話に広告メールが配信される。あとは携帯メールに記載されたURLをクリックし、携帯サイトを閲覧するだけで、その都度1〜3ポイント(1~3円分に相当)のポイントが加算されていくという仕組みだ。ポイントは多くの場合、一定以上のポイントを貯めることで、銀行口座に現金振り込み、あるいはEdyギフトとして、さらには「モバイルSUICA」のような交通系ポイントへの交換や他のネットポイントへの交換もできる場合が多い。
さらにリードメールサービスは、単なる広告クリックだけではなく、他にもさまざまなアフィリエイト的仕組みが加わっていることが多い(表参照)。
こうしたサービスのカテゴリーそれ自体は格別目新しいものではない。携帯ネットの登場以前、PCインターネットの頃から、こうしたアフィリエイトメールサービスは、GMOインターネットやサイバーエージェントのような新興IT企業にとって収益の柱となるサービスの1つだった。

パケット定額制の普及で「隠れた人気サイト」へ


 携帯電話の世界でも2001〜2002年ぐらいから携帯メールを用いたリードメールサイトはいくつか存在していた。しかし、サービスが一気に拡大したのは、やはり携帯電話のパケット定額制がスタートした2003年後半からだ。パケット料金を従量制で支払っていたら、メール1通を受信してサイトにアクセスするだけで、還元されるポイント分を超えるパケット料金がかかってしまうためだ。
現在、主に携帯電話でこうしたリードメールサービスを提供する事業者は、主なものを数え上げただけでも30社以上に上る。前述したような大手IT事業者は同じ仕組みを携帯電話向けにも拡大しているし、楽天のように、通販自体を提供する事業者も同様のサービスを行って「楽天市場」内の店舗への集客手段を提供している。同社はグループ企業であるInfoeekが「Infoseek メールdeポイントモバイル」というサービスを提供、得られたポイントをそのまま自社の「楽天スーパーポイント」へと還元することで効率的なエコシステムを作り上げている。
こうした大手だけでなく、「独立系」とも呼べる新興ベンチャー企業もまた勢いがある。2004年にいち早くリードメールサービスを開始したオープンキューブの「お財布.com」は、サービス開始後4年半ほどで既に140万人の会員数を獲得。実際、リードメールサービスの世界は、30万人から100万人を超える会員数を抱える事業者も珍しくはない。パケット定額制の広がりと共に、SNSやブログ、動画サービスなどが表舞台で脚光を浴びる一方で、「隠れた人気サイト」としてひそかに人気を集めてきたのだ。

自社ポイントと独自ポイントで「ポイント2倍」に


 こうした事業者のサイトを見ると、多くの大手通販事業者の多くがこうしたリードメールサービスを活用し、通常の自社会員より多くのポイントを還元していることに驚かされる。
ある人気のリードメールサイトを見ると、楽天市場はリードメールを利用して物品を購入すれば、通常の「楽天スーパーポイント」に加えて、リードメール事業者が運営するポイントを、やはり100円購入毎に1ポイント分ずつ還元する。つまりユーザーから見れば、リードサイト経由で物品を購入するだけで、事実上「100円購入ごとに2円分」のキックバックを受けられるわけだ。
楽天だけではない。リードメールサイトでこうした仕組みを利用している通販事業者は、「ユニクロオンラインストア」「無印良品」「ニッセン」「セブンアンドワイ」「Yahoo!ショッピング」「イマージュ」「ベルメゾンネット」など、枚挙に暇がない。確かにユーザーにとって「リードメールサイトを通じて買うだけでポイントが2倍かそれ以上になる」という仕組みは、理屈抜きで魅力的と写ることだろう。

集客の過半数がリードメールという事業者も


 かくも活況を呈するモバイルのリードメールサービスだが、なかなか表立って取り上げられることが多くないのはなぜだろうか。
さるモバイル広告関係者は匿名を条件にこう語る。「モバイル広告では、リードメールのようなアフィリエイトは、ある意味で広告の意義を脅かす存在。我々の立場からすれば『アフィリエイトは広告ではない』と思っている」。ある通販事業者は「リードメールは、正直、『苦しい時の神頼み』のようなところがある。現場の担当者からすれば、サイト認知や集客、売上が目標の数字に達しないときは、こうしたアフィリエイトに頼らざるを得ないところがある」と言う。
事実、中には携帯サイトにおける会員登録の過半数がリードメールサービス経由という事業者すら存在しているほどだという。確かに、限られた宣伝広告費の中で、リードメールのようなアフィリエイトは、他の販促手段に比べて最も「数字が結果に反映しやすい」手段の1つなのかもしれない。
華やかなモバイル広告やモバイルマーケティング、モバイルSEO/SEMなどが、ケータイビジネスの「表の顔」とするなら、密かに活況を呈する、こうしたアフィリエイト系のモバイルサービスは、「事業者の本音」の部分なのかもしれない。



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