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アマゾンジャパン、「靴と鞄」の通販サイト新設

――送料無料、返品無料でファッション分野に本格参入




アマゾンジャパンが08年11月27日、「靴」と「鞄」に特化した専門通販サイトを開設した。"売り"は購入金額に関わらず、すべての商品の配送料金を無料かつ翌日に配送すること。これに加えて「強力」なのは、購入後、30日以内であれば送料も含め、無料で返品対応することだ。チャン社長は「(靴と鞄には)大きなマーケットが存在するが、ことオンラインで考えると大きな競合はいない」として、本サイトである「amazon.co.jp」とは別立ての専門サイトを新設し、当該分野に本格参入した格好だ。 今後は靴および鞄の取扱商品数を「アグレッシブに拡大していく」(同社)一方で、「当面は考えていない」とはしているが、当然、延長線上にはファッション分野では避けては通れない「衣料品」の取り扱いも検討していると見られる。 ファッション分野はECを含む通販では言わば「花形」であり、取り扱う通販事業者も多い。「無料配送、無料返品」という武器を駆使し、ファッション関連分野に本格的な参入を果たしたアマゾンの動きは今後、既存のファッション分野のEC市場に大きな影響を与えることになるかも知れない。


「試し履き」して気に入ったモノだけ買ってもらえばいい


アマゾンが新設した靴と鞄に特化した通販サイトは「javari.jp(ジャヴァリ・ジェーピー)」。アマゾンはこれまでも取扱商材を拡充してきたが、いずれもアマゾンの本サイト内での展開だった。今回、別サイト化した理由について「(靴や鞄は)ファッション性、シーズン性が高いため、専門サイトとした方が顧客ニーズに合致すると判断した」(同社)としている。
スタート時点では国内外の人気ブランドを中心に300ブランド、3400点を販売する。品ぞろえはアマゾンの本サイトの「アパレル・シューズ・時計」のカテゴリで販売している商品と基本的に同一。ただ、本サイトでは販売している仮想モール「マーチャント@」の参加企業の商品は「ジャヴァリ」では販売せず、アマゾンが自ら仕入れを行う商品のみを販売する。
その新設した「ジャヴァリ」の最大の特徴は、購入金額に関わらず、すべての商品を全国配送料無料で翌日に配送。また、商品到着から30日以内であれば、送料を含み返品を無料で受け付けるもの。「自宅で『試し履き』してもらい、気に入らない商品は返品してもらうといった使い方をして欲しい」(同社)としており、「購入したすべての商品が気に入らなかった場合、すべて返品してもよい」(同)のだという。
もちろん、「送料無料」自体は他の通販サイトでも実施しているところは多い。ただ、「購入金額○○円以上は無料」と購入金額に一定の制限を設けている場合がほとんどだ。また、「返品無料」に関しても、同様で対応しているサイトもあるにはある。ただ、「代わりの商品を購入すること」など一定条件が付く場合が多い。
一方、「ジャヴァリ」の場合は「購入金額に関わらず、送料無料」だ。また、「返品」に関しても「外で履いた」等よほどの事情がない限り、原則、何度でも無料で返品、返金に対応する。無論、こうした顧客サービスを実施すれば、特に「履いて見なければ分からない」という靴に関して、ネットでの購入に二の脚を踏む新たな顧客の購入を後押しする効果は絶大だろう。
ただ、なかなか他社が実施できないのは「送料無料」はもちろん、返品率が増加すれば、それに伴う在庫管理や手続き処理にかなりのコスト負担が発生するからだ。これについてアマゾンでは「返品率などは本当に考えていない。目的はあくまでお客様に『よいお買い物体験をしてもらうこと』」と、コスト負担に関して、全く機にしていないようだ。ワールドワイドで利益を確保できればいい、というアマゾンだからこそできるサービスであり、これが他社では真似できない所以だ。

「ズーム」など靴、鞄を"魅せる"各種機能を実装


 送料無料、返品無料という武器のほか、「ジャヴァリ」はサイト自体も非常に考えられた作りとなっている。わざわざ「amazon.co.jp」とは別サイト化しただけのことはあり、特に多様な種類とサイズがある靴の「見せ方」に関しては、ユーザーにとってわかりやすい導線を構築している。
 靴、鞄ともにカテゴリやブランド、価格帯、色などで商品の検索が可能。靴の場合には「ヒールの高さ」でも検索できるように工夫している。また、商品詳細画面では7つの画像を用意、様々な角度から商品を確認できるほか、簡単な操作で商品画像の詳細を見ることができる「ズーム機能」も実装。素材や裏地、装飾など細部まで確認できる仕組みとしている。
アマゾンは「送料、返品無料」とEC最大手としてこれまで培ってきたネット販売のノウハウを武器に、新たな通販サイトで本サイトである「amazon.co.jp」ではなかなか取り込むことの難しかった20代、30代の女性層の獲得を強化していく考えだ。

既存の事業者にとっては"脅威"となるのか?


アマゾンのこうした動きはすでにファッション関連商品を扱うEC事業者にとっては脅威に映っているようだ。「送料と返品が無料というのは、コストや作業負担などを考えると、とても真似できないサービス。今後の行方をとりあえず見守りたい」とあるファッション関連EC実施企業の幹部は話す。
これに加えて、既存事業者にとって脅威なのは「当面はない」と否定している衣料品の取り扱いだろう。靴や鞄にとどまっているならばよいが、これが通販の花形であり、当該ジャンルを主力商品として展開している衣料品まで取り扱いを拡充。さらに靴などと同様、衣料品にも無料返品などが付加された場合、これまでのファッション関連のEC市場の勢力図を塗り替える恐れも出てくるからだ。
ただし、すでに日本の「ジャヴァリ」に先駆けて06年12月に米アマゾンが開始した「靴と鞄」の専門サイト「Endless.com(エンドレス・ドットコム)」でも「サングラス」等のファッション小物の取り扱いなどは始めているが、アパレルに関してはまだ、取り扱いを始めていない。そうした点を考えると、アマゾンが説明する通り、「ジャヴァリ」においても、アパレルの取り扱いは先の話にはなるだろう。
ただし、アマゾンが狙う「女性層取り込み」の延長線上として当然、アパレルの取り扱いを検討していることは間違いない。南米・アマゾン川の支流「ジャヴァリ」の名称を冠した靴と鞄の通販サイトの今後について、特にファッション関連商品を扱う通販企業は動向を注視する必要がありそうだ。

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