2009.12 無料公開記事      ▲TOP PAGE


独自スタイルで音楽市場を活性化

野口邦昭 レコチョク シニアマネージャー




今年1月にCDやDVDなどを販売する携帯電話向け通販サイト「レコチョクショッピング」を開設した、携帯電話向け音楽配信サービスを運営するレコチョク。同社の運営する「レコチョク」は日本最大の携帯電話向け音楽配信サービスで、アクティブユーザーは約1800万人。利用者の中心は20〜30代の女性だ。その集客力を生かし、着メロなどをダウンロードするユーザーにCDを販売している。10月からは、新たに化粧品と衣料品の取り扱いを開始(衣料品は11月中旬から)。商材拡大の狙いはどこにあるのか。コマース&ソリューション本部の野口邦昭シニアマネージャーに聞いた。(聞き手は本誌・川西智之)


音楽配信との連動がサイトの個性につながる

レーベルと一緒にヒット曲をつくる

――今年1月からCDとDVDの販売を開始しました。手ごたえはいかがですか。

まだ開始したばかりということもありますが、数字は順調に伸びています。ある曲が着うたや着うたフルでもヒットし、さらにシングルやアルバムもヒットするという流れを作りたいと思っているのですが、パッケージの良さがきちんとアピールできていることが販売につながっているのではないでしょうか。もちろん、売上額でいえばまだまだ小さいですが、個性あふれるランキングになっています。ですから、ランキング自体がお客様の興味を惹く、レコメンデーションになっている部分もあります。

――レコチョクショッピングでCDを購入する消費者は、レコチョクで着うたフルなどをダウンロードした人なのですか。

楽曲の詳細からCDの購入リンクが必ず出るようになっていることもあり、ほとんどが配信から来ています。実は、レコチョクでダウンロード回数が多い曲は、オリコンなどのチャート上位に入っているCDに入っている曲とは少し違っています。さらに最近は、配信で人気のあるアーティストの曲が入っているCDも通販サイトで売れるようになってきています。つまり、巷のランキングと当社のCD販売のランキングには差があるわけです。配信との相乗効果が出ているということではないでしょうか。

――CDを販売する通販サイト数多くあります。差別化はどうやって図るのですか。

CDは再販制度があるため、価格での差別化はできませんが、さまざまな取り組みは行っています。例えば、イチ押し商品の選定方法や、サイトで実施する企画などを工夫しています。これらは配信でのヒットを見ながら決めている部分なので、他社の企画とは変わってくると思います。ただ、お客様の視点でいうなら、配信目当てで来たとしても、通販サイトでCDも買えることを知れば「買ってみようかな」と思うこともあるでしょうし、以前ダウンロードした着うたフルを気に入って、レコチョクから購入するというお客様もいるでしょう。音楽配信と足並みを揃えるだけではなく、レーベルやアーティストとの共同企画も徐々に始まっています。

――オリコンなどで売れ筋のCDよりも、配信で人気のアーティストをプッシュするということですか。

もちろん、今ならGReeeeNのように、人気のあるアーティストのCDを売る必要があるのは、どの小売店も同じでしょう。ただ、大手サイトのように大々的に売り出すことはできませんからね。レコチョクとして「着うたが売れているので、パッケージも買ってください」というレコメンデーションをお客様にしているわけです。売れ筋のCDも売りつつ、こうした独自のアプローチも行うことで、どうすればレコチョクユーザーにうまくアピールできるのかを試しています。配信とうまく連動することが、レコチョクショッピングの個性につながってくるのではないでしょうか。レーベルと一緒にヒットを作っていく、というのもレコチョクの大きなテーマです。

――とはいえ、後発ということもありますし、ポイントのあるアマゾンなどに比べると、消費者の囲い込みという点では不利になるのでは。

もちろん他社に流れているケースもあるのでしょうが、音楽配信もあり、パッケージも買えるレコチョクというサイトは、お客様のライフスタイルにマッチしているならば、非常に買いやすいサイトのはずです。あるお客様が配信で人気のあるアーティストのCDが欲しいとして、お店に行っても置いていない。大手通販サイトで買うとしても検索をしないと見つからない。こうしたニーズに対応することができるわけです。

ネット販売を初めて利用する人も

――レコード会社が出資していることが有利に働く部分もあるのでは。

良く言われることですが、そんなことはないですよ。ビジネスですから、まずは実績を残す必要があります。

――逆に、レコード会社が出資している会社が販売も手がけるというのは、小売りからしてみれば面白くないのでは。

まだ相手にされるほどの売り上げはないですからね(笑)。そもそも、既存の小売店のライバルとなる存在を目指しているわけではありません。もしそうならば、売り上げを大きく伸ばしていくことが最大の目標となりますから、「配信は人気でもパッケージがまだ売れていないアーティストを、レコチョクショッピングでプッシュする」という発想は生まれませんからね。まずはレコチョクショッピング独自のスタイルを作り、CD市場を少しでも活性化していきたいと思っています。共存共栄はできるはずです。

――一般的なレコード店とは住み分けができているということですか。

レコード店でCDを購入する消費者とは違う層に対し、どうアプローチするかが課題なわけです。ですから、結果としてオリコンなどのチャートとはランキングも変わってきます。これまでは着うたをダウンロードする消費者にCDを販売する手段がなかったわけですから、通常の小売りと食い合うことはないはずです。着うたが始まったときにも「音楽配信が流行すればCDが売れなくなる」という声もあったのですが、最近は着うたの人気がCDが売れるかどうかの指標になっている部分もあるわけですからね。

――レコチョクショッピングの利用者は、ネット販売に慣れていない層も多いのでしょうか。

アンケートによると、レコチョクショッピングで初めてネット販売を利用したというお客様も多いようです。レコチョクという音楽配信サイトが培ってきたブランドの信用力のおかげかもしれませんし、ケータイから手軽に買えるということも大きいでしょう。若いお客様も多いですから、中にはこれまでCDを買ったことがないという人もいたのではないでしょうか。今後はそういった人がさらに増えるかもしれませんね。

――決済手段は、携帯電話のキャリア決済の利用が多いのですか。

クレジットカード、代引き、キャリア決済の3種類を用意していますが、代引きとキャリア決済が大半ですね。すでに、音楽配信でキャリア決済の便利さを体験しているお客様が多いですから、使いやすいのではないでしょうか。

音楽やアーティストを軸に消費者に提案する

買いやすい価格帯の商材を販売

――10月から化粧品の取り扱いを開始しました。商材の拡大は当初から考えていたのですか。

レコチョクショッピングは、お客様のライフスタイルに、音楽やアーティストを基軸とした消費を提案するということがテーマです。例えばファッションリーダーのアーティストもいるわけですし、音楽にひもづけた消費行動というものが広がっているわけで、そこをきちんと提案していきたいと思っています。お客様にリサーチした結果、F1層が多いこともあり、化粧品やファッション関連の需要が高いことが分かったので、10月から化粧品を、11月から衣料品の取り扱い開始を決めました。

――化粧品の取扱商品数や単価は。

初回は81点です。サンプルセットも用意しました。単価は1〜2000円と比較的低単価なものからスタートします。CDと同時に購入するものですから、手を出しやすい価格帯の商品を取り扱っています。

――衣料品はどういった商品を販売するのですか。

F1層が中心ですから、なるべく需要に合致した商材を投入していく予定です。具体的には決まっていませんが、単価は低めになる予定です。

――商材の調達はどうするのですか。

化粧品に関してはコスメ・コムから仕入れています。

アーティストとのコラボ企画推進

――これまでとはまったく違うジャンルの商材を販売するわけですが、消費者にはどのようにアピールしますか。

基軸は音楽やアーティストです。10月28日には、コラボレーション特集企画として「アーティストの小部屋」をスタートしています。第1弾として、デビュー曲と10月に発売した2曲目がレコチョクの週間ランキングで1位となった、3人組のギャルユニット「Juliet(ジュリエット)」を特集しました。彼女たちにお気に入り化粧品や流行している化粧品などをインタビューしているのですが、合わせて今後発売されるアルバムも紹介し、購入できるようにしています。

――コラボ企画を通じて、F1層のライフスタイルに関連した商材を紹介するわけですね。

こうしたアーティストのライフスタイルが分かるような特集は、同世代の女性には非常に影響力があると思っています。例えば、海外の有名アーティストも自分のブランドを持って、衣料品を販売していますし、日本でも有名人が使っている商品に人気が出ることは多いですよね。要はその人のライフスタイル自体が憧れになっているわけです。お客様が求めていて、かつアーティスト側でも問題がないのであれば、関連した商材を増やして、お客様にサービスしていくというのは自然な流れではないでしょうか。今後も配信で人気のあるアーティストを取り上げる予定です。

――インタビュー内で紹介された化粧品を販売するのですか。

ただ、あまり露骨にやりすぎると商品の広告になってしまいますから、それはやらない方向です

――それでは、どのように化粧品などの販売につなげるのですか。

インタビューのページから、化粧品の販売ページに飛べる形にしています。本当は記事広告の方がいいのかもしれませんが、そういったものに拒否反応を起こすユーザーも多いですからね。インタビュー記事も、あくまで雑誌感覚です。

――商材の拡大は考えていますか。

基軸は音楽とアーティストとなりますが、お客様の需要があれば広げていきたいですね。まずは化粧品と衣料品で実験を行い、ある程度結果が見えてきた段階で次のことは考えたいと思っています。

――今後の目標は。

売上高目標に関しては非公開ですが、商材拡大の前に、商品点数の増加も考えています。機能面ではレコメンドやレビューなども取り入れたいですね。

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