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12月から「返品条件」の表示が

ECサイトに義務化、準備は大丈夫?




2009年12月から、ネット販売を含む通販実施企業が守らねばならない「新たなルール」が導入される。いわゆる「返品特約の表示」の義務化だ。これは08年6月の特定商取引法改正に伴うもの。要は通販事業者と消費者の間で、多発する「返品時のトラブル」を防止するべく儲けられたルールだ。
通販カタログや通販サイトに、「食品は返品不可」などの返品の可否や「商品到着後、○○日以内」などの条件の記載がない場合は、商品到着から8日以内であれば、消費者は無条件で返品ができる。逆を言えば、通販事業者は原則として「返品条件」を各媒体に"明示"する必要がある。
「返品条件なんか、とっくに表示している」というネット販売実施企業が当然、多いだろうが、ポイントはその「表示方法」がルール化されるということだ。つまり、返品条件を表示しておけばいいというものではなく、消費者にとって分かりやすく「明示」しなければ、それは「表示していない」ことと同じということになる。
この返品条件の"明示"というのがやっかいで、いかに通販事業者が「返品条件」、例えば「当該商品は返品不可」などと記載しても、「消費者が容易に認識できない表示」の場合は、返品不可と謳う商品でも「8日間は無条件返品」とされてしまう可能性があり、ネット販売事業者も注意が必要となる。
こうした返品ルールの表示方法を巡っては、経済産業省からガイドラインがすでに公表されてはいたが、複数の通販事業者の間では「(表示例などが)ざっくりとしすぎて分かりにくい」「ガイドライン通りに"表示"すれば、かえって"ごちゃごちゃ"して、消費者にとって分かりにくくあるのでは」との声も出ており、「明確な表示方法」の具体例が求められていた。
そうした中、日本の主要な通販実施企業が加盟する日本通信販売協会(JADMA)が9月11日、経産省のガイドラインよりも、より具体的に表示例などを挙げた「返品特約表示」に関する指針を公表した。同ルールが適用されるのは09年12月で、あと1カ月足らずで、施行される。無論、施行されたから「知らなかった」では済まされない。実施にはそれなりの準備と手間がかかりそうでJADMAの指針を参考に早めの着手が必要だ。読者の皆様の通販サイトではその準備は大丈夫だろうか。



「とにかく分かりやすく」が基本

JADMAが公表した指針では「分かりやすい返品特約の表示」について、「分かりやすい位置」「小さな文字を使用しない」「文字は字間・行間を十分にとる」「背景と文字のコントラストを強くする」「商品価格や申込電話番号の近くに表示する」「商品価格と同じ文字サイズにする」「色文字・太字を用いる」「取引条件をまとめて記載する」といった基本的なポイントとともに、通販媒体として主要なカタログ、インターネット、テレビ、ラジオの4媒体におけるそれぞれのポイントを示している。その中から通販サイトに関する返品特約の表示に関するポイントを見ていく。
インターネット通販に限らずだが、「返品特約の表示」のポイントの基本は、どんな形で表示するにせよ、利用者にとって「とにかく分かりやすいこと」が原則。先に挙げたように、誰もが目にする場所に、大きく分かりやすく表示することが基本だ。
その上での表示方法としてはいくつかのパターンがある。返品条件が商品ごとに個別に存在する場合は、各商品ページや最終申し込み画面で「到着後○日以内に限り返品可」や「使用前に限り返品可」「食品は返品不可」「送料はお客様負担」などの返品についての重要事項を個別に明示する必要がある。
返品条件がどの商品も同一な場合や、多くの商品で同じ場合などは、商品ごとに返品条件を表示すると、情報量が多くなり、かえって消費者にとって分かりにくくあることから、「ショッピングガイド」など返品条件などをまとめたページにまとめて返品条件を記載。各商品ページなどから、「ショッピングガイド」などへのリンクを貼る形も可能だ。そのほか、インデックスタブに「ショッピングガイド」を設け、「返品・交換について」の条件やルールを表示するやり方などがある。

ショッピングカートの表示がお奨め

JADMAが挙げる「返品条件の表示」のやり方の中で、ネット販売事業者にとっても、消費者にとっても分かりやすく、面倒でないやり方としては、「ショッピングカートでの表示」が効果的だと思われる。商品を購入しようとする消費者が必ず確認する画面であり、ここに表示することで必ず返品条件を目にする。また、ここで表示することで、個別の商品ページの返品条件の記載を抑えられ、商品画面も見やすくなるからだ。
その「ショッピングカートでの表示方法」だが、これもいくつかのやり方があるようだ。例えば、消費者が商品をショッピングカートに入れた後の画面で、送料や支払い方法などとともに、「返品条件」についても併記。そこにマウスを乗せると、プルダウンで詳細が見られる方法。ほかにも、同じく商品をショッピングカートに入れた後の画面で、購入商品一覧と近接して「ご注文の前に必ず当該商品の返品条件について、『ショッピングガイド』をご覧下さい」などと表示。それをクリックするとショッピングガイドのインデックスが表示され、当該商品の「返品条件」が確認できる方法がある。
このほかにも、JADMAでは同指針の中でいくつかの表示パターンを挙げており、自社サイトで販売する商品や状況に併せて、効果的な返品条件の表示方法を考える必要がある。

きちんと表示しトラブル回避を

以上のように適切な形で、事前に通販サイト上で返品に関する条件を記載していれば、消費者と無用なトラブルを回避できる。逆に言えば、きちんと返品条件を明示しておけば、これまでは断るにも断りきれなかった消費者都合の返品も受ける必要がなくなる。
ただし、本質は「消費者に返品させるような誤解を生む表現・説明をしないこと」。確かに法律で認められた「返品特約の表示」を適切に行なっていれば、消費者が何を言ってきたところで「きちんと事前に返品の条件を説明したでしょ」と突っぱねることはできる。ただし、どんなに説明したところで、それらを見ない、または目に入らない消費者は必ずいるはずで、そうした顧客には当該企業の対応に不満が募ることは間違いない。結果として、いつも購入してくれていた顧客が離れてしまう事態も出てくるわけだ。
サイト上での返品条件の説明は無論のことだが、そうした事態を避けるためにも、例えば、商品の配送時に返品条件を説明したパンフレットなどを同梱するなどの「親切」が必要だ。これはJADMAでも推奨している。やりっぱなしではなく、いかに分かってもらう努力をするかこそ、重要だ。
今年12月からは返品特約規定が施行される。せっかく返品条件を掲載しても「あいまいな表示」や「表示したから後は知らない」では逆に消費者とのトラブルが増えるケースも考えられる。通販事業者はJADMAの同指針を参考(※同指針はJADMAのサイト=http://www.jadma.org/)からダウンロードできる)に問題のない形で返品規約を明示してかつ、それを分かってもらう努力が必要になるだろう。
【編集部・鹿野利幸】

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