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2年後に上場、「やってやります」

与沢翼 エスラグジュール代表取締役社長兼CEO 




「2年後には上場しますよ」――。"お兄系ファッション"のモバイル通販をメーンに展開し、急激に売上高を伸ばすエスラグジュール。今年9月19日にはお兄系、ギャル男系ファッションの聖地、「渋谷109−A」への出店も果した。与沢社長は創業5年で売上高30億円、経常利益3億円、そしてマザーズ上場と公言してはばからないビッグマウスの26歳。高校を3日で中退、大検取得後に入学した早稲田大学ではビジネスコンテストで優勝、学生起業家となった異色の経歴の持ち主でもある。開拓者と呼ばれる人の20代がそうであったように、与沢社長もまた、高いモチベーションを持ち、どこまでも強気の姿勢だ。(聞き手は本誌・小西智恵子)


「109−A」系市場では競合他社からシェアを奪取します

お兄系のモバイル通販で頭角

――2011年2月期の売上高が30億円、経常利益3億円を見込み、期中の東証マザーズ上場を目標として掲げています。お兄系ファッションのネット販売で、"新星現れる"と評判です。売り上げも順調に伸ばしていますね。

2006年3月に「株式会社エスラグジュール」を資本金620万円で設立しました。翌月にはメンズファッションの通販サイト「CRAZE(クレイズ)」を開設、主に渋谷「109−A」で販売されているブランドを取り扱うセレクトショップです。取扱商品の6割は買い取りで在庫を持ち、残り4割は委託販売やメーカー取り寄せなどとなります。自社ブランドも展開しており、「バルフェ」を筆頭に今秋には4つまで増えます。
自社サイトのほかに、楽天やビッダーズなどを展開しています。売上は自社サイトが最も大きく、チャネルはモバイル通販が8割を占めています(「クレイズ」は3キャリアの公式サイト)。

――前期(2009年2月期)業績を教えてください。

前期は3期目となるわけですが、まず初年度売上高2000万円、次年度が前期比2.5倍の5000万円。そして2009年2月期で前期比5倍の2億5000万円となりました。

――今期(2010年2月期)の上半期実績はどうでしょうか。通期見込みの売上高10億円は達成できそうですか。

はい。通年で月商の低い8月でも、今年は6000万円を超えました。8月中間期では売上高はおよそ3億円です。通期見通しについては、単純に2倍すると6億円ですが、月商が最も跳ね上がる12月は、今年は2億円を計画しており、また、通年予算でも下半期が始まる9〜12月で年商の4分の3を売り上げる計画ですので、今年度売上高10億円は達成できます。

――非常に高い売上高伸長率ですが、要因は。

創業から翌年の秋までは、ほぼ月商300万円で横ばいが続きましたが、その年(2期目)の年末商戦から伸び始めました。2007年12月には全てを"賭け"て、月商1000万円を達成しました。年末の売上が伸びるのは福袋が売れるからです。昨年12月は月商が初めて5000万円を突破しましたが、そのうち3000万円は福袋による売上です。年末商戦以外でもベースは右肩上がりです。要因は自社サイト「クレイズ」の伸びと、2008年7月に開設した「men's egg公式OUTLET」(お兄系男性誌「メンズエッグ」の公式アウトレットサイト)が好調で、この2つのサイトで売り上げの8割以上を占めています。

――ところで、起業したのは大学4年に進級する春(3月)ですね。何かきっかけがあったのですか。

私はいつでも自分が思う「かっこいいこと」を追求してきました。大学に入学した時はそれが弁護士でした。弁護士100人くらいを束ねるローファーム(大規模法律事務所)のオーナーになりたかったんです。高校を中退して学歴社会とは離れていた反動もあって、言い方が悪いですが「成り上がろう!」と考えていました。大学入学後はそれこそ、サークルにも入らず熱心に勉強していましたが転機が起きました。決定打となったのは、ネットエイジグループの創業者で代表取締役社長の西川潔さんが書かれた著書「起業は楽しい!21世紀ニッポンの起業家人生入門」です。 併せて新興市場で上場したIT企業の起業家たちのことを知るにつれて、単純に(そっちの方が)「かっこいい!」って思うようになりました。

――起業する際、事業としてネット販売を選んだのはなぜですか。

当時、年間で100〜200万円くらい、ネット通販で洋服を買っていました。ディオール(クリスチャン・ディオール)とかドルガバ(ドルチェ&ガッバーナ)とか、インポート品を並行輸入の通販サイトで購入していました。だから、法人を設立する前の事業プラン案の中には、同じようなインポート商品の通販サイト、という案もありました。実際にはやっていませんが。

――最終的に事業化したのは、今のお兄系通販サイトですか。

法人を設立してからはそうですね。「109−A」にあるメンズブランドのネット販売をどこよりも早く、成功させようと考えました。司法試験の勉強を止めて、車(トヨタ・セルシオ)を売却し、それを元手に起業しようと決めたのは私が大学3年生の9月でした。「エスラグジュール」を設立したのはそれから半年後で、その間には違う事業を試みています。それは、渋谷と原宿にあるメンズファッション店舗の仮想モールです。ただ、店からは出店料ではなく、販売委託料のみを徴収して収益とするビジネスモデルでした。

――うまくいきましたか。

いいえ(苦笑)。その当時は例えば、キャットストリート(裏原宿)にある店へ商品の撮影に出向き、それをサイトに掲載して販売します。そして商品が売れると、今度はまたその店まで歩いて当該商品を取りに行っていました。ショップの方も「それで成り立つの?!」とか、実際に売れて取りに行くと「こいつら馬鹿じゃないの?!」って呆れられていましたね(笑う)。でも当時は「とにかく人生を賭ける!」という勢いだけで、売価5000円の商品が「売れた!」となったらそれが丸ごと利益になるノリで、店まで取りにいっていました。商売の感覚が育っていなかったのです(苦笑)。

――そのモールが行き詰まり、次に「109−A」のお兄系ブランドのモバイル通販を新規事業として選んだのはなぜですか。

当時、レディースファッションでは「渋谷109」に出店するブランドを集めたモバイル通販サイトが月商数億円規模で既に成功していました。「ガールズウォーカー(ブランディングが運営)」「ナッティコレクション(同ナッティ)」「モバコレ(同モバコレ)」などです。レディースの09系では参入の余地はないですが一方、「109−A」はちょうど、創業直後の2006年3月28日にオープンしました。だから後発の我々としては、「109−A」についてはどこよりも早くネットで売る先行者になることを目指しました。現在、「109−A」出店ブランドの取り扱いはトップを自負しておりますので、今後はお兄系やギャル男系の競合他社からシェアを奪取していきます。

「物売り」はオールド産業の発想メディア戦略で勝ちにいきます

――お兄系、ギャル男系ファッションのターゲット層はパソコン所有率が低く、ネット通販はもっぱらモバイルです。最初からモバイル通販の市場を狙っていたのですか。

違います。当初はパソコンを想定していました。でも2カ月くらいでこのターゲット層がモバイルであることが分かりました。仕入先でネット販売しているブランドが、モバイルを中心に売っていたからです。
モバイル通販では特に、「ガールズウォーカー」をお手本にしました。回遊性など構造が優れていることが分かりました。モバイルサイトは当時、最後までスクロールすると行き止まり、ぶつ切りになるサイトが当時は多かったんです。それが「ガールズウォーカー」は絶妙なリンクが配置されていました。「こういう商品を見ている人にこんな商品を紹介したら滞在時間が長くなるよね」っていうのが上手なんです。メルマガも凄いですね。メルマガ向けにコピーライターやシナリオライターがいて、インターンも募集していました。(通販サイトを運営する企業に)そのような職種があること自体に驚きましたし、何より、「メディア」という概念を学びました。

在学中に「SNS×EC」実践

――学生起業家となった後、在学中にビジネスコンテストで優勝しています。それは既に創業していたネット販売と「メディア」を絡めたビジネスプランだったのですか。

SNSとEコマースを連動させた「ファッションモール連動型SNS」という事業計画で優勝しました。(大和証券グループ本社による早稲田の寄付講座「ベンチャー企業家養成基礎講座」で行われたコンテスト)。通販サイト「クレイズ」と連動したモバイル専用のSNSです。例えばマイページには毎日、新商品が表示されたり、ショップ店員の日記や写真と紐付けして、「クレイズ」とのコンタクトポイントを増やしていました。結果的に、本業(物販)が上手くいっていなかったので資金難を理由に閉鎖しましたが、アイデアは評価されていました。逆に、今は資金的に余裕が出てきたので、サイトのメディア化に再度、着手します。

――具体的には。

早ければ9月中にも「動画投稿サイト」「アパレルの求人サイト」「携帯向け着せ替え」の3つのコンテンツを立ち上げ、メディア化していきます。「携帯向け着せ替え」コンテンツについては、「クレイズ」内でも常設コンテンツとすることを考えており、公式サイトの強みを活かして、キャリア課金でも提供します。
ネット販売(EC)は、物売りだけの発想だと早期に天井を迎えます。例え良い商品を持ち、優れた商品政策であっても、商品をただ並べるという「物売り」、オールド産業の発想では限界がある。もっと構造的に稼ぐ必要があり、私どもはインターネットのメディア戦略で勝ちに行きます。現在の流入経路は@雑誌広告(「メンズエッグ」など)Aキャリア公式サイトBアフィリエイトC検索エンジンDCGM(ブログやmixiなど)ですが、先ほどの3つのコンテンツを別サイトで立ち上げ、連動させていきます。
例えば、Aブランドを購入した人へAブランドの着せ替えや求人を紹介します。「動画投稿サイト」では顧客がクラブで遊んでいるときのファッションなどを投稿してもらいたいと考えています。CGMとの連動は難しいですが、絶対に必要だと考えています。

――9月に「109−A」へ実店舗を出店、10月には渋谷マークシティへの本社移転と事業の拡張が続きますね。

「109−A」に出店する店は、自社サイト「クレイズ」の実店舗です。9月19日に「109−A」7階、エスカレーターを上がった目の前に出します。坪数は約22坪(72平方b)、自社ブランド「バルフェ」と9月から全営業権を譲り受け、当社が事業展開を行っていく「ピースオンマーズ」(フラッグシップ店がマルイジャム渋谷からクレイズ新店舗に移動。そのほか全国に取扱店がある)や、今秋に立ち上げる新ブランド「ディスレブ」、営業権が譲渡される予定の「ファニーフェイス」のほか、仕入れ販売のセレクトブランドを展開していきます。
もともと、Eコマースだけをやっていくつもりはありません。本来はSPA(製造小売業)を目指しており、「クレイズ」実店舗が月商1000万円になったら、革小物などを扱う自社のラグジュアリーブランド「ラグジュール」を立ち上げます。コンセプトは日本的ルイヴィトン。牛革を使い、財布やベルトなどを企画・生産します。
店舗については、5年以内に全国100店舗以上、10年後には1000店舗以上、そして海外にも出店したいと考えています。

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