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ヤフー、ウィジェットでネットとワンセグ放送を連動
――EC利用の可能性は?





ヤフーは6月10日、「ワンセグ」をフックに自社ネットサービスに誘導する新たな施策を開始した。ウィジェット(デスクトップ上で特定の機能を実行するための簡易的なアプリケーション)とワンセグを連動。視聴中の番組タイトルと解説をウィジェット上に表示し、その中の人名や地名などを検索機能に紐付かせ、利用者はテレビで気になった事柄をすぐにネットで検索できる仕組みだ。
現状では今後の展開等の詳細は不明。だが、文字情報の中に「商品名」などが表示されれば、ヤフーの商品検索やヤフーショッピングへ誘導させるなど、ECの新たな導線となる可能性は高く、通販事業者にとっても関係のあるサービスとなりそうだ。
現状、いかに巨大なポータルサイトと言えども、やはり「テレビ」の集客力にはかなわない。今回のサービスもテレビの新たな形である「ワンセグ」を活用し、自社サービスに引き込むトリガーとしたいのがヤフーの狙いだ。
今回発表したサービスは「ワンセグ」と言っても、PC画面上での利用をメーンにしたもの。PCでワンセグ放送を視聴するには数千円の専用チューナーが必要だが、「PCでテレビ視聴などすべてをまかなう、リテラシーの高い若者」を中心に視聴者は少なくないようだ。
ヤフーはまず、キャリアとの交渉など何かと障壁の高いモバイルより、比較的PCの方が入りやすいと考え、PCからサービスを開始。テレビを見ながらネットや携帯メールをする、10〜20代を中心とする「ながら視聴者」などを中心に利用者拡大を狙うようだ。しかし、ワンセグを活用したサービスであることから、最も利用者の多いモバイルでの展開についても、今後、どこかのタイミングで開始すると見られる。


出演者の発言を検索


開始した「ワンセグウィジェット」はワンセグ視聴用ウィジェットという位置付け。ワンセグ放送をPC画面上で視聴しつつ、番組内容と連動するキーワードの検索やチャットなどを行えるというものだ。
ワンセグ視聴用ウィジェットを起動すると、PC画面上にウィンドウが現れ、番組の解説など関連する文章を表示する。この文章のテキストデータをチューナー側から読み取り解析、人名や地名などのキーワードを抽出。いくつかのキーワードがクリックできるようになっている。
ユーザーは気になるキーワードを選択すると、自動的にヤフー検索の検索結果がウィンドウ下部に表示され、閲覧したい結果をクリックすればブラウザで該当ページを閲覧することができる仕組みだ。「ウェブ」以外では、「知恵袋」や「画像」、「地図」などの検索に対応する。なお、キーワードが人名の場合は画像検索、地名の場合は地図検索が表示されるようになっている。
サービスのキモとなる検索キーワードについては、「最もよく検索される」(ヤフー広報)、番組のタイトルや出演者名、地域、一般名詞などに限定されているようだ。だが今後、同社ではこの範囲の拡大に着手する方針という。


EC活用の可能性は?


あくまでユーザーのニーズとの兼ね合いによるため決定事項ではないが、例えば「番組出演者の発言した名詞などをリアルタイムで流す」(同)ことも技術的には不可能ではないとしており、こうした語句が検索キーワードの対象になる可能性が高いようだ。
こうした取り組みがどの程度まで拡大するかは、現在ではまだ明らかにされていない。だが、将来的なビジョンとして、ウィジェットの質を高めるため、情報量の拡大に着手していくことはほぼ確実と言っていい。となれば、例えば番組内で出演者が着用している服や小物などの情報を取得できれば、例えば、「商品名」に限っては、ヤフーの「商品検索」の検索結果をデフォルトで表示したり、直接、当該商品の購入ページへリンクすることなども実現できるという。
また、ヤフーのIDと連携させる取り組みについてもその可能性も示唆している。IDを所有するユーザーであればヤフーショッピングに誘導した際、「ヤフー!ウォレット」で決済できるため購入が容易であるという利点があるからだ。これらは「まだ企画段階」(同)ではあるが、実現すれば、露出機会の拡大などの面からも通販事業者にとって大きなメリットがあると言えるだろう。


PC展開は「試金石」?


残る最大の関心は、モバイルでの展開だ。そもそも同サービスは前記の通りテレビ視聴者をヤフーのサービスに誘導したいという背景から始まったものだが、実際にPC画面上でワンセグ放送を視聴するユーザーが現在どの程度存在するのか、そして、どれほどのニーズが今後見込めるのかは定かではない。
単純にこれまでのダウンロード数で見ると既に3万2000ダウンロードを超えており、「半年後に10万ダウンロード」(同)という目標を掲げてはいる。が、その数のユーザーが必ずしも実際に利用するわけではないため、どれほどの数が利用に結びつくかは不明だ。事実、同社でも「それほど大きな市場ではないかもしれない」(同)との認識を持っており、また、今後の動向についても、「フルセグのチューナーが既に出ているのでそれに切り替わるという予想をしており、ワンセグチューナーの市場が今後伸びるとは思っていない」(同)としていることから、PCでの展開はあくまで「モバイルでの展開に向けた試金石」という意味合いが強い、との見方もできる。
ただ、モバイルはキャリア依存が強いため同社の一存で始められる訳ではない。また、PCより視聴画面が小さいため、検索画面などをどういった形で表示するかなどの問題も気になるところで、早々に開始するという訳にはいかないようだ。だが、やはりワンセグの利用者数で言えば、圧倒的にモバイルがその多くを占めているため、その時期はともかく、今後モバイルでの展開に乗り出すことはほぼ確実と言えるだろう。圧倒的な利用者数を誇るモバイルでの展開が具現化すればさらなる商品露出度の向上も見込めるため、通販事業者はその行方を注視する必要がありそうだ。
【編集部・河鰭悠太郎】





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