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セプテーニが通販に参戦へ

――取得した中堅通販会社の「噂」の真偽は?




ネット広告代理業大手のセプテーニ・ホールディングスが"EC"に参戦するようだ。5月1日、民事再生中の中堅通販企業の通販事業を引き継ぐ受け皿会社に総額2億円に及ぶ資金援助を決めたと発表。資金援助は転換社債型新株予約権付社債を引き受ける形を採るため、今後、新株予約権を行使すれば、実質的にセプテーニHDの通販子会社となる。 効果的な集客手法などのノウハウや知見を持ったネット広告代理店はECにおいても、高いポテンシャルを秘めていると言え、セプテーニもかなり早い段階から、EC事業に興味を示していたようだ。実際、同じくネット広告代理店大手のサイバーエージェントがすでにECを展開中。グループにネットプライスやCAモバイルなどを持ち、高い成功を収めている。 それだけにセプテーニHDの動きは注目されるところだが、今回、資金援助を行った中堅通販会社は様々な問題を抱えているという噂もあり、業界内では「成功までの道のりは一筋縄ではいかないのでは」との声も出ている。果たしてセプテーニが満を持して参戦したEC事業の行方はどうなるのか。


テレマートの通販事業を実質取得

セプテーニが資金援助を行うのは「アクレス」。同社はラジオ通販事業などを軸にビジネス展開してきた現在、民事再生中の通販企業、テレマートの受け皿会社だ。
テレマートは順調に売上高を伸ばし、一時は年商200億円規模まで成長を遂げた中堅通販企業だったが、07年2月の債権回収会社設立の虚偽登記で前社長が大阪府警に逮捕。このほか、同年5月には景表法違反で公取委から排除命令を受け、対外的な信用が低下。これに伴う顧客や取引先離れ、また、ラジオ局との関係悪化で主力のラジオ通販番組が打ち切りとなり、業績および資金繰りが悪化。今年2月には従業員が大阪地裁に民事再生法の適用が申し立てられ、民事再生中だった。
その後、大阪地裁より事業譲渡の許可を受け、支援企業として企業再生のダイ・コーポレーションが選出された。同社はテレマートの従業員を含む通販事業を引き継ぐ受け皿会社として、完全出資子会社のアクレスを新設。今回、セプテーニHDは同社の転換社債型新株予約権付社債を引き受けたとともに、野村宗芳社長を非常勤取締役として派遣し、経営に参画するようだ。

通販ノウハウに期待


前述したが、ネット広告代理店にとって、EC事業は新たな収益源として魅力的に映るのは間違いない。常に最新のネット広告の知識を持ち、集客策は万全のほか、効果的なサイト作りなどにも長けている。セプテーニもかねてから通販への興味を募らせていたが、投入する資源の優先順位や、物販事業のノウハウ不足などから、その想いをなかなか具現化できずにいたようだ。
セプテーニにとって、今回の資金援助の話はまさに「渡りに船」だったに違いない。民事再生中とは言え、テレマートは高い通販ノウハウと、蓄積してきた顧客リストという武器がある。これらは一朝一夕で構築できるものではない。セプテーニも「テレマートは経営破たんしたものの、事業基盤そのものが大きく毀損されたわけではないと判断した」と資金援助を決めた理由についてコメントしている。

人材、ノウハウはすでに流出?


ただし、セプテーニが期待する旧テレマートの「武器」に関して、「すでに流出しているのでは」という声が業界内外から挙がっている。真偽の程は不明だが、民事再生に至る過程で、通販のノウハウを持った従業員が独立および競合他社に移籍。また、資金繰りに困った旧テレマートが顧客リストの一部を債権の代わりとして、取引先などに流出させたのでは、などだ。
これについて、アクレスの関係者は反論。「確かに元社員がテレマートの手法を踏襲して同じような事業を行っている。また、競合他社に元社員も入社しているという話も把握している。ただ、当社には当然、ノウハウを持った従業員が多くいる。今回、新設したアクレスの従業員は161人で98%はテレマートの従業員だ」とした。
顧客リストの流出に関しても「民事再生法に基づき、管財人の下、事業再生を進めてきた。個人情報保護法がある中、ここがずさんであれば、民事再生の適用はなかったはずだ。倒産した会社ならあるかも知れないが、我々は事業を継続しており、顧客リストは財産なので適切な管理を行っている」と説明している。
今後、アクレスは旧テレマートから引き継いだ顧客リストを用いたアウトバンド、通販カタログなどを軸に通販事業を再開し、徐々にラジオ通販やEC事業を再開していく予定。前述した「噂」が真実なのか否かは今後の同社の業績によって証明されそう。同時にセプテーニが参戦した通販事業の浮沈を占う上でも重要な指標となりそうだ。【編集部・鹿野利幸】

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