2008.4 無料公開記事      ▲TOP PAGE


既存集客力を通販に活用、ゲームや占いのユーザーを狙え





ゲームや占いなど、携帯電話向けコンテンツで既に利用者を獲得しているサイトが、収益拡大に向けて通販に取り組み始めている。多くの通販サイトはこれまで、既存商材を消費のボリュームゾーンであるF1層(20〜34歳女性)に提案すべくファッションや化粧品・美容といった切り口で打ち出してきた。しかし、一からの集客となると、よほどのメジャーブランドや特徴的な事業モデルでない限り、早期に何万人規模の顧客を獲得するのは難しい。今やF1層向けメジャーサイトとなったゼイヴェルもこの事業モデルから出発しているように、既にいる顧客(会員)の有効活用を狙っている。


ゲームやブログ、広告配信の土壌活用――ウェブドゥジャパン


 検索エンジン開発のほか、キーワード連動広告やコンテンツ連動広告の配信サービス、コミュニティや無料ゲーム、電子コミックなどを展開するウェブドゥジャパンは1月、iモード公式としてコマース専門サイト「今コレ売れてます」を立ち上げ、モバイルコマースに本格参入した。
コマースは、品ぞろえと同時に集客と販促力が成功を左右すると分析しており、広告配信事業でのトラフィックをコマースに活かす狙いがある。具体的には、会員約65万人を保有する無料携帯電話ゲーム&SNSサイト「プチゲーフレンズ」や月間2億ページビューを超えるブログサービスなどからコマースサイトへ誘導。その相乗効果でコマースの収益化につなげる計画とする。別のモバイル広告会社の成功事例を参考に、広告配信やブログ・ゲームといった土壌を二次利用して、新たな収益源確立を狙う。
 商品の見せ方に関しては、これまで広告配信事業で得たノウハウを活用する。ユーザーがキーワード検索経由でコマースサイトへ行った実績を分析すると、「具体的な商品名は検索されにくい」「ジャンルや流行語などが検索のキーワードとなりやすい」といった傾向があるという。例えば、「靴」ではなくて「ブーティ」(昨年はやった短めブーツ)、「健康器具」ではなくて「ダイエット」といったようにだ。これらのデータを「今コレ」への集客に活用する。

目指すは総合サイト


 サイト開設時は、取り扱い可能商品数14,000点以上の中から女性向けの衣料品や化粧品・美容関連商品を1割強抽出して紹介している。
ただ、対象を女性だけに絞り込むのではなく、将来的には「ここに来れば事足りるという総合サイトを目指している」(添田高祥モバイルコマース事業部コマース1番プロジェクトマネージャー)。携帯電話は30代の主婦の利用も多いため、早ければ3月中にも食品、来期以降は家具や家電製品などの投入を計画している。

売れた商品、タイムリーに反映


 今や、多くのサイトがついで買い促進としてレコメンド機能を導入しているが、「今コレ」が展開するのは、かなりリアルタイムに他のユーザーの購入商品を反映させるというものだ。
 「今コレ」のトップページには、「週間人気ランキング」として1週間の統計から売れ筋商品を掲示する。このほか、購入する際に飛ぶマイページにおいて、過去に自分が購入した物や、今の獲得ポイント、これに加えて、今購入しようとしている商品の別の購入者が、ほかに同時に購入した物を、大きな時間差無く表示する。
 これはシステムのひも付けによるもので、嗜好が近いと思われる人の購入商品を見せることで2個目、3個目の購入を促す狙いだ。購入者には、初回の購入時に年齢や性別までの登録を必須としているため、今後は、性別や年齢別、地域別などの切り口で分析し、販促につなげる。

無料占いサイト内で通販展開――ザッパラス


携帯電話向け情報配信のザッパラスが新たな試みとして始めたのは、無料占いサイトにおける通販だ。
通販は別サイトで展開しているが、これはあくまでも、基幹事業である有料占いサイト会員へのサービスの一環としての位置付けだ。有料サイト会員に対して、別の自社通販サイトのメールマガジンを配信して誘引している。
同社は占いや待ち受け・デコメといった有料サイトの展開が主軸事業で、第3四半期末(07年4月〜08年1月)の会員数は約188万人(前期末比約37万人増)。これらからの月額315円(税込)の会費が収益源となっている。
一方、「有料」に対する壁が高いと感じる携帯電話ユーザーの獲得を目指して行っているのが無料サイトで、西洋占いの「@無料★占い」や東洋占いの「i開運★無料占い」など複数ある。
もちろん、無料サイトはそのままでは収益源がないため、そこで通販を行い、収益確保を狙う。収益源はほかに広告事業も選択肢にあるが、広告事業は「最後の手段」との位置付け。会員という既存財産を有効活用しようというわけだ。
ゲームやデコメと違って「占い」における通販は、利用者の来訪目的が「恋愛」「仕事」「金運」などと分かりやすい。このため、利用者のニーズにより近い商品の提案が有効と考えられる。

初月から月商600万円で推移


 昨年12月、無料占いサイト「@無料★占い」(会員155万人)と「i開運★無料占い」(同55万人)内に通販コーナー「幸運カムカム堂」を開設した。両サイト内に、「大好評ショッピングコーナー『幸せはココにある★』」とのリンクを設け、クリックすると、同一の「カムカム堂」につながる仕組みだ。数千円の携帯電話ストラップや、数千円から数万円もする天然石、開運グッズなどを販売する。
 無料占いサイトの来訪者は、占いが目的であるために通販ニーズは薄いと想定されるが、徐々に売り上げを伸ばしている。今年1月、2月とも売上高は約600万円、3月はこれを上回る見込みだ。
 注目すべきは、無料占いサイトの会員でなくても登録できる「カムカム堂」の通販メルマガの登録者が6,000人と増加している点だ。これは、「自らの意志で登録した人」。願いが叶うのであれば関連商品を欲しいという通販見込み客数を表しているといえる。ここに、効果的に商品を訴求できれば、高いヒット率が期待できる。

コピー変えたらアクセス倍増


 通販事業者が常に頭を悩ませているコピー。「カムカム堂」でも同様だが、コピーを変えたところクリック率が倍増した例が出始めた。
ここが通販の要になるため多くは明かさないが、例えば、「すぐ叶うかな?」を「あなたは奇跡を信じますか?」に変えたところアクセスは倍増した。期待を持たせるような表現がアクセス増につながったと分析。遠矢悠介コマース事業部リーダーは「通販目的ではない会員を購買に誘引できるコピーやキーワードの傾向が見えてきた」と手ごたえをつかんでいる様子だ。

 通販サイトでは当然のことながら、商品購入意欲のあるユーザーが必要な商品を探す。しかし、サイト側は、そのサイトを認知させることがでなければ客を待っているだけであり、新たな集客窓口の開拓が必要となる。
 既に携帯電話コンテンツに慣れている携帯電話ユーザーへのアプローチは、一般的には未だ強いと思われるコマースに対する抵抗感の緩和が期待できる。
 ゼイヴェルをはじめ、CAモバイル、「モバゲー」内の「モバデパ」のように、通販以外の分野から参入し通販を大きな柱とする事例が今後も増加しそうだ。【編集部・峯木多恵子】




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