2008.4 無料公開記事      ▲TOP PAGE


進むは誰も歩んだことのない獣道

白岩裕之&木章雄 日テレ7常務取締役&事業本部長




膨大な視聴者を持つキー局と日本最大の店舗網を持つ流通大手が組み、誕生した「日テレ7」。かの楽天の三木谷社長も未だ為しえていないテレビとネット、店舗の3つのチャネルを融合させ、物販ビジネスを展開していく意向だ。盛んに可能性として話題にはあがるが、成功したものは誰もいない「ネットとリアルの融合」という前人未到の獣道を同社はゆっくりと、しかし確実に進み始めた。(聞き手は本誌・鹿野利幸)


テレビ通販は紹介したモノしか販売できないが、ネットは周辺商品も売れる


我々は物販に誘う案内人


――昨年12月に日本テレビと7&iグループ、電通などでグループの物販支援事業などを行う「日テレ7」を立ち上げました。そもそも何をするための会社なのでしょうか。


白岩常務(以下、白岩) 我々の大きなミッションとしてはまず、情報コマース番組を作り、その視聴者を同じく作成するポータルサイトに誘導、そこからイトーヨーカドーや7&Y、日テレの通販サイト、またヨーカドーやセブンイレブンの店頭に誘導するグループの物販支援事業です。我々の収益源の1つもそこからの紹介料となります。

――現状、日テレは独自に通販事業を行っています。物販での放送外収入という点で棲み分けは。


白岩 分かりやすく言えば通販は小売り、我々はそこに至る案内人です。我々のサイトを通じて、日本テレビの通販にお客様をいか誘導できるか。同じようにセブンイレブンやイトーヨーカドー、7&Yにいかにお客様を送り込めるかが我々のミッションとなる。誘導したお客様がたくさん、それぞれにサイトで商品を購入していただければ、彼らの売り上げが上がると同時に、我々にも手数料が入ってくる仕組みです。

――日テレ全体の収益を考えた場合、通販の売り上げよりも将来的にもっと高い収益が望める「日テレ7」が必要だったということでしょうか。


木本部長(以下、木) そうです。日テレから見た「日テレ7」の立ち上げの狙いを申し上げると、新たな放送外収入の獲得ということになります。もちろん、現状のテレビ通販事業も好調に推移していますが、我々が目指しているのは、現状の通販モデルだけではないということです。ただ、売り上げ自体は株主各社に配分するので、どちらがいいかは分からないが、通販事業単体よりもビジネス的には大きくなる可能性があるのは確かです。

ライフスタイルを売る


――通販番組を作って、サイトに誘導するという形は従来の日テレのテレビ通販とどう違うのでしょうか。


木 要するに今までの通販番組では当たり前ですが、2つの商品を紹介したら、当然、2品目しか販売できません。しかし、番組ではその商品以外にも様々な情報を発信していますよね。
例えば、番組であるタレントさんが、「某ミュージシャンの曲が大好きなんです」と言った場合、そのミュージシャンのCDが非常に売れる場合が多々ありますよね。我々はテレビというメディアの力を使って、それをビジネス化したいと考えているわけです。
テレビショッピングでは紹介した商品には販売できない。しかし、視聴者をネットに誘導することで、さっき言ったような周辺の商品を販売することが可能になります。そのタレントさんが好きなアーティストのCDはもちろん、例えば、その楽曲と同じ時期にヒットしたCDも売れるかも知れませんよね。

――具体的にはどういう形になりますか。


木 すでに今年1月から週3回、15分で「日テレ7」の情報コマース番組、というよりもトーク番組を放送しています。その中ではタレントさんに自分のライフスタイルを語ってもらっています。「自分の人生を変えた一冊の本」とか、「自分が芸能界入りするきっかけとなった映画」だとかを語って貰うわけです。そうしたものを「続きはネットで」として、我々のポータルでそうしたCDやDVDを紹介し、商材によって、それぞれのECサイトに視聴者を誘導しています。

白岩 現在、番組から誘導しているサイトは言わば、パイロット版で、より番組から誘導されてきた視聴者に周辺商品の購入を促す形の正式なポータルサイトを4月上旬をメドに急ピッチで制作しています。新ポータルでは「タレント」「番組」「商品」という切り口を考えています。
「タレント」の場合はタレントひとりひとりの情報を網羅したページを作成しようと思っています。顔写真があり、プロフィール、出演作品、そのタレントの出演した映画や番組のDVDやCDなど紹介ですね。「番組」の場合は、ドラマやバラエティ番組の紹介ですね、概要や出演しているタレントさんの紹介、原作の小説や漫画の紹介などが一覧で見られるようになっています。そうした情報の中には必ず、"物販"があるわけでそうしたものを紹介できるような形が取れればいいなと考えています。

――それは現状の日テレのテレビ通販ではできないのでしょうか。


木 そういう商材の開発や調達をすることが難しいという側面がありました。今回、手を組んだ7&iグループの場合、7&Yでは本やCD・DVD、ヨーカドーはPB商品などたくさんの商品を持っています。
また、大きいのは多くのメーカーと取り引きがあるということです。やはり、我々は小売業ではなく、テレビ局ですから、これまで商品作りという面ではメーカーさんとのパイプはあまりなく、限られた範囲の商品しか作ることができなかったわけです。しかし、これからは今まで組めなかったような様々なメーカーと独自商品を作成することが可能になります。そうしたものをテレビやネットに限らず、ヨーカドーやセブンイレブンの店頭なんかでも販売していくと。

通販と店販の「差」は信じられないスピードで埋まりつつある


テレビと店舗では売れるものが違う


――通販と店販では売れるものなどが違ってくるはずで、難しい部分もありそうですが。


白岩 実験的に会社設立の前ですが昨年11月11日に、3チャネルでの販売を前提としたトライアル特番を85分の生放送で行いました。

木 番組の内容としては、全国から探してきた商品を紹介して、テレビでも、ネットでも、イトーヨーカドーの店舗でも購入できます。また、モノによってはセブンイレブンの店頭でも受け取りができるという案内をしました。
おっしゃる通り、通販と店販の違いから、課題はありました。両者の一番の違いは値付けです。テレビ通販の場合は、最低単価は5000円以上。なぜなら、コールセンターの費用を考えると、赤字になってしまうためです。しかし、スーパーの場合は100円から、1万円程度の幅広い商品を取り扱っています。セブンイレブンに至っては平均単価が1000円以下です。それから、テレビで売れるものとリアル店舗で売れるものはやはり、違いがあります。その辺の違いが課題というよりも、改めて違うなと思いました。

――そのMDの差という違いは埋めがたいと思いますが、どうなのでしょうか。


木 私は十分に克服できると考えています。流通とテレビが初めて手を組んでビジネスを開始したわけですから、混乱するのは当然です。それはもう文化の違いですから、仕方のないことです。我々は現在、ほぼ毎日、セブンイレブンやイトーヨーカドーなどと濃密に連絡あるいは会議等を行い、販売する商材など「その差」を埋めるために話し合っていますが、信じられないスピードで進んでいます。お互いに11月11日の特番を経験して、情報や結果を共有できたことがもの凄くプラスになっていますね。

――ただ、テレビでもECでも、店舗でも売れる商品というのは難しそうですね。


木 もちろん、3チャネル同時に売れるモノが一番の理想ですが、この商品に関してはリアル店舗、これはWEB、これはテレビ通販が主体という商品によって戦略を練っても問題ないと思っています。むしろ、そうすることの方が良いと思っています。

――当初、4月から本格的に事業を開始するという発表でした。4月以降の展開について教えてください。


白岩 現在、実施している深夜枠での番組は4月以降も続きます。これに加えて4月からは毎週金曜日の夕方4時から30分のレギュラー番組「女神の市場(マルシェ)」を開始します。今度の主戦場はこちらになります。後は年何回か、特番ができればと思います。

――新番組では先ほどのような両者で合意した3チャネルで売れる商品は出てきますか。


木 独自開発商品も4月中に雑貨や食品、あとはタレントとのコラボ商品など、いくつか販売する予定です。それから、セブンイレブン、イトーヨーカドー、7&Yとはもちろん、グループの中の「ロフト」や「赤ちゃん本舗」などと商品開発面ですでに接触を始めています。また、これからですが西武百貨店やそごうなどもグループですから、積極的に商品開発を一緒に進めていこうという話はしています。

――モバイルは。


白岩 当然考えています。テレビは2011年にデジタルに切り替わり、双方向のメディアとなり、様々な可能性があります。ワンセグで言えば、4月から今の地上波と違う編成も可能になります。日テレ7がそうしたワンセグでの枠を確保して、独自番組を行うことなどはそれは十分に考えられます。
木 その場合、一番先に手を挙げていきたいですね。僕らは番組、ネットに7&iグループの店舗というメディア。この3つを持っている会社で、このトライアングルを本当に使いこなせる会社になれば凄い会社になるなと思っています。これをできた会社は今までないわけです。地上波は本当に枠に限が界あるが、ワンセグだとか、BSなど新たなメディアが出てくるわけで、我々はそれを確保できる環境にある。このトライアングルを確立させるために、貪欲にすべてのチャンスを掴んでいきたいと思っています。

――初年度の売上高目標は。


木 10億円に手が届くといいなと思っています。我々が今から行っていくことは、すべて新しいことで、誰も耕したことのない獣道を歩いていくようなものです。そのため、まずはビジネスの形をきちんと作っていくことが重要だと思っています。

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