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ドコモ、グーグルと携帯分野で包括提携へ

――モバイル検索対策はどう変わるの?



NTTドコモとネット検索大手のグーグルが1月24日、モバイル検索およびネット上の地図やメール、動画配信などで包括提携を結んだと発表した。検索面では今春をメドに「iモード」のトップにグーグルの検索窓を設置、公式サイトと一般サイト、PCサイトの検索結果が同時に閲覧できるようにする。携帯電話キャリア最大手のドコモが検索を強化することで、携帯の検索利用および一般サイトへの誘導が高まり、集客などモバイル通販市場にも何らかの影響を与えそうだ。

公式、一般、PCサイトを一覧表示

現状、「iモード」の検索は公式サイトと一般サイトに分けて、検索結果を表示している。これが今春からiメニューのトップにグーグルの検索窓を設置。検索結果は「公式サイト」→「一般サイト」→「PC向けサイト」の順に一覧表示される。また、グーグルの検索連動型広告を検索結果の上部や下部など4カ所に表示する。これをドコモとグーグルと代理店などでシェアする形で「早い段階で広告売上高を百億円レベルまで持って行きたい」(ドコモの辻村常務)としている。
検索以外でも「グーグルマップ」(地図サービス)や「Gメール」(eメール)「ユーチューブ」(動画配信)などグーグルのサービスをiモードで利用できるように検討する。すでに「グーグルマップ」は発売中の905iシリーズ2機種にプリインストールし、組み込んでいる。そのほかのサービスも順次、iモードに対応させる。また、グーグルが昨年発表した基本ソフト(OS)の「アンドロイド」を採用した端末の開発も検討するとしている。
今回の提携でモバイル通販市場にも集客面などで大きな影響を与えそうだ。これまで検索結果を公式と一般と分けて表示していたため、「面倒でモバイル検索の利用が伸び悩んでいた」(某携帯サービス事業者幹部)との声もある。すべての検索結果が一覧表示されることで検索利便性が高まり、利用者数の増加することが予想される。今後、モバイル検索でもSEOやリスティング広告などの検索対策が必要となりそうだ。

モバイルでの検索対策とは?


ただ、PC上では常識となっている検索対策も、ことモバイルにおいては、未だきちんと対策を取れていない通販サイトは多いようだ。今後、よりモバイル通販において、重要となってくるであろう携帯の"検索対策"はどのように行えばよいのだろうか。
その前にまず把握しておかねばならないのは「検索シェア」だ。単純に考えれば、携帯電話シェアの55%を握るドコモと二番手で30%程度のシェアを持つKDDIに「検索」を採用されたグーグルがモバイル検索シェアでは圧倒的。やはり、現状のモバイル検索を考える上ではグーグル対策を意識する必要がある。
単純な対策としてはグーグルが展開する携帯版検索連動型広告に出稿することだ。すでに表示されているauのほか、春先からはドコモの検索結果にも露出されるため、これまで以上にゴーグルの携帯広告の効果は上がると見られる。一方で、対となるSEO対策はどうか。これは「検索エンジンのクローラーのアクセスの許可」「リンク数を増やす」「静的URLを使ったサイト作り」「カテゴリー登録をする」「公式サイトと一般サイトを両方持つ」「SEOの対象をWEBページだけにしない」――などが基本的なモバイル検索対策として挙げられそうだ。

検索クローラーのアクセス許可を


まず、PCでもモバイルの検索でも前提として、検索結果に自社の「社名」や「ブランド名」が表示されなくては始まらない。ただ、モバイル検索の場合、そうした前提もあまりクリアしていないサイトが現状では多いようだ。なぜなら、「検索エンジンのクローラーのアクセスを許可」していないサイトが多いからだ。携帯サイトはIPでアクセス制限をしているところが多く、これが検索エンジンのクローラーをブロックしてしまっているケースが往々にしてあるようだ。こうなると、当該モバイル検索の検索対象から外されてしまう危険性が出てくる。グーグルを初めとする検索エンジンはクローラーのIPを公開しており、まずはそうしたクローラーのアクセスを許可することが必要だ。

現時点ではリンク数を増やすことも


次に自社のモバイル通販サイトの「リンク数を増やす」ことも現状のモバイル検索対策には有効なようだ。現状のモバイル検索の精度はグーグルもヤフーもPCに比べると格段に劣る。例えば、社名やブランド名で検索をかけても、当該企業のHPが検索結果の上位に来ることはあまりなく、比較サイトや情報サイトは上位を占める。これはモバイルでの検索は技術的に未熟であるため、「リンク数」のみを非常に重視した検索結果順位となっているためだ。
今後は恐らく、PCとモバイルの検索アルゴリズムは異なっているというのが大方の専門家の見方だ。というのもPCサイトの場合、「良いサイト」にリンクを張るという行為が多く見られるために、検索順位はリンク数を重視した検索順位としているが、良いサイトにリンクを張るという行為はモバイルの場合は異なる。PCと同じ基準でも検索順位の決定はユーザーが求める「良いサイト」は表示されないためだ。
今後はともかくとしても現状においては、「リンク数の多さ」がモバイル検索対策においては、有効であるため、複数のサイトも持ち、相互リンクさせることも有効だろう。ただし、繰り返しになるが、この手の検索対策はその場しのぎ的な手法であることは認識しておく必要があるだろう。

サイトは静的に、カテゴリー登録も


また、モバイルサイトを静的URLで作るか、動的URLで作るかも、検索順位に大きな影響を及ぼすという。現状、その因果関係は不明ではあるが、複数の検索キーワードでの検索結果をみると、動的URLよりも静的URLを使ったサイトが上位に来ている。この結果から判断する限り、「モバイルサイトは静的URLを採用した方が無難だ」と専門家は指摘している。
また、即効性がある対策として、「ヤフーカテゴリーへの登録」がある。これは携帯シェアでは3位となっているソフトバンクモバイルで採用されている「ヤフーケータイ」限定の対策となるが、あるケースでは登録前には検索順位が30位だったが、登録後の初日に1位となった事例もあるという。PCでの基本的なヤフー対策でも言えることではあるが、ことモバイルのヤフー検索の対策においては、必須と言える対策であるだろう。

公式サイトと一般サイトを両方持つ


今回のドコモとグーグルの提携では検索結果が公式、一般、PCサイトが一覧で表示されると前述したが、実は公式サイトでの検索はグループのgooの技術、一般、PCサイトはグーグルの検索の検索を採用している。
つまり、公式と一般サイトでは検索エンジンが異なる。逆に考えれば、モバイル通販実施企業は公式サイトと一般サイトの両方の検索結果で自社サイトを表示させることが可能となる。
ただ、多くの場合、公式サイトには一般サイト検索のクローラーは許可しないというキャリアのルールがある。であるならば、公式サイト運営者は公式サイト以外に一般サイトを作成すれば、両方の検索結果に表示される可能性が高まり、それだけ集客のチャンスが広がる。これも今後はどうなるか分からないが、大した労力とならないのではあれば、2つの通販サイトを作っておくことも考えるべきだろう。

SEOの対象はWEBページだけではない


モバイルだけでなく、PCにおいても、検索エンジンの大きな流れは今、ユーザーが求める検索結果を最適に表示しようと、WEBページのほか、画像、動画などを一覧で表示する方向となってきている。例えば、ある女性タレントを検索した場合、ユーザーはそのタレントに関連したWEBページを見たいだけではなく、「画像」や「動画」を見たいであろうと判断して、WEBページのほかに画像や動画を検索結果に一覧表示するものだ。
こうした考え方はモバイル検索にも当然、適用されている。PCの場合は広い画面上に例えば、WEBページ、画像、動画と表示して、ユーザーはそこから好きな検索結果をクリックすればよいが、モバイルの場合は画面サイズや操作性の問題で、検索結果画面の初めに動画や画像が表示される可能性も高い。
つまり、企業がモバイルにおいて、あるサイトを検索結果を上位に上げようと検索対策を行った結果、そもそも当該キーワードにおいては「WEBページ」は上位表示されないという可能性もある。特定のキーワードにおいて検索対策を行う時、そのキーワードにおいて検索上位に来るのは「WEBページ」なのか、「動画」なのか。「画像」なのかをよくリサーチした上で、PCのようにWEBページをSEOの基本的な対象とせず、自社が持つ画像や動画など、すべてのデジタルコンテンツでのSEO対策を行い、効果的に集客する形を考える必要があるようだ。

変化していくモバイル検索


繰り返しとなるがいずれにせよ、各検索エンジンもモバイル検索における自社の検索精度の低さは認識しており、今後、検索順位の決定基準を大きく変更する可能性がある。
また、すでに「モバゲータウン」などで導入している会員の検索動向から判断し、最適な検索結果を表示する「ソーシャル検索」や検索結果を一度、カテゴリー分けしてから、カテゴリーごとに検索結果を表示される「クラスタリング検索」など、モバイルでの検索に最適な仕組みを現状模索している。
米国の事例ではキャリアが採用した検索を無視して、別の使いやすい検索エンジンを使うユーザーが全体の7割を占めるという結果もある。つまり、グーグルが大手の携帯電話キャリアに採用されたといっても、イコールでモバイル検索のシェアを抑えたわけでなないということを意味している。
モバイル通販事業者は刻々と変化するモバイル検索エンジンの仕組み、利用状況に注意を払いながら、モバイル検索対策を行っていく必要がありそうだ。【編集部・鹿野利幸】


           

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