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中国検索大手の百度、日本進出で「検索対策」はどうなる?

――高い検索精度、横断動画検索も「目新しさなし」との声!?




「中国検索サービス最大手の百度公司が1月23日、日本向け検索サービス「Baidu.jp」を開始、日本市場でのWEB検索サービスに本格参入した。高い検索精度、画像、動画などのエンタメ系検索で国内のWEB検索市場を切り崩したい考えだ。 中国国内では音楽ファイル検索「mp3検索」を始め、様々な検索サービスを展開する百度。WEB検索の多様性という意味では百度の優れた検索サービスの開始に期待したいところだ。ただ、現状では中国で人気の高い先の「mp3検索」は日本では実施していない。また、日本市場に合わせて、設置した「ブログ検索」にしても、"売り"である検索精度や検索速度にしても、既存の検索サービスと大差がないと見る専門家が多い。 ユーザーに利用されない検索エンジンEC事業者にとって検索対策を行う意味はない。果たして「Baidu.jp」は日本市場において、ユーザーから支持を受け、EC事業者にとっても検索対策が必須となる検索サービスとなれるのだろうか。


まずは利用率向上に注力

日本法人の百度が開始したのは「WEB検索」「画像検索」「動画検索」「ブログ検索」の4つ。同社のビジネス基盤となっている検索連動型広告は開始時点では行わず、「まずはユーザーの利便性と利用率向上に注力」(日本法人百度の枡田淳取締役)としており、一定の認知度とシェアが獲得できると推定する2010年頃をメドに広告事業を開始するようだ。また、中国で高い人気の音楽ファイル検索「MP3検索」は国内の法制度の問題から、日本での開始はスタート時点では見合わせた。

日本語の検索精度が"売り"

正式な事業開始に伴い、都内で開催された記者会見の席上、百度が強調したのは「検索の精度」と「エンタメ系検索」だ。百度のWEB検索は中国で培ったダブルバイト(1文字を2バイトで表現する漢字などの言語)に対応したシステムで、同じ漢字圏である日本語に関しても先行するグーグルやヤフーに比べ、精度の高い検索サービスを提供できるとした。その上で、自社で調査したユーザーへのアンケート結果を示しつつ、「検索精度の高ければ、(現在、検索シェアの大半を握るヤフーとグーグルから)乗り換えるユーザーが多い」と説明した。
画像検索や動画検索は画像、動画をWEB上から横断的に検索できるもので、「今後はこうした(エンタメ系の)検索を1歩も2歩も進めて、調べるだけでなく、遊んでもらう検索サービスを提供したい」(枡田氏)としている。
今後の展開について、今年は検索精度強化、来年は利用率向上、再来年から本格的に検索広告などを始め、収益確保を強化。また、検索精度向上や検索可能な動画などを増やすことで、ヤフーやグーグルとの併用利用「セカンドサーチエンジン」の地位を確立し、シェアを伸ばしたいとした。

中国では凄いが日本では!?


「検索」はネット販売の集客面において重要な要素であり、百度の思惑通り、一定のシェアを獲得できるとすれば、EC実施企業はグーグル、ヤフーと同様、「百度検索対策」をする必要が出てくる。では今回の百度の日本進出はネット業界にはどのようなインパクトを持って、迎えられたのだろうか。
EC企業を含む数多くの広告主を持つ大手ネット広告代理店の担当者は「日本版百度」の評価についてこう話す。「確かに中国国内では凄いですよ。日系企業もこぞって、『百度対策』を開始しています。ただ、日本ではどうなんでしょう…。とりあえず、広告主からの問合せは皆無です」――。
こうした声は複数のネット広告代理店や業界筋から、聞かれる声だ。つまり、少なくともスタート時点の百度のサービスでは、ヤフーやグーグルが提供する現状の検索サービスから、ユーザーを乗り換えさせ得るインパクトに欠けるのではという判断だろう。
確かに検索の速度は先行2社に比べて早い。ただ、それはコンマ数秒の違いであり、利用するユーザーからすれば、その違いを実感し得るものではなさそうだ。また、検索精度も現時点では目に見えて、他社サービスと異なるわけではない。自信を見せる「エンタメ系検索」にしても「mp3検索」など人気の高いサービスはなく、動画や画像の検索だけでは、ユーザーは合えて百度を利用したいと思うだろうか。「現時点では特段目新しいものはない。いきなり、シェアが変わるとは考えにくい」(大手ネット広告幹部)とする見方も多い。

現時点では「対策」の必要はないが…


こうした反応から素直に考えれば、少なくとも現時点ではEC実施企業が百度に対して、緊急に検索対策を施す必要はなさそうだ。ただ、今後の百度の動きは慎重に見ていく必要はありそうだ。冒頭で述べた通り、百度は中国においては、「mp3検索」を含む幅広いサービスを展開中だ。
中国の百度を少し除いてみるだけでも、例えば、携帯電話の着メロや待ち受け画面のコンテンツだけに絞った検索や、大学や法律の文言、中国政府関連サイトなどに検索対象を絞った検索など。他にも小説や詩、都市名を入力すると天気予報や鉄道の時刻表、株価などを表示する検索などがある。検索サービス以外にもセキュリティソフト等のオンライン販売などを行っており、非常に多彩で興味深いサービスを百度は中国国内で展開しているようだ。
こうしたサービスがどのタイミングで日本でも実施していくのか。また、法的な問題から開始しないのかは、現状は定かでない。ただ、これらのサービスが開始されれば、状況は変わってくるかも知れない。
「中国でも7〜8年かけて、検索シェアトップを獲得した。日本でもそのくらいの期間をかけて、(トップシェア)を獲得できればいい」――。会見の席上、百度のロビン・リー総裁は日本市場における事業計画についての問いに自信を持ってこう答えた。中国最大かつ世界第3位の検索企業は日本においても思惑通り、「ユーザーの乗り換え」を促し、成功を収めることができるのか。今後に注目していきたい。【編集部・鹿野利幸】



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