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好きなことをやれる舞台を創ってきた 当たり前が実を結んだだけ ――上場を意識し始めたのはいつごろですか。 3年前から。それまでの自社販売サイトがちょうど「ゾゾタウン」になったとき(2004年12月)から考え出しました。それまでは自分たちが仕入れて販売するサイトで小売り業としてコツコツやってきたけれども、「ゾゾタウン」になったのを機に「みんなの集合体」になりました。そこから自分の意識が、「これまで自分でやってきた」のから「みんなで街を創っていく」と大きく切り替わったんです。 みんなの街にしていきたと思い、それならば上場、ということで株主の中に招き入れるのもいいのではというのがきっかけです。「ゾゾタウン」へのユナイテッドアローズさんなど有名ブランドの参加も大きかったです。 ――上場達成によって、経営意識で変わった点はありますか。 あまりないですけど、リアルになったというか、株価がつきますしね。上場したからといって、別に会社として何か大きく変えなければいけないということはありませんよ。これまで当たり前のことをやっていたら、たまたま実を結んだ。上場という盾≠いただいたというだけなんです。上場の前後で株主が増えたというだけで社内的には一切変わっていないです。 ――運営におけるポリシーは? 正直にまじめにやること。社員にも嘘をつかない、取引先にも、株主にも。とにかく一生懸命やる、それだけです。上場すると適時開示といって重要事項を開示していく義務がありますが、それは以前からやっていたこと。アパレル会社など対外的にも伝えてきたので、それが実を結んできただけです。 ――売り上げの成長要因をどう分析していますか。 人。好きなことを好きなようにやれるような舞台を私は経営者として用意してきました。みんなは好きなことを自由に出来る環境を与えられて、創意工夫して頑張ってきた。それらが集まったのが「ゾゾ」だったりするので、人が会社の成長ドライバーです。 ――「人」を選ぶポイントは? 「企業理念『世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。』に共感できるか」。あとは「いい人かどうか」ということ。 ――社長がいつも言う「いい人」をもっと具体的に表現すると? 3つの定義付けがあります。@「想像力と創造力の豊かな人」A「ギブアンドテイクのバランスが取れた人」B「自分だけいい人になるのではなく周りにもいい人を生み出すことのできる人」。この3つがあって、企業理念にも共感できる人はウエルカムです。 ――新卒者から、企業理念に共感してくれている人をどう見抜くのでしょうか。 口で表現するのは難しいけれど、見ていれば分かります。今、私は直接採用に係わっているわけではないですけれど、人事担当も「見ていれば分かる」「顔見れば分かる」と言っています。選ばれている人は本当にいいヤツ。最終面接で私と会ってもいいねと思う人ばかりです。 ECに依存しない多角化も目指す ――いくら人がよくても、商品が売れないと売り上げを獲得できません。これまで他社が未開拓のブランドを扱うなど手を広げてきたわけですが、まだまだ開拓の余地はあると思いますか。 まだまだというのがどの程度を指しているのか分かりませんが、当社としては、アパレル業界におけるEC化率を現在は3%ほどだと見ていて、それは中期的に自然と10%くらいまで上がっていくと考えています。ウェブで買う消費動向が100回買ううち、今の3回が10回に、つまり10回に1回になる気がしています。 ――その根拠は? 外部データなどもありますが、取引先でウェブ販売率が10%を超えているところもあります。そういう状況を見ていると10%は強(あなが)ち高い目標値ではないと思っています。 ――ECは利益が取りにくいといいますが今後、EC中心の小売り業か、広告収入メーンのメディアなどどのような方向を目指していきますか。 両方ですね。ECも伸ばしていくし、ECに依存しない事業の多角化も考えていきます。 ――その1つが昨春に開始した広告事業だと思いますが、今期の広告売上高の全体の占有率はどの程度ですか。 それは言えないです。まだまだ様子見の状況ですが、将来的には、収益源になっていくと思います。EC以外の事業でいうと「ゾゾカード」という提携カードです。 ――当面、ECでどう伸ばしていく。 ECの戦略としては、ブランド数・ショップ数はほとんど増やさない方針です。それでも売り上げを伸ばしていくには、お客さま数の増加、購入頻度の向上――の2つが重要。「ゾゾリゾート」という、ある一定のセグメント内におけるイメージの確立のために、これに合うブランドさんしか扱わないということです。ブランドの入れ替えはあるかもしれませんが、全体数としては大きく増やしません。今、92ショップ、680ブランドの取り扱いがありますが、恐らく100ショップ、700ブランドくらいが最大だと考えていただいて結構です。08年中にはいく(到達する)でしょうね。その分、1社1社のメーカーさんと深くお取引させていただくという考えです。 ――品ぞろえ拡大やアフターフォローをきめ細やかにするなど、より買ってもらえるようなサービスが必要になる。 それは細かい話になってしまうので、大枠で言うとユーザーへのサービスを細かく改善したり広告宣伝に積極的に投資するとか、当たり前のことを当たり前にやっていくだけですね。 ――1人の顧客が物をドンドン買うようになるとも考えにくいですが。 でも1人当たりの購入単価は年々増えているんですよ。会員数は昨年9月末の時点で60万人超。当社ではこれらの会員をファッションが好きな母集団と捉え、このお客さまの友だちが将来お客さまに成りえるだろうと思ってマーケティング活動をしています。 ――実際、その友達紹介の効果は? だれがだれを紹介して……というのは分からないですが、当社のSNSを使えば分かります。来期はバイラルマーケティングを強化していきます。 ――ネット販売で展開する自社販売と受託販売の2形態のうち、在庫を抱えなくていいメリットがある受託販売はネット販売売上高の約64%を占めています。こちらの形態を増やしていくなどの考えはありますか。 そこに戦略はありません。どちらの形態でやるかはアパレルメーカーさんに選んでいただきます。どちらでやっても当社は同じ水準の最終当期利益をとれる仕組みなので。自社の方が利益率は高いですが在庫リスクはあるので、一長一短ですね。 ファッションの、ネットとリアルの共存共栄目指す 「ゾゾ」を出たいと思うブランドはいないはず ――受託販売において、出店しているということは退店も有り得ます。この1、2年、自社でネット販売を手掛けるアパレル会社も出てきましたが、今後、力を付けて「ゾゾ」を退店するという会社が出てきたらどうしますか。 会社の方針なのでそれは仕方ないですね。長いお付き合いのブランドもあるので、互いにハッピーにやってきたいという勝手な思いはありますけれど。好きだから声をかけさせていただいているブランドさんしか当社には入っていないので、出て行かれたらそれはそれで悲しいですね。 一応、契約で期間の縛りはありますが、契約更新は互いの協議のうえで決めることなので、退店したいといえばそうするし、こちらがそう思えばそうしていただくでしょうし。 ――売り上げを稼いでいるブランドが退店した場合の対策はありますか。 現時点ではそのリスクファクターとして重要視していないので、今はそれを考えていないに近いです。私たちは好きで扱っているしお客さんのニーズもある。メーカーさんにとっては、出店すれば売れるし、気持ちよく扱ってもらえるし、お互いハッピーにやっているので、今すぐ出たいというブランドは出ないと思いますけれどね。これはどのショッピンングモールも同じでしょう。 ――これまでそのようなケースはあった? 契約の守秘義務でお話できません。 ――テナントによって出店期間は違う? それもお話できません。 ――有名ブランドの品ぞろえも重要ですが、「ゾゾ」限定商品などサイトの独自性をどうやって出していく? そういった「ゾゾ」限定商品も、メーカーさんからご提案いただいたりこちらからプレゼンするなどして増えています。しかし当社はそれを増やそうとは思っていないし、メーカーさんが決めること。「ゾゾ」の中でAというブランドを、Aの他店舗より目立たせようとは思っていません。店舗にあるそのブランドが買えればいいです。 ――これまで順調に拡大してきたと思いますが、課題を挙げるとしたら。 @システムインフラA物流インフラB組織体制――の3つ。@のシステムは、集まるアクセスに耐えうるシステム開発やデータベース構造を考えていかないといけません。Aの物流は、今の延べ床面積1300坪を今春に3500坪に移転して拡張し、1年後の09年3月ごろにはそれを5000坪に拡張します。システム構築は全部自社でやっていて、アパレルが分かっている人間が携わっているので、これは他社に負けないと思います。 Bの組織に関しては、当社は若い人が多く、社会人経験が無い人も多いので、教育も重要になってきます。中途採用も続けますが、昨春から開始した新卒採用を今後は重点的に行い、その年度内に必要とされる人材はきちんと計画を立てて採用していきます。 人材条件の@とAを備えている人は多いけれども、Bの周りにもいい人に関しては、養われていないことも多く意識改革が必要な場面も出てくると思います。しかしここをきちんとやらないと会社は成長しないので、重視していきます。 将来的には、ネットだけの世界で終わらせるつもりはありません。別にリアルの店舗を出すわけではないですよ。昨年1月に始めた「ゾゾナビ」もその1つで、実店舗3000店とリレーションをとっているように、ファッションにおいてネットとリアルの共存共栄を追求していきたいと思っています。
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