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各携帯キャリア「2008年秋冬モデル」出揃う
――落ち込む端末販売を挽回できるか?






10月下旬から11月上旬にかけて、例年通りに、携帯キャリア各社の2008年秋冬モデルの発表が相次いだ。10月27日にau(KDDI)が7メーカー7機種を発表したのを皮切りに、30日にはソフトバンクが10メーカー13機種を、11月5日にはNTTドコモが8メーカー22機種を発表。主要3キャリアは、この新ラインナップを中心に、11月上旬から3月までのボーナス商戦と就職・新入学シーズンを戦うことになる。携帯電話の端末販売が前年比2割減など大幅な落ち込みを見せる中、これらのニューモデルが売れ行き挽回の起爆剤になるか注目される。新端末の売れ行きや普及度合いはモバイル通販の成長や方向性にも大きく影響する。モバイル通販実施企業各社もその動向を注視する必要がありそうだ。

4シリーズ22機種で攻勢をかけるドコモ


 22機種を発表したNTTドコモは2008年秋冬モデルから自社ラインナップの型番を一新した。これは2004年の「FOMA 900iシリーズ」以来約5年ぶりの改変となる。従来の型番構成が、「ハイエンドモデルの90Xi」「普及モデルの70Xi」「企画モデルの80Xi」だったのに対して、型番をハイエンドやローエンドで区分けせず、「(メーカー名)+(通し番号)+(発売年次)」という呼称に統一した。
同時に利用者のライフスタイル・嗜好に応じて、新たに4つの大きく異なるシリーズ「STYLE」「PRIME」「SMART」「PRO」を発表、薄さ9.8mmのワンセグ搭載モデルからQWERTYフルキーボード搭載のスマートフォンまで、幅広いラインナップとなる。従来シリーズと比較すれば、従来の70Xiシリーズや薄型端末の「μ(ミュー)」のコンセプトを踏襲するのが「STYLE」や「SMART」で、ハイエンドモデル90Xiのコンセプトは「PRIME」シリーズに持ち越される。「PRO」はドコモにとっては新しいコンセプトとなり、スマートフォンやQWERTYキーボード搭載モデルなど、特にPC利用者にとっての利便性を考慮したシリーズだ。
機能面での進化としては、前回の906i/706iシリーズまでは1〜2機種に留まっていたタッチパネル対応機種の大幅な増加が挙げられる。ハイエンドのPRIMEシリーズを中心に、スマートフォンではない通常の携帯電話でも7機種中5機種がタッチパネル対応となった。それとは対照的にSTYLEシリーズや薄型のSMARTシリーズではタッチパネルの採用はなく、シリーズごとの差異が明確になっている。さらに、今年以降Bluetooth搭載を進めるauに対抗してか、今まで消極的だったBluetooth搭載機種も22機種中12種にまで増えている。

"何かできるケータイ"から"何かしてくれるケータイ"へ


サービス面では、プッシュ型の情報配信サービス「iコンシェル」(月額210円)と、待受画面にアプリケーション機能を貼り付けることができる「iウィジェット」が目新しい。
iコンシェルは従来のサービス「iチャネル」をより機能強化し、個人の行動履歴を参照して、最適な情報を自動的に待受画面に配信する。利用者の生活エリアに合わせた生活情報、モバイルクーポンの配信、スケジューラ機能などを、キャラクターによるセリフという形で適時発信する。
新機種のプレゼンテーションを行った同社執行役員プロダクト部長の永田清人氏は「行動支援」というキーワードを強調。これからは"何かできるケータイ"から"何かしてくれるケータイ"へと変わるとアピール。これは同時に、iPhoneなど海外製スマートフォンとの差異を意識したサービスと言えそうだ。
iウィジェットは、待受画面に任意のミニアプリケーションを貼り付けることができる機能だ。開発環境は従来のiアプリの延長線上にある開発環境で可能で、従来のiアプリ同様に位置情報を含めたフルスペックが利用できる「公式iウィジェット」だけでなく、任意に開発・配布が可能な「勝手iウィジェット」も用意される。
端末の価格帯については、従来通りの4万〜5万円台(バリューコース選択時)となり、依然として実売価格ベースでは3キャリア中もっとも割高なラインナップとなる。
また「端末販売が落ち込み、景気の先行き不安がある中でラインナップを減らすことも検討すると以前にアナウンスしていたが、今回の発表には反映できなかったのか?」という趣旨の記者質問に対しては、「当社にはまだFOMAに移行していないmova利用者も多いため、積極的に売り込んでいく(代表取締役社長 山田隆持氏)」と回答するに留まり、現時点では値引きなどの販売支援は特に行わない考えを示した。

7機種に留まるau、メーカー独自色強いSBM


他の2社とは対照的に、7機種とモデル数が少ない発表だったauは、3.1インチワイドVGAの有機ELディスプレイ搭載(Q63H)や8.1メガピクセルの高画素カメラ採用(W63CA)など、端末の性能向上を軸に、基本的には従来の路線を踏襲。タッチパネル対応機種やスマートフォンの投入は次回以降の発表に持ち越された。
また、ソフトバンクモバイルは今期のテーマを"TOUCH"とし、ドコモと同じく、スマートフォンではない一般モデルにもタッチパネルを搭載した携帯電話を発表。韓国サムスン電子の世界戦略ブランド「OMNIA」や台湾HTC社のスマートフォン「Touch Diamond」など、他の2社に比べ、メーカー独自の戦略に任せた展開となっている。また今回、他2社と同じく「モバイルウィジェット」というウィジェット機能が発表されたが、現時点では対応機種はシャープの「931SH」のみとなり、広く対応していくかどうかは不透明だ。
同時に7月に発売されたiPhone3Gについても、追加で年内に絵文字のメール対応や、外付けのワンセグユニットなどが発表され、iPhone拡販へのてこ入れ策も発表された。
しかしながら、これら2008年秋冬モデルが昨年並みか、それ以上の売れ行きを示すかどうかは不透明だ。昨年に各社が導入した携帯電話の新しい販売方式に伴って、利用者は契約年限が2年単位に限定されるケースが増えている上に、特にドコモでは契約者の9割以上が選択している「バリューコース」では端末価格が高額になるため、割高な最新機種への買い替えを控える可能性もあるからだ。
いずれにせよ、各キャリアの新端末の販売が成功を収めるか否かは、あと数ヵ月後には結果が出ていることだろう。




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