2008.11 無料公開記事      ▲TOP PAGE


モバイル視聴率共有化へ向け、2団体が発足
――集客への影響は?







約3カ月前の8月4日、インターネット事業者や広告主、システム事業者、さらには大学教授や一般の消費者などをメンバーとする任意団体「モバイル文化研究会」(代表=モバイル・インターネットキャピタル西岡郁夫社長)が発足した。設立趣旨は、モバイルの利用実態を明らかにするうえでの課題などを検討していくというもので、主な活動内容としては、1年の期限を設けて勉強会や報告会を定期的に開催し、各社が法的な面や技術面での現在の課題を整理。最終的には検討結果を総務省や携帯電話事業者に提出するという。モバイルにおけるページビュー(PV)や利用時間、流出経路などといった情報の共有化を実現する仕組みの導入を積極的に促していく方針のようだ。
また、10月14日には、中間法人融合研究所(本社・東京都港区、堀部政男会長)が「オープンモバイルコンソーシアム」を設立したと発表。設立趣旨はほぼ同様で、発表文によると、「モバイルインターネット認証・課金開放」や「モバイルコンテンツ視聴率の検討・推進」に関する民間企業の意見をまとめ、現在進行中の総務省の「通信プラットフォーム研究会」へのパブリックコメント(意見募集)や、今後設立される民間主導の協議会に対する提言などを予定しているようだ。具体的な活動内容は10月末に開催される設立総会後に決定していく予定で、今後の活動内容の詳細は専用のホームページ上で公表していく考えとしている。
設立日時は若干異なるものの、ほぼ同様の活動内容を掲げる両団体。団体間には特別な関係はないが、「必要があれば随時情報交換なども行っていく」(オープンモバイルコンソーシアム事務局)という。
これまでは個人情報保護などの法的な面や技術的な問題から、モバイルではPC のようにPVや滞在時間などの数値化した情報を共有できる仕組みがなく、広告出稿の際などにおいて「モバイルだけ想定ベースで動いている状態」(モバイル文化研究会)だった。
だが、このたびの2団体の設立を先途とし、モバイルにおける情報の共有化が具現化すれば、例えば通販事業者にとっては集客力のあるモバイルサイトに広告を出稿できるなど、効率的な販促が行えるメリットがある。ひいてはモバイル広告市場の拡大も期待できる訳で、モバイル事業者はその行方を注視する必要がありそうだ。

視聴率調査導入を総務省などに提言


「モバイル文化研究会」に現在、参加しているのは、ディー・エヌ・エーやネットレイティングス、ミクシィ、トランスコスモス、ニフティなどのネット事業者や、サントリー、花王、資生堂、パナソニックなどの広告主と、大学教授や一般消費者など45人(10月19日現在)。
具体的な活動内容としては、業態別の5つのグループを構成し、グループごとに1〜2カ月に一度の頻度で勉強会を実施。それぞれの研究結果を4半期に一度開催する全体会議で報告する流れとなる。モバイルサイトのPVやユニークユーザー数、滞在時間、流出先などの情報を共有化できる仕組みの具現化に向け、法的・技術的な面での現状の課題について、「利用者や広告主の視点から」(モバイル文化研究会)検討・整理していく考えだ。
勉強会の活動期限は1年間で、2009年の8月をメドに、総務省や携帯電話事業者に対し、全5回にわたって行われた会議の最終報告結果をまとめたレポートを提出する構想を立てている。近々専用のホームページを開設し、その活動内容を随時公表していく考えという。
また、具体的な活動内容は未定としているが、「オープンモバイルコンソーシアム」でも総務省に対する提言や、オープンな環境を整備するうえでの制度の構築などを行っていく考えのよう。現在は、12月の中旬をメドに第1回目となるセミナーを開催する計画を進めており、今後はこうした動きを活発化させていくと見られる。10月末に開催される設立総会後、その辺りの概要が明らかになる見込みだ。

効率的な広告出稿が可能に?


では、首尾よく課題が解決され、モバイルにおける視聴率調査の仕組みが導入されれば、モバイル通販などのモバイルビジネスを行う事業者にはどういったメリットがあるのか。 
最大のメリットは、やはり販促活動の効率化だ。例えばテレビやPCの場合、視聴率がオープンにされているため「人が集まる場所」を広告主側も知ることができ、効率的な広告出稿を行うことができるが、モバイルではこれまでこうした指標がなかったため、「担当者は思うような予算がとれない状態」(モバイル文化研究会)だった。だが今後、モバイルサイトのPVや滞在時間、流入経路やユニークユーザー数などの実態を広告主側が数値として把握できれば、テレビやPCと同様に効率的な広告出稿が行えることになる訳だ。
07年のモバイル広告の市場規模は、前年比59.2%増の621億円。携帯電話契約数も07年12月時点で約1億52万台と1億台を突破するなど急成長を遂げており、モバイルは今後、一層の市場拡大が期待できる分野。モバイルサイトの視聴率の共有化が実現すれば、これまでPCのみに広告を出稿していた通販事業者は今後、PCより高い成長率が期待できるモバイルで、効率的な販促活動が行えることになる。通販事業者は、2団体およびモバイル業界の今後の動向を注視する必要があるだろう。【編集部・河鰭悠太郎】




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