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06年のモバイル通販市場、2,500億に

――動き出した?カタログ通販企業の携帯活用




総務省が7月24日に公表した「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査結果」によると、06年のモバイルビジネス市場規模は9285億円と前回調査に比べ、30%増近い伸びだったようだ。この伸び率をけん引したのがモバイル通販。モバイルビジネス市場規模のうち、6割強を占めている。これは「物販(通販)系」の伸び(前年比68%増)がモバイル通販市場全体の拡大に貢献したようだ。
モバイルビジネス市場の内訳を見てみると、「モバイルコンテンツ」が約3600億円。「モバイルコマース」は約5600億円。モバイルコンテンツは"ゲーム"などが好調で拡大は維持しているものの、主力の"着メロ"の縮小傾向を受けた格好。一方、モバイルコマースはチケットなどの「サービス系」や、証券取引や競売など「トランザクション系」も二桁成長を維持したほか、「物販系」が2583億円と同2倍以上の伸びを見せ、モバイルビジネスの全体の市場規模拡大をけん引しているようだ。
モバイル通販の拡大の理由について、総務省の委託を受けて調査したMCFでは、その一因について「モバイル専業の通販サイトだけでなく、カタログ通販事業者のモバイル通販の本格化」を挙げている。しかし、一方ではカタログ通販事業者のモバイル活用は「所詮、受注端末の域をまだ出ていない」という見方もある。06年度のモバイル通販の主要プレイヤーの状況はどうなっていたのだろうか。



カタログ通販企業の携帯活用は「まだ受注ツール」

モバイル通販における主要プレイヤーは大きく「カタログ通販事業者」「ネット通販専業者」「モバイル通販専業者」の3つに大別される。モバイル通販のやり方は別にして、売上高規模で見ると、やはり市場を引っ張っているカタログ通販事業者の状況をまずは見てみる。
主要カタログ通販企業7社の直近決算におけるモバイル通販売上高は別表の通り。総じて増収となっているが、各社の動きを見る限り、現状ではやはり、通販カタログの受注端末としての域は出ていない。某総合通販企業によると「現状、モバイル集客の9割はカタログ」との声もある。
ネット売上高に占めるモバイル通販の占有率が30%を超える企業もあるが、それは受注端末としての利便性向上や、受注単価を抑えるためにモバイル注文を促している戦略をとっているからと見られる。
優先順位として「まずはPCネットの強化」というのが各社とも本音のところであり、モバイル単体で通販展開という段階には未だ達していない。これを持って「カタログ通販事業社がモバイル通販に本腰」というには時期尚早のように思われる。
そんな中、各社と比べ、モバイル通販売上高が突出しているのは千趣会だ。この伸びの要因は「カタログの受注端末としての役割」から、「別の通販媒体」へと確実にモバイル戦略を強化していることにある。
千趣会は昨年4月にDeNAと共同でファッションサイト「モバコレ」を新設。同サイトを通じ、高トラフィックサイト「モバゲータウン」などからの集客も強化。また、同11月にはiモード上で20代女性をターゲットとした「ランラン ランキング」も開設。弱かった10〜20代前半の女性層の取り込みを強化し、一定の成果が出つつある模様。



携帯ならではの売り方で躍進するモバイル専業

カタログ通販事業者に比べ、売上規模は低いが、モバイルという媒体の特性をフル活用して、躍進を続けるのはモバイル通販専業者だ。
モバイル通販専業者としては老舗のゼイヴェルはファッションショーや女性誌との連携や連動を進め、本誌推定ながら85億円とカタログ通販事業者のモバイル通販と遜色ないレベルまで業績を拡大させた。
シーエー・モバイルもほぼ毎日、登録者に送付するメルマガ「ixenショッピング」や、自社SNSサイトなどで新規顧客開拓や顧客の囲い込みが成功し、前年比で70%増となる34億円と急成長を見せている。
10〜20代女性向けに衣料品のモバイル通販事業を行うエスクルーは公式サイトで衣料品を中心としたコマースサイト「Nutty Collection」「ピュア★ドレス」などを展開。同時に展開する音楽系サイトでターゲット層を確保し、顧客化する戦略で年商15億円を稼ぎ出している。昨年11月にサイバードのグループ入り。今後、サイバードのモバイルコマースを支える戦略子会社として、更なる売上高拡大を図るようだ。
上位のモバイル通販専業者の強みは総じて、独自かつ強い顧客開拓手段を構築している点にある。モバイルにはモバイルの集客手法があり、こうした手法を自分たちで見つけ出し、構築してきたモバイル専業者に学び、千趣会などはDeNAと共同で衣料品のモバイル通販専業子会社「モバコレ」を開始。「『モバコレ』にあって我々にないのは、大量の人を呼び込む確実な方法や、それの維持。これが携帯の中では非常に大きいと思う。『モバコレ』を通じてこのことを肌で感じたなど、学ぶべきことはとても多かった」(千趣会・中山茂デジタルメディア部次長)としている。
 カタログ通販企業はモバイル通販専業に学び、モバイル通販専業は通販ノウハウを持つカタログ系通販企業の力で更なる高みを目指す。こうした傾向は今後、本格化していきそうでモバイル通販市場はまだまだ伸びていきそうだ。【編集部・鹿野利幸】


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主要カタログ通販事業者のモバイル通販売上高

単位:百万円、増収率・EC総売上内モバイル通販占有率:%、※:本誌推定

社名

前期実績

増収率

携帯通販占有率

千趣会

12,530

14.3

22.4

ニッセン

8,100

8.7

19.9

ムトウ

3,506

245.1

38.0

ディノス

3,210

18.8

18.0

イマージュ

2,375

14.9

33.4

セシール

2,300

1.0

13.9

ベルーナ

1,400

――

24.5

 

   主要ネット通販専業者のモバイル通販売上高

単位:百万円、増収率・EC総売上内モバイル通販占有率:%、※:本誌推定

社名

前期実績

増収率

携帯通販占有率

ネットプライス

7,032

28.2

61.6

ツタヤオンライン

7,000

――

63.6

マルイヴォイ

5,000

――

32.1

マガシーク

2,200

 ――

40.9

スタートトゥデイ

1,334

――

22.0

スタイライフ

1,317

37.6

31.4

ヴァイスロイ・インターナショナル

704

25.0

28.3

 

主要モバイル通販専業者のモバイル通販売上高

単位:百万円、増減率:%(▲はマイナス)、※:本誌推定

社名

前期実績

増収率

次期見込み

インデックス・ホールディングス

15,548

28.4

23,000

ゼイヴェル

8500

――

――

シーエー・モバイル

3,400

70.0

――

エスクルー

1,533

101.9

――

ケイブ

697

0.7

――

ザッパラス

572

――

――

イマジニア

557

88.6

――

注:インデックスHDはテレビ通販や出版事業の売上高を含む


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