2007.9 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
カタログ通販企業の携帯活用は「まだ受注ツール」 モバイル通販における主要プレイヤーは大きく「カタログ通販事業者」「ネット通販専業者」「モバイル通販専業者」の3つに大別される。モバイル通販のやり方は別にして、売上高規模で見ると、やはり市場を引っ張っているカタログ通販事業者の状況をまずは見てみる。 主要カタログ通販企業7社の直近決算におけるモバイル通販売上高は別表の通り。総じて増収となっているが、各社の動きを見る限り、現状ではやはり、通販カタログの受注端末としての域は出ていない。某総合通販企業によると「現状、モバイル集客の9割はカタログ」との声もある。 ネット売上高に占めるモバイル通販の占有率が30%を超える企業もあるが、それは受注端末としての利便性向上や、受注単価を抑えるためにモバイル注文を促している戦略をとっているからと見られる。 優先順位として「まずはPCネットの強化」というのが各社とも本音のところであり、モバイル単体で通販展開という段階には未だ達していない。これを持って「カタログ通販事業社がモバイル通販に本腰」というには時期尚早のように思われる。 そんな中、各社と比べ、モバイル通販売上高が突出しているのは千趣会だ。この伸びの要因は「カタログの受注端末としての役割」から、「別の通販媒体」へと確実にモバイル戦略を強化していることにある。 千趣会は昨年4月にDeNAと共同でファッションサイト「モバコレ」を新設。同サイトを通じ、高トラフィックサイト「モバゲータウン」などからの集客も強化。また、同11月にはiモード上で20代女性をターゲットとした「ランラン ランキング」も開設。弱かった10〜20代前半の女性層の取り込みを強化し、一定の成果が出つつある模様。 携帯ならではの売り方で躍進するモバイル専業 カタログ通販事業者に比べ、売上規模は低いが、モバイルという媒体の特性をフル活用して、躍進を続けるのはモバイル通販専業者だ。 モバイル通販専業者としては老舗のゼイヴェルはファッションショーや女性誌との連携や連動を進め、本誌推定ながら85億円とカタログ通販事業者のモバイル通販と遜色ないレベルまで業績を拡大させた。 シーエー・モバイルもほぼ毎日、登録者に送付するメルマガ「ixenショッピング」や、自社SNSサイトなどで新規顧客開拓や顧客の囲い込みが成功し、前年比で70%増となる34億円と急成長を見せている。 10〜20代女性向けに衣料品のモバイル通販事業を行うエスクルーは公式サイトで衣料品を中心としたコマースサイト「Nutty Collection」「ピュア★ドレス」などを展開。同時に展開する音楽系サイトでターゲット層を確保し、顧客化する戦略で年商15億円を稼ぎ出している。昨年11月にサイバードのグループ入り。今後、サイバードのモバイルコマースを支える戦略子会社として、更なる売上高拡大を図るようだ。 上位のモバイル通販専業者の強みは総じて、独自かつ強い顧客開拓手段を構築している点にある。モバイルにはモバイルの集客手法があり、こうした手法を自分たちで見つけ出し、構築してきたモバイル専業者に学び、千趣会などはDeNAと共同で衣料品のモバイル通販専業子会社「モバコレ」を開始。「『モバコレ』にあって我々にないのは、大量の人を呼び込む確実な方法や、それの維持。これが携帯の中では非常に大きいと思う。『モバコレ』を通じてこのことを肌で感じたなど、学ぶべきことはとても多かった」(千趣会・中山茂デジタルメディア部次長)としている。 カタログ通販企業はモバイル通販専業に学び、モバイル通販専業は通販ノウハウを持つカタログ系通販企業の力で更なる高みを目指す。こうした傾向は今後、本格化していきそうでモバイル通販市場はまだまだ伸びていきそうだ。【編集部・鹿野利幸】 主要カタログ通販事業者のモバイル通販売上高 単位:百万円、増収率・EC総売上内モバイル通販占有率:%、※:本誌推定
主要ネット通販専業者のモバイル通販売上高 単位:百万円、増収率・EC総売上内モバイル通販占有率:%、※:本誌推定
主要モバイル通販専業者のモバイル通販売上高 単位:百万円、増減率:%(▲はマイナス)、※:本誌推定
注:インデックスHDはテレビ通販や出版事業の売上高を含む
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