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国内家電メーカー5社連合、テレビでネット動画配信開始

――将来はテレビで「動画ショッピング」も?!




国内大手家電メーカー5社が出資するデジタルテレビ専用のポータルサイトを運営するテレビポータルサービス(TVPS)は9月1日から、ネット動画のテレビ向け配信サービスを開始する。まずは音楽映像を無料で配信し、11月からは映画などの有料コンテンツも取り揃える。将来的にはショッピング番組の取り扱いも検討しており、テレビを介した"新しい動画通販"が誕生する可能性も高そうだ。
「動画」に関してはグーグル傘下のユーチューブなどの動画投稿サイトが人気のほか、ヤフーやUSENなどが動画コンテンツビジネス手がけ始めている。そうした動画サイトの盛り上がり次第では今後、ショッピング動画を持つテレビ通販企業等を中心にEC活用を開始する可能性はある。
ただし、ネットでいかにユーザーを集める人気動画サイトがあったとしても、やはり最大の"動画メディア"はテレビだ。アクセス数(=視聴者)はそうした動画サイトの比ではない。家電メーカー5社は9月から開始する「動画」の閲覧が可能な仕組みを今後、生産するテレビに搭載していく計画。普及次第では立ち上げが面倒なPCよりも、身近なテレビにネットショッピングの手段が一部、流れていくかも知れない。


「テレビをネットにつなぐ」を業界一丸で

TVPSは松下電器産業、ソニー、シャープ、日立製作所、東芝の家電メーカー5社とソネットエンタテインメントが出資して設立。ブロードバンド接続機能を持つデジタルテレビの"共通テレビポータル"の規格および提供が目的だ。松下1社で提供していた「Tナビ」や同じくソネットエンタテインメントの「TVホーム」を継承するのと同時に、他の家電メーカーも参画した形で、それまで利用者が伸び悩んだ「テレビをネットにつなぐ」サービスに業界が一体となって本腰を入れているのが見て取れる。
 テレビをネット接続することで、テレビの可能性は広がる。テレビ番組の "時間割り"に関係なく、好きな時に好きな番組が視聴可能となる。こうした利点に着目し、TVPSもネットインフラを活用したテレビ向けポータル「アクトビラ」を立ち上げ、ニュース、生活情報などを常時提供してきた。そして、そのキラーコンテンツと目されるのが9月から始まる動画配信(VOD)だ。
これまでのVODはケーブルテレビ会社などが提供するもので、専用のセットトップボックス(STB)が必要だったが、「アクトビラ」ではテレビのみで利用可能だ。ただ現在、対応しているテレビは8月9日に発表された松下のビエラ4機種のみ。他のメーカーからは年末商戦に向けて発売されるという。また、規格はオープンとしており、今後は数多くのメーカーのテレビに搭載される方向だ。
家電業界では、テレビ放送が地デジに完全移行する2011年には、こうしたネット接続テレビの普及率が7割まで進むと予測。「アクトビラ」のコンテンツ如何で、テレビをネット接続して使う行為は急速に広がっていくと見られる。


中高年ユーザー取り込みに有効か?

当面、「アクトビラ」のVODは映画、ドラマ、バラエティ、アニメなどだが、将来的には、通販事業者のショッピングコンテンツなども取り扱っていくという。すでに「アクトビラ」内の静止画サービスでは、DHCやホームセンターのコメリなどが出店。コメリでは「動画配信の時期は未定だが、素材は製作し、まずは自社ECサイトで配信し、将来的にはそれを『アクトビラ』用に変換してVOD配信することを検討中」としている。
「アクトビラ」の動画配信は、ネット動画でありながら、PC利用者ではなくテレビ視聴者に番組が届く点に、最も期待が高まる。先のコメリでは、メーン顧客が中高年以上のため、通常のネット動画ポータルでは訴求力が弱い。一方、世代を問わず視聴者がいるテレビであれば、リーチしたい層と見事にマッチするわけだ。ブロードバンド接続世帯が増え、今後もデジタルテレビへの買い替えが進むことを考えれば、ネット通販の担い手はPCからテレビに流れるかも知れない。 
【編集部・小西智恵子】


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