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「iD」がネット決済も対応
――将来はワンセグ通販で本領発揮?





読み取り機にかざして「ピッ」だけで決済が完了する非接触型マネーの普及が進んでいる。「おサイフケータイ」は2007年3月時点で、契約台数が2000万件を超えた。そんな「おサイフケータイ」の立役者であるNTTドコモが次に狙っている市場がモバイル通販決済の取り込みだ。今年4月からケータイクレジット「iD」のネット決済対応を開始。実店舗で「おサイフケータイ」に馴染んだ層を今後は、モバイル通販での支払い方法としての利用へと引き込む狙いだ。

まず映画チケットサイトで導入

当初は4月から、「iD」ネット決済採用の"第1号店"が誕生する予定だったが、決済代行業者のシステム調整などの兼ね合いで、7月までずれ込んだ。初の「iD」採用ネットショップは角川シネプレックスのモバイルサイト。映画館のチケット予約の決済が「iD」で行える。モバイルのチケット予約サイトは、例えばデートの約束をケータイで話し、カップル席などの座席を早く、確実に確保したい人にとって、わざわざパソコンを起動しなくてよい点に需要があるという。
モバイル決済手段として「iD」を採用する通販専業社としてはシーエーモバイルやゼイヴェル、兼業ではヨドバシカメラやビックカメラ、上新電機、タワーレコードが確定しているという。また、先に楽天球場の飲食店や売店の店頭決済で「iD」を導入した楽天は、「楽天市場」「楽天オークション」への採用を検討中という。NTTドコモは今秋までに、最低10社への導入を予定している。
ただ、先払いや後払いという違いはあるものの、「エディ」や「スイカ」などいわゆる「電子マネー」は多く、「iD」がネット決済に対応したからと言って、利用する消費者および通販事業者にとってどれだけメリットがあるかどうかは不明な部分もある。要は先行する「電子マネー」にはない強みがあるかということだ。
これについてドコモではネット決済としての「iD」のメリットは、クレジット決済であっても@クレジット番号16桁と有効期限の入力の手間が省けるA「なりすまし」が(ケータイを盗まれない限り)不可能である――2点を挙げる。「iD」は携帯電話機の中にある非接触ICチップにクレジットカード番号を登録させる。これにより、個々の決済時には番号の入力が必要なく、「安心・安全」な買物を実現するという説明だ。
ただ、それは既存のクレジットカード決済と比べた利点であり。他の「電子マネー」との差別化にはならない。これについては「高額商品」の決済ニーズを挙げている。確かに普及が進む「電子マネー」はチャージの上限が限られている。そのため、低価格商品の決済には利用が増えている反面、万単位の商品購入時にはあまり使われていないのが現実のようだ。
カード決済と電子マネーの利点を併せ持った「iD」を携帯電話キャリアとして最も高いシェアを誇るドコモが普及を推し進めていけば、ネット決済手段としてみた「iD」もその普及が期待できるかも知れない。
とは言え、現状の「iD」利用者数294万人(2007年5月末)のうち、8割は月の限度額が1万円の簡易版「DCMX mini」で占める。ただ、これは「iD」の利便性を迅速に広めたいというドコモの戦略的な意向もある。まずは手軽な「DCMX mini」を試してもらい、「今後、非接触型マネーが駅やコンビニ、タクシーなど利用シーンが広がり、利便性を体感すれば、月の限度額が1万円では"すまなくなる"」(守屋学iD戦略担当部長)と試算する。その結果、上位の「DCMX」に鞍替えする利用者が拡大するとの読みだ。

ライバルは現金やコンビニ振替

では、実際問題として「iD」が決済手法として広がる可能性はあるのか。「iD」がネット決済としても普及するためには、他の「電子マネー」や「クレジットカード」のほかにも戦わねばならない相手がいる。NTTドコモが「iD」事業を立ち上げたときのライバルは「現金払い」だった。それがネット決済まで領域が広がったことで、「コンビニ振替」や「代引き」もライバルとなってくるからだ。
「コンビニ振り替え」については、コンビニ用の振替用紙にQRコードを印字し、「iD」によるモバイル決済画面へ誘導するサービスの実現を目指す。購入時には「コンビニ振替」を選択したものの、商品到着時に、天候や諸事情で気が変わり、自宅に居ながら決済できる「iD」に決済を変更する需要は高いのでは、とドコモは説明する。

「店舗→iモードサイト」に手応え

また、店舗連動型のEC決済にも可能性を感じているようだ。おサイフケータイが有店舗から始まったため、採用の有店舗が運営するiモードサイトやECサイトへの誘導では既に成功事例がある。具体的には「トルカ」(クーポン券や店舗案内といった紙媒体で配布されている情報を携帯電話内に取り込む機能)を用いたサービスで、タワーレコード渋谷店で好評を博しているという。そのため、タワーレコードでは、全国の店舗への導入意欲が高まっているという。

ワンセグ通販に期待

また、ケータイはテレビとの相性が高いとされている。テレビ通販を視聴しながら購買意欲が高まった時、クレジットカードの番号入力などで気持ちを萎えさせないまま決済できる「iD」は強力な武器となると見ている。今後はワンセグによるテレビ通販や、非接触型電子マネーのうち、プリペイド式(前払い)が取りこぼしている高額決済需要などを焦点に導入サイトを増やしたい構えだ。
【編集部・小西智恵子】

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