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家電量販店最大手の化粧品通販参入、その狙いと課題は

――ヤマダ電機




6月23日、ヤマダ電機の巨艦店舗、大阪・難波「LABI1なんば」のイベントスペースでは、約40人の報道陣を集め、化粧品通販参入に関する発表会が開催された。ヤマダがこうした発表会を、しかも店舗で行うのは極めて珍しいこと。新規参入への意気込みの表れなのか。
ヤマダの07年3月期の売上高は1兆4436億円で、家電量販店では2位以下を圧倒。日本の流通業でも、イオン・セブン&アイHDに次ぐ3位だ。巨大な販売力を誇る企業の化粧品参入だけに、注目が集まる。

ポイントビジネスに組み込む

ヤマダは、4月に設立した子会社プインプルを通じ、化粧品を製造販売する。第一弾として、オリジナルブランド「いな穂のしずく」を立ち上げ、4製品をラインアップした。まずはテレビ、ネットを中心に通販。いずれは店舗でも展開していく計画だ。家電量販店はどの会社でも取り扱う商品はほぼ同じ。量販店自身が製品を、それもまったくの畑違いである化粧品を製造するのは、極めて異例だ。
ヤマダにとって、化粧品参入のメリットは何か。まずは、理容・美容家電とのシナジーだ。一宮浩二副社長は、「利益の上がらないパソコンでも、法人販売やサポート業などの"ソフト"で差別化してきた。新事業もこうした考えの延長線上にある」と参入動機を説明。美顔器や高級ドライヤーは、最近大きく伸びている注目商品だ。「化粧品を『ついで』に売るだけでも大きな売り上げが見込めるはず」(プインプル・久保英雄社長)。
もう一つは、ポイントの利用先としての役割。利益の薄い家電製品は、ポイントをそのまま次の商品購入に充てられると苦しい。利益率の高い化粧品は、ポイントの使い道としては最適だ。また、ヤマダが年に4回発行する通販カタログ「ポイントカタログ」にも化粧品を掲載する。肉や野菜といった食料品から雑貨まで、300点以上のアイテムを扱っている重要な「ポイント消費先」。化粧品を「ポイントビジネス」に組み込むことで、利益率向上につなげる狙いがある。
同社では、02年にディスカウントストアのダイクマを買収、家電製品以外の商品の販売には馴染みがある。とはいえ、自ら認めるように「"化粧品"というイメージはない」(一宮副社長)のは確か。家電業界は規模の大きさがそのまま売る力につながるが、化粧品のターゲットは従来の顧客層とは異なる。このギャップをどう埋めていくのか。

「本商品は売らなくてもいい」

プインプルの久保社長は「ヤマダ電機グループとしての『安心感』が最大の強み。信頼される商品を作るのが早道」と話す。まずは9月末までに、イベントや店頭などで無料サンプルを配布。テレビとネットでは2980円のトライアルセットを販売する。トライアルセットは1万円相当の内容で、赤字は覚悟の上。経費をかけて販促する以上、サンプルではなく、何としても商品を売りにいくのが常道だけに「異例の戦略」と言えるだろう。
当初はテレビを主軸に考えていたが、「考査が厳しく、特徴が訴求できない」(久保社長)ことから、ネット中心に転換。マーケティングを行いながら、3〜5万人の新規顧客獲得を目指す。
「当分は商品を拡販するつもりはない」(久保社長)とはいえ、店舗展開が規定路線である以上、早急に「結果」を残す必要がある。サンプル配布でどれだけ顧客の認知度が高められるか。「3カ月後をメドに店舗展開」(一宮副社長)というヤマダ側に対し、久保社長は「1年は欲しい。顧客ニーズを汲み取り、売り上げ計画が立てられる段階まで行かなければ(店舗展開は)難しい」と、やや意識のズレも見られる。
ヤマダは売上高3兆円を公約として掲げている。郊外型店舗を得意としてきたが、今後は都市型店舗「LABI」を年に2、3店のペースで出店。今年7月13日にはビックカメラの金城湯池・池袋に進出、その後も渋谷や新宿(計画中)などで、ビックカメラやヨドバシカメラと激突する。そして、今後出店する「LABI」には化粧品売り場が常設される予定だ。
化粧品は競争を勝ち抜くためのキラーコンテンツになれるか。課題も多いが、まずは通販で「ヤマダが作る化粧品」の商品力をアピールする必要がある。【編集部・川西智之】

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