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あの「乗換案内」で通販!?
モバイル通販の新たな売り場となるか





モバイルユーザーにお馴染みの「乗換案内」を運営するジョルダン(本社・東京都新宿区、佐藤俊和社長)がEC事業に乗り出した。シーエー・モバイルと提携し、主要3キャリアの「乗換案内」上にショッピングページを開設。地域限定商品や電車グッズ、さらにはスイーツ、家電までを幅広く販売する。まず第1弾として4月末にi‐modeで、続けて5月末にはEZwebでも運営を開始。今月末にはYahoo!ケータイでのスタートも予定する。モバイルにおいて膨大な数のユーザーを抱える「乗換案内」だけに、そのEC展開には通販企業からも"強力な販売の場"として注目が集まりそうだ。
 
キャリアで異なるサイト充実度

開設した「ショッピングステーション」では、シーエー・モバイルが実際のサイト運営やオペレーションを担当。3キャリアでそれぞれ扱う商品は多少異なっており、i‐mode版ではドコモ側の要望を組んで「乗換案内」らしさを強調。逆にEZweb版ではファッションにアクセ、スイーツや雑貨、家電など、「駅中の雑多な感じをイメージ」(同社営業部)し、「電車」にはこだわらない品揃えを意識した。そのため商品数はi‐mode版が現在100ほどだが、EZweb版はその10倍の約1000を数える。Yahoo!ケータイ版もEZwebと同様の仕様になる予定で、今後のユーザーの増加に伴ってこうした差が売り上げに影響を及ぼす可能性は高い。
売れ筋商品は「ミルキーチーズケーキ」などのご当地グルメ≠竅A駅の売店のみで扱う地方限定ストラップ≠ネど。地方限定商品はコレクターが多く、こうしたコアなユーザーによく売れているようだ。食品類に関しては「送料無料」が多く、大量に販売することで送料の負担分をカバーしていくという。また、ランキングコーナーも常設し、「特急」「急行」「普通」と「乗換案内らしく」分類。入り口で興味を喚起させ、商品紹介ページまで誘導する考えだ。

ユーザーの誘導が最重要課題

問題はサイトへの効率的な誘導。いかにサイト内容を充実させ、「乗換案内」という集客におけるアドバンテージがあったとしても、「ショッピングステーション」に誘導できなければ意味がない。「乗換案内」トップページの月間アクセス数は現在3キャリア合計で700万近く。月間合計PV数も2.2億超と、その利用率はモバイルの公式コンテンツではトップクラスを誇る。だがそれはあくまで「乗換案内」へのアクセスであり、「ショッピングステーション」の集客に関して若干の不安が残るのは否めない。「乗換案内」ユーザーは「経路検索」という確固とした目的を持ったユーザーであり、そのユーザーがそのまま「ショッピングステーション」へ流れていく訳ではないからだ。加えて「乗換案内」ユーザーは通勤・通学途中や待ち合わせ時など、時間に余裕のない時に利用するケースが多いとのデータもある。こうした"時間に余裕のないユーザー"をショッピングページまで導くのはそう容易ではない。
こうした層を誘導するために同社が打ち出した施策が「ゲーム」。「乗換案内」トップページ上にリンクを張り、無料のゲームコンテンツへ誘導するというもの。ゲーム内容や種類は「できてからのお楽しみ」(同)ということだが、高得点やクリアなどで割引特典や目玉商品の案内などを付与する仕掛けを予定しているといい、早ければ来月にも提供していく考えだ。DeNAの「モバゲー」の成功でも分かる通り、短時間で遊べる「ちょっとした」ゲームはモバイルでの集客には効果が高い。「乗換案内」利用者であれば誰でも無料で遊ぶことができる「ゲーム」の設置は、「モバゲー」同様、高い集客効果が期待できる。
ただ、気になるのは「モバゲー」のユーザーが初めからゲームを目的にアクセスしているのに対し、「乗換案内」ユーザーはあくまで「経路検索」を目的としているということ。確固たる目的を持って訪れる「乗換案内」ユーザーを引き寄せるためには、やはり相応の魅力を持ったゲームコンテンツやインセンティブの付与などを提供していく必要があるだろう。

他のEC事業者との提携は

ところで、「乗換案内」が膨大なユーザーを抱えているのはこれまで述べてきた通りだが、そうなるとやはり気になるのは他のEC事業者との提携だ。不特定多数のユーザーを持つ「乗換案内」と提携し、その集客力を利用したいという考えは誰しも思い描くところだろう。同社では、現在はまだそこに踏み出すつもりはなく、「打診は多いが、現状では考えていない」(同)としているものの、来年のその可能性については否定していない。あくまで可能性の話ではあるが、実現するとすればおそらく「乗換案内」のカラーに近いところが有力と思われる。これまでの"便利"に新たに"楽しい"を加えた「乗換案内」。モバイルコマースにおける新たなインフラとして、注視する価値はありそうだ。
【編集部・河鰭悠太郎】
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