2007.4 無料公開記事      ▲TOP PAGE


ライブドアの仮想モール、4月からプロミス子会社へ事業売却

――「ライブドアデパート」はどうなるの?




「今後、どうなるかわからない状態なのに再契約とはどういうことだ」――。
ライブドア(LD)は3月12日、本社のある六本木ヒルズ内のセミナー会場で仮想モール「ライブドアデパート(LDD)」の出店者向けに説明会を開催した。事業の選択と集中の一環で、運営するLDDを消費者金融のプロミス子会社のカウイチに譲渡することを決定。4月1日以降、同モールの運営会社が変わることに伴い、既存の出店者に新会社との再契約、新料金プランなどを説明した。
ただ、メール一本での運営会社の変更の連絡、いきなりの料金プランの変更、そして何より、今後、新会社で行っていく具体的な事業の戦略や出店者への支援策が明かされないままの状況に、会場に集まった出店者は怒りを爆発。LDへの批判的な意見や質問が噴出し、同社の「株主総会」さながらの説明会となった。


民主的にやって欲しい

説明会の冒頭。LDの平松社長がLDDの事業売却の経緯や、出店者に事前説明がないまま、事を進めてしまったことを陳謝。次いで、LDDを管理する同社コマース事業部長の山尾上級執行役員からの説明、4月以降、LDDを運営するプロミスの子会社、カウイチの生田社長から今後の方向性の説明や、月額固定費がかからない「0プラン」を含む、5つの新料金の発表など、順調に説明会は進行していった。
短い休憩を挟み、カウイチ移管に伴う出店契約の再契約と、新料金プランを担当者が説明し終わった時に、出店者の怒りが爆発した。
「新料金プランへ移行する我々のメリットは?そもそも、(新料金プランを)作った理由は?」と突然の料金プランの変更を説明したLD側への不信感を顕わにした質問。ここから、堰を切ったように「プロミスに売却しました。まあ、これはいい。手数料が高くなっても別にかまわない。ただ、そのことをメール一本で連絡してくる姿勢はどうか」「こういうことが癖になると、また同じことをされる。民主的にやって欲しい」「金貸し会社が運営するとことでは信用できないという意見がネット上で話題になっている」「集客力がない。もっと努力して欲しい」などと続き、出店者からの質問とも意見とも批判とも言える発言が相次いだ。


具体的には言えませんが…

なぜ、出店者からこうした「怒りの質問」が相次いだのか。もちろん、LD側が出店者への説明が後手後手に回ってしまったことが一番の理由だが、さらに怒りに火をつけたのが説明会の中で多用された「具体的なところは言えませんが」というものだ。
もちろん、大まかには10月をメドとした新システムの刷新や、「ライブドアデパート」の他社へのOEM供給や、旅行、自動車等の人気カテゴリの物販を開始することによるトラフィック拡大策などは明らかとした。新料金プランにしても、固定費をなるべく取らず、出店者リスクを低減したいという説明も納得はいく。
ただ、カウイチの生田社長しかり、ライブドアの山尾部長しかり、4月以降の方向性について「現在、進めており、具体的なことは今は言えませんが…」とし、説明会で言及を避けた。出店者が本当に知りたい「このまま、出店を継続してよいのか」の判断材料となる新会社移行によるメリットやデメリット、これから運営社となるカウイチが自分たちをどう支援してくれるのかが見えないというものだ。


半年先まで待ってくれる?

もちろん、LDDの運営社がカウイチに移行することで出店者へのメリットは確かにありそう。その最大の理由は資金力だ。"ホリエモン事件"でガタガタとなったLDよりも、明らかに消費者金融大手のプロミスの方が、資金は豊富だ。しかも、グレーゾーン金利の見直しが決定した中、新たな収益源確保で仮想モール事業へと進出した訳で、いわばLDDの運営には本気であり、事業拡大のため、そうした資金投入は惜しみはしないだろう。
 そうした豊富な資金を背景に、明言している通り、本当に半年先の10月、遅くとも年内には新機軸を出してくるだろう。ただ、出店者は半年も待ってはくれない。実際問題、仮想モールは「楽天市場」を筆頭にタフー、DeNAの三強が突出している。ユーザーは豊富な商品から買いたいものを選びたいわけで、よほどの特色がない限り、どうしても仮想モールは規模の世界となる。ユーザーが集めるモールに出店者が集まるのは自然成り行きであり、この三強体制はそうは揺らぎそうにない。つまり、これまでのそうだったようにLDDがその三強に食い込むことは、相当難しいと言わざるを得ない。だからこそ、LDは事業売却に踏み切ったわけだ。
 プロミスがどのような新機軸を打ち出しても、それが成功する保障はない。出店者からしてみれば、その不安は当然で、しかも、その新機軸に対しても具体的な説明はなく、現状、判断はできない。逆に今のLDDの状況を考えれば、「特段、しがみついてまで出店をお願いするメリットもない」(LDDに出店する某社幹部)わけだ。


誠意ある説明会を

先日、一審で執行猶予なしの異例の有罪判決が下された堀江前社長の下、先を行く楽天やヤフーへの追撃の一環で、04年6月に仮想モールLDDを開始。他社よりも安価な出店プランで、一時は6000店舗までテナント数を伸ばした。先の"事件"以降、利用者、出店者の目減りは避けられず、仮想モール事業も伸び悩み、ついに仮想モールの運営から撤退を決めたLD。
今後の生き残りのために、得意分野に集中し、不採算部門を他社に売却すること自体は企業として正しいスタンスだと言える。ただ、事業売却は良いが、今後もLDDで商売をしていく出店者のために、作った責任をLDは果たすべきだ。出店者へのあいまいな説明では理解を得られず、モール運営の絶対条件である「ユーザーにとって魅力ある商品を販売する出店者」は確保できまい。今後も業務提携先としてLDDと関わっていくLD。対応如何ではLDDから出店者が出て行き、カウイチからの大切な広告収入もなくなってしまう。

【編集部・鹿野利幸】

「ライブドアデパート」の今後をカウイチ生田社長に聞く

Q:4月以降、「ライブドアデパート(LDD)」はどうなるのでしょうか?

A:LDからLDDに携わってきたスタッフもほぼ全員、当社に転籍しますし、4月以降も原則、何も変わりません。今年10月をメドに現在、いろいろなことを着々と準備してはいます。ただ、トップページ1つを換えるにしても、それ相応に時間がかかります。

Q:カウイチがLDDを運営することによる出店者のメリットとは何ですか。出店者向け説明会ではLDのポータルや子会社のセシールから誘導するなどとおっしゃっていましたが、それはこれまでも実施されてきました。何かこれまでとは異なる店舗への集客策はあるのでしょうか?

A:我々の母体であるプロミスはネット上での集客ノウハウがあります。検索広告でも金融というのは「キャッシング」とか「ローン」など非常に激戦ワードです。その中で培ったノウハウでどうすれば、ユーザーを上手くコンバージョンさせるかという方法論には一定の自信を持っています。ですからまずは、今までのトラフィックを確実にコンバージョン化する施策を打っていきます。それと現行よりも、資金力がございます。そうすると、今までと同じリソースを使っても効果の出方が違ってきます。奇抜なことをやるわけでは全くないですが。4月からすぐにでもLDのポータルのユーザーで実施していきます。
現状のLDDに出店頂いている以上のメリットは出せると思っています。ただ、我々も実績があるわけではありませんので、まずは料金からスタートさせて頂きました。一番の出店者のメリットは集客力だと考えております。その辺で今、色々な企業と提携交渉しています。簡単なところでは、我々はグループで多くのカード会社を持っており、プロミスだけでもアクティブで300万人の会員がいます。そこに向けて、モール機能をOEM提供してプロミスの会員に売っていくなどですね。

Q:モール機能のOEM提供を広げていく?

A:今回、新料金プランを発表し、恐らくボリュームゾーンになる「月額9800円」というのは決して高いものではないと認識しています。ただ、媒体力、要はカウイチ自体がどれだけ集客力があるか、ということが出店者にとって重要です。これは我々も課題としては十分認識しております。媒体力をどうつけるかはOME供給を始め、今動いております。今後、トラフィックを稼ぐために、ECで人気のある車や旅行、不動産も開始して、出店者への送客を増やします。

Q:運営会社がプロミスならではのメリットというのは。

A:我々のグループが持っている金融ノウハウをモールに装着させた場合、これはちょっと今は言えないのですが、お客様にいろいろなメリットのあるサービスを展開することも可能です。

Q:購入時にお得なローンを組めるとかですか。

A:そういった需要が出た場合、お客様は他のローンも見比べられるわけですが、我々は競争力のあるものを投入する予定です。つまり、高いものが買いやすくなるというものです。ただ、それは事業の一部でこれがメーンの事業を進めるわけではありません。あくまでメーンはモール運営事業ですから。

Q:今後の方向性について教えてください。

A:秋をメドにLDDとは別に、カウイチオリジナルでモールを新設します。両方とも運営はカウイチですが、LDDとは別に新設のモールで独自ポイントや集客を開始します。

Q:出店者は両方とも同じですよね。なぜ、2つのサイトが必要なのでしょうか。

A:LDDはLDのポータルの中のデパート。ですから集客は極端に言えばLDからの集客に頼ることになります。カウイチでの新モールはオープンです。自ら集客し、我々独自で人気を獲得できます。

A:流通総額の目標は。

Q:一応ありますが、我々初心者マークですから大きな事を言うつもりはありません。1、2年は勉強させて頂きます。

A:突然、運営会社が変わることや具体的な各戦略の実施時期などを示させず、出店者は不安のようです。

Q:テナントにつきましては、まだまだ我々説明不足だと思っております。正直、突然色んなリリースして、一方的にああだこうだと言われても、というのはあると思います。今後、どれだけ支持頂けるか、その結果が出展者数と認識しております。

A:今回のご説明で、ご理解が得られたと判断されていますか。

Q:まだまだ足りないと思っております。今後、LDのバックアップを受けながら、新しく何か発表できる段階になったら、出店者に1つ1つ発表させて頂きます。


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