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とまらない「モバゲータウン」

モバイル通販も本格展開へ




DeNAが運営する無料ゲーム&SNSのモバイルサイト「モバゲータウン」の勢いがとまらない。2006年2月の開設から1年足らずの1月下旬に2億2000ページビュー/日に到達。会員数も今年2月時点で300万人を突破した。これまでくちコミのみで爆発的な拡大を遂げた「モバゲー」だが、2月からテレビCMを中心とした会員獲得策を展開。3月までの2カ月で約5億円の広告予算を使い、さらにPVおよび会員数の増加を図る。この「モバゲー」の運用ノウハウを活用し、中国でも同様のビジネス展開を模索し始めた。
 会員の増加率で言えば、あの人気SNS「mixi」の上をいく「モバゲー」。高いトラフィック、300万人規模の会員数を獲得する人気媒体に成長したことで、次に目指すは「媒体価値の収益化」だ。すでに広告事業のほか、物販展開も本格化し始めている。「モバゲー」はこの勢いそのままに、モバイル通販においても成功を収めることができるのだろうか。

仮想通貨「モバG」で物販へ誘導

 DeNAは2月7日から、「モバゲー」内に通販サイト「モバデパ」を開設。DeNAが運営するモバイル仮想モール「ポケットビッダーズ」の商材を活用し構築。展開する商品はファッション、ブランド、ゲーム、食品など20カテゴリー、約120万品。これらを「モバゲー」の約300万人の会員に向けて、販売していく。
 ここでポイントとなるのが「非物販会員」をどう「物販」に誘導していくのか。この橋渡しとなるのが、「モバゲー」の仮想通貨「モバゴールド(G)」だ。商品購入者には購入金額に応じて「モバG」を付与。モバGが「モバゲー」内のアバター(WEB上の自分の分身としてのキャラクター)のアイテムの購入に使用できるもの。
「モバゲー」を利用したことのない人にとっては「所詮、アバターのアイテムでしょ」と思う気持ちは分る。"お遊び"に使えるポイント欲しさに物販に向かうのだろうかということだ。ただ、「モバゲー」ユーザーにとってのアバターは非常に重要なものになっているという。
「モバゲー」内には至るところに「アバター」が表示される。マイページやプロフィールページを初め、新着日記や友達検索のページ、対戦ゲームの画面などにも表示される。露出を高めることで、自身の分身であるアバターの投資心、つまり着飾りを誘発させている。主要ユーザーは10代の男女であり、「出会いの場」として利用しているユーザーも多いために、こうした「見てくれ」を重視する要因にもなっているのだろう。実際に「モバゲー」を覗くと、各アバターともにかなり着飾っていることがわかる。
「着飾る」には先の「モバG」が必要となる。また、アバターアイテムも洋服や髪型、顔、アクセサリーやペットなど非常に多く、それぞれに安くても50G、高いものでは1000Gが必要となる。「いくらあっても足りないもの」。これがモバゲーユーザーの「モバG」に対する評価ということになる。

金にならないユーザーで稼げるか

 とは言え、前述の通り、「モバゲー」ユーザーの大半は10代の高校生。必然、可処分所得は低く、しかも彼らが求めているのは無料ゲームや友達であり、物販ではないことは明白だ。つまり会員数は300万人まで膨れ上がったが、「モバG」という強力な販促策があるとはいえ、物販事業でも成功するのかといえば、疑問符がつくことは否めない。

上の世代をどう取り込むか

「モバゲー」の今後の成長のカギはコアユーザーである10代でない「上の世代」の会員化だ。「モバG」による課金モデルだけでは、長期的な成長は期待できないことに加え、同様のビジネスモデルを展開するサイトは多く、すでに飽和状態になりつつある。また、物販モデルでも広告モデルでも可処分所得の高い層を抑える必要はある。ただ、それはそんなに簡単なことではないだろう。今のコアユーザーである高校生のように暇で若い人は集めるのはある意味で簡単だが、忙しく可処分所得の高い層を集めるには違うアプローチが必要となりそうだからだ。
折りしもSNS花盛りの昨今、ユーザーにとっては選択肢が増す一方、各サイトはユーザー集めに四苦八苦している。「ゲーム」や「出会い」「アバター」に次ぐ、キラーコンテンツの確立が「モバゲー」の広告ビジネス、物販ビジネスのキーポイントとなりそうだ。
【編集部・鹿野利幸】

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