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KDDIとテレ朝、ワンセグ連動ECの結果を発表

――テレビと比べ、200倍の誘導効率も…



 EC活用が期待される「ワンセグ」。テレビ局を中心にテレビ通販実施企業などがワンセグ連動のEC展開を徐々に開始しているが、その効果は見えにくいところだ。そんな中、KDDIとテレビ朝日が今年4月から共同で進めてきた「ワンセグ」を活用した各種事業の実証実験の結果をまとめ、12月8日に公表した。
調査報告によれば、データ放送によるモバイル通販サイトへの誘導は固定テレビで行う告知効果と比べ、200倍の誘導効率となった。一定の成果が実証されたわけだ。ただ、高い誘導効率に比べ、販売効率は同じく固定テレビ比で同57倍にとどまったこと。また、ワンセグ経由の売上高の絶対額は未だ少ない模様で、当のテレ朝も現状、ワンセグ連動EC展開は休止している。費用対効果という面では時期尚早な面があり、またECサイト誘導後に実購入につなげる仕組みの工夫などワンセグ連動ECが抱える課題も浮き彫りとなった。

圧倒的に高い誘導効率

 KDDIとテレビ朝日は「ワンセグ」の本放送が開始された2006年4月から9月までの約半年間、ワンセグを活用した各種サービスの共同実証実験を実施。主に「ワンセグ」で映像・音声とともに画面下部に同時配信される文字情報等の「データ放送」を活用し、「ワンセグ」における広告モデルやデジタルコンテンツの利用状況および通販展開などのビジネスモデルの検討・検証を進めてきた。
 実証実験の1つであるワンセグ活用による「Eコマース事業への効果検証」はテレ朝が放送する平日午前枠の通販コーナー「ちい散歩」および深夜枠の通販番組「セレクションX」でワンセグ連動ECを展開。映像画面下に商品の説明などの文字データを流し、KDDIが運営する仮想モール「auショッピングモール」内のテレ朝のモバイル通販サイトへと視聴者を誘導。番組内で紹介した商品などを販売する試みだ。
 実証実験では通常、固定テレビで実施している「とくナンバー」や「空メール」でのモバイルECサイトへの集客手法とワンセグのデータ放送を使った誘導策を比較した。まず、実証実験を行なった当時、au全体に占めるワンセグ視聴可能端末は約4%。加えて、ワンセグの平均視聴時間は月4時間程度(KDDI調べ)。固定テレビは1日あたり平均3時間55分(NHK放送文化研究所調べ)であるため、視聴時間比を1:30と考えると、この時点でワンセグで通販番組を視聴している視聴者は全体の0.14%と推定。これに対し、テレ朝のモバイルECサイトへの訪問者中、ワンセグ経由者が28%となり、ワンセグでの誘導効率は固定テレビで行う各施策と比べて200倍となった。(グラフ参照)

伸び悩んだコンバージョンレート
 
では誘導したユーザーが実際にテレ朝のモバイル通販サイトで実際に商品を購入した割合、いわゆるコンバージョンレートはどうだったのか。テレ朝によれば、ワンセグ経由訪問者のうち、8%が実際に商品を購入。これも固定テレビ比では購入効率は57倍と高い。ただ、非常に高い誘導効率に比べると低い。つまり、せっかく誘導したユーザーを逃してしまっているとも言える。この点はテレ朝でも認識しており、「ワンセグは誘導効率が従来の各種施策と比べ、圧倒的に高い。また、これまでのように商品の購入を決めている視聴者を誘導するだけでなく、商品購入を決定していない、いわゆる『見込み客』の誘導にも効果的」(デジタルコンテンツセンター・西勇哉プランニング・プロデューサー)としている。その上で、ワンセグで集客したユーザーに対して「購入意欲を喚起する画面等の演出手法の確立」を課題として挙げている。
 また、さらにワンセグ経由でのEC売上高拡大を図るため、固定テレビの視聴者にも「(ECサイトへの)ショートカットの手段として、ワンセグを利用して頂くために、テレビショッピングにおいてデータ放送を定着され、『ワンセグ』を起動すれば紹介商品を購入できるという認知拡大」(西氏)などの取り組みを今後強化していくとしている。
 
現状の費用対効果の程は…

 物販以外にも今回の実証実験では「広告媒体としての検証」「デジタルコンテンツ事業への波及効果」も同様に実施。ここでも一定の成果が見られた。ますます「ワンセグ」のモバイル通販活用が期待されるが、実際のところ、現状、まだまだワンセグ視聴者の絶対数は少なく、商業ベースに乗る媒体であると断言できる段階とは言えない。テレ朝でもワンセグ連動EC展開は「これまでの効果検証や今後の展開の検討を含めて、休止している」(デジタルコンテンツセンター・前田寿之主任)状況だ。効果があるならば、現状でも実施している通常のデータ放送と同様に、EC連動のデータ放送も継続すればよいはずだが、休止しているということは、裏を返せば費用対効果的に見て、事業的に継続に値する状況とは言えないからだろう。
ただ、KDDIによると、すでにワンセグ携帯はauだけでも100万契約を突破。また、ワンセグを月1回以上、利用するユーザーも全体の53%に達しているという。今後、ワンセグ視聴者数および利用者数が伸びるのは確実ではある。
 今回、公表された実証実験の結果をどう判断するか。通販実施企業は少なくとも、来るべき「ワンセグ時代」に向け、対応できる準備だけはしておいたほうが良いのかも知れない。【編集部・鹿野利幸】



キャプション
固定テレビでの集客施策と比べ、ワンセグでのサイト誘導効率は200倍となった(グラフはKDDIとテレ朝による「ワンセグ共同事業検証結果報告」より)

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