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USEN、GyaOの動画通販コーナーを来年1月で

休止へ――赤字事業テコ入れを優先?



 USENが運営する無料ブロードバンド放送「GyaO」(ギャオ)の動画通販専門コーナーが2007年1月末でサービスを休止するらしい。同社は公式なコメントを出していないものの、同コーナーで現在、通販映像を配信している企業にはサービス停止の旨をすでに書面で通知したようだ。ネット放送局で動画を活用した通販展開という新しい試みにスタート当時、「放送と通信の融合」への将来像や試金石として様々な意味での注目が集まったGyaOのショッピングコーナーの休止。注目度とは裏腹にその実情は厳しいものだったようだ。

1年足らずでの事実上の休止

 GyaOのショッピングコーナー「GyaOショッピング」は2006年2月に「GyaO」の13番目のチャンネルとして新設。スタート時には「映像」を持つテレビ通販実施企業を中心に約10社が参加、現在では30社程度まで参加企業数は拡大。「通販映像」で衣料品、宝飾品、運動器具、食品、雑貨などなど様々な商品を通販展開している。
スタート時点では動画を活用した新しい仕組みとして通販実施企業の間で注目された。また、USENにとっても広告以外の収入源確保の施策として期待していたのだが、開始から1年足らずでの事実上の撤退。この背景には、コーナーとしての初期設定のまずさと「GyaO」自体の収益上の厳しさにあると見られる。

買物客がほとんど来ない

 GyaO内で動画通販を開始するにあたり、「GyaOショッピング」という独立した動画通販コーナーでの展開に踏み切ったことがそもそもの敗因だったようだ。考えてみれば当たり前のようなことだが、「GyaOの視聴者はドラマやバラエティなど番組を閲覧することが目的。通販志向が低いため、ひどい時は一日、数件程度の受注数だった」(某テレビ通販実施企業幹部)らしい。
 「動画コンテンツ」を楽しみたいユーザーに本来の目的ではない「動画通販映像」を見せて、物販事業を行うのならば、GyaOの一般コンテンツ映像の間に強制的に見せる「CM」での通販展開が必要だったのではないだろうか。そうでなければ、通販フリーク以外はわざわざ、通常のテレビでも見ることのできるテレビ通販映像を見るだろうか。
予め、決められた時間で放送されるテレビならば、通販フリークではない視聴者であっても通販番組を暇つぶし的に視聴し、通販顧客化する可能性はあるが、自らが視聴したい番組を選び、いつでも好きな番組を視聴できるのがGyaOのメリット。そのGyaOの通販コーナーは相当、テレビ通販に興味があるユーザーか、テレビでは見れない、またはGyaOでしか買うことのできない商品を紹介する動画映像がない限り、誰も選んで通販映像をクリックしないのではないだろうか。

赤字事業の建て直しが優先

 「GyaOショッピング」の収益構造の詳細は不明だが、恐らくテナント料としての月額固定費と売上高に応じた成果報酬フィーを出店企業からUSENが徴収する仕組みだ。本当に先の出店企業の担当者が言う通り、「一日に数件レベル」しか受注数がなければ、USENが手にする「GyaOショッピング」の儲けは微々たるものだろう。
「GyaO」の視聴登録者数は今年10月末で約1200万人に達し、視聴者数の伸びは好調に推移している一方、収益は未だ赤字が続く。USENが発表した06年8月決算では「GyaO」などを提供する映像・コンテンツ事業部門が97億2200万円の営業赤字を計上。コンテンツの製作・獲得、広告宣伝費等の先行投資が収益を圧迫していることが主因だ。GyaOの不振も手伝い、USEN本体の利益も前年比で60%以上の減収となった。同社では否定しているが、同事業の黒字転換を急ぐため、儲けの薄い通販コーナーの休止に踏み切ったと見られる。
1月以降は「よりよい形とするため、(現行の形態から)リニューアル」(広報)し、「GyaOショッピング」は存続させる方向。ただ、刷新の中身は「詳細が決定しておらず、お話できない」(同)としている。ネット通販における動画活用。その旗手として期待されるGyaOだけに刷新後の成功を期待してやまない。


キャプション
1月末でサービスを休止する通販コーナー「GyaOショッピング」

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