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ライブドアHD、次期社長に経産省出身の石坂氏

――親会社トップ交代でどうなるセシール



ライブドアホールディングス(ライブドアHD)は10月24日、次期社長候補に経産省出身の石坂弘紀氏(34)を内定したと発表した。旧経営陣による証券取引法違反事件を受け社長に就任した平松庚三氏(61)は、優先課題だった企業統治や法令順守体制の整備、非中核事業の整理などにメドをつけ、任期満了となる12月に退任する。今後、ライブドアHDの最大の課題は訴訟対応になるが、石坂氏を社長に向え、新たな局面をどう乗り切っていくのか。同時に、子会社で、経営再建に取り組むセシールの今後も注目されるところだ。

急遽の"中継ぎ"登板、「役割は果たした」

「ブルペンどころかベンチにも入っていない状況で、ノーアウト満塁のマウンドに送り出された」。平松氏は時期社長候補の発表会見で、社長就任当時の心境をこう振り返った。
証券取引法の疑いで東京地検が旧ライブドアの強制捜査に入ったのは2006年1月16日。前社長の堀江貴文被告から、万一に備えて社長を託されたのが2日後だったという。この予想は的中し、証取法違反容疑で経営陣が相次ぎ逮捕。「ゲームの流れが全く読めない」(平松氏)状況の中で、舵取りを任された形だ。
就任から約2年で退任を決めた理由は、当面の課題にメドをつけ、「"中継ぎ"の役割を果たした」(同)ことにある。実際、企業統治及び法令順守の体制整備、非中核事業の整理をある程度完了。また、事業子会社のライブドアが目標だった単月営業黒字を果たすなど、子会社の業績も上向きつつある。
特に、出身母体であるソフト販売会社「弥生」の売却が節目となった模様で、退任の意向を伝えたのも、「弥生」の売却が決まった8月下旬頃だったという。

社長候補は"事業再生"のプロ

一方、次期社長に内定した石坂氏。その経歴から、法律と実務に長けた"事業再生のプロ"ということが分かる。
石坂氏は、東大法学部を卒業した1998年春に通産省(現経産省)へ入省。「民事再生法」や「会社更生法」など事業再生関連の法整備に携わった後、米国留学を経て産業再生機構に出向。この際に、現場に出向き銀行との交渉を行うなど、「机上の空論では通用しない世界」(石坂氏)を経験した。
昨春に経産省を退職し、経営コンサルティング会社、アリックス・パートナーズ・アジア・エルエルシー(AP)に入社、昨年9月からライブドア(現ライブドアHD)のコンサルティングを担当している。石坂氏は同社の再生計画の策定から実行、評価までを手掛け、既に社内事情を熟知している。社内でもその実力が評価されていたこともあり、「社員が安心できる」(平松氏)社長候補として浮上した形だ。
また、ライブドアHDは、旧経営陣の証取法違反事件で上場廃止となったことに伴い、損害を被った旧株主から総額約600億円にのぼる訴訟を起こされている。さらに同社自体、一連の事件に関する「外部調査委員会」の報告を受け、旧経営陣に対する法的措置の準備を進めている状況。
「訴訟対応が今後最大のチャレンジになる」(平松社長)という点でも、米国ニューヨーク州の弁護士資格を持つ石坂氏の力が必要だった訳だ。

セシール支援の方針は変わらず

石坂氏は、ライブドアHDについて、「良い事業が沢山あり、再生の可能性は十分にある」とし、ライブドアのブログサービスなど、「強みのある事業を伸ばしていく」(石坂氏)との考えを示した。
一方、セシールについては、これまで平松氏が掲げていた人的・資金的支援の方針を維持する意向。「(セシールは業績が回復し)やっと良い芽が出てきたところ。期待するところは大きい」(石坂氏)。上田昌孝会長を迎え、本業の通販を中心に業績が回復している状況下、敢えて従来の対応を変える必要はないということのようだ。
また、子会社の売却については、「現在のところ、具体的に考えていない」(石坂氏)とした。セシールに関して言えば、"伸びしろ"が多分に残されており、すぐに売却するのは得策ではない。これは、「(セシールを)今売却したら、株主に訴えられてしまう」という平松氏の発言にも表れているだろう。
ただ、一般論で言えば、「子会社を売却する可能性は、いついかなる時でもある」(石坂氏)。この"可能性"を左右するのは、訴訟の行方、さらに大株主である外資系ファンドの意向かも知れない。
【編集部・後藤浩】


           

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