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楽天、ヤマト運輸とネット競売品の配送で提携

――郵便局だけでは利用者は「不満」



郵便局でしか発送できない

NTTドコモと楽天の共同出資会社で「iモードの公式ネット競売」として、モバイル競売サービスを行う楽天オークションは10月17日、ヤマト運輸とオークションの落札品の配送面で業務提携を結んだ。楽オクはこれまで、日本郵政公社(現・日本郵政グループ)の匿名配送サービスを利用し、競売品の配送を行ってきたが、出品者が競売成立後、落札品を郵便局に持ち込む必要があった。ヤマト運輸との提携で利用者は全国の主要コンビニでも落札品の配送が可能になるほか、配達員による集荷も選択できるようになる。
楽オクは2006年11月の事業開始から、「安全性」を打ち出し、競合サービスと差別化を図るため、同社が出品者と落札者の間に入り、互いに個人情報を明かすことなく、商品と落札代金の受け渡しができる「楽天あんしん取引」と呼ばれる匿名エスクロー(仲介取引)を全取引に強いている。「安全」と引き換えに配送や決済について、楽オクが定めた限られた方法のみでしか、手続きができず、利用者には選択肢がないという状況が一部からは不満の声も上がっていた。
中でも競売成立後に出品者が競売品を落札者に配送する際に、「郵便局に持ち込まなくてはならない」ということについては、利用者やネット上の書き込みには「郵便局が近くにない。コンビニに対応して欲しい」「郵便局が夜は閉まっていて、出しようがない」との声も多く挙がっていたようだ。楽オクでは利用者の声を受けて、「利用者の利便性と選択肢」(楽オクの渡辺浩一事業統括部長)のため、郵政とヤマトのサービスの併用を決めたとしている。

提携の狙いは落札品の発送窓口

楽オクの"売り"の1つである「あんしん取引」はこれまで日本郵政公社のネット競売商品向け匿名配送サービス「あて名変換サービス」を利用し、「ゆうパック」で配送してきた。
「ゆうパック」はローソンなどの全国展開している大手コンビニチェーンでも取扱店となっている。そのため、一見すると、出品者は「近くのコンビニで気軽に発送できる」と思いがちだが、実際には「ゆうパック」の取扱店であるコンビニは「簡易郵便局」扱いで、特殊なサービスである「あて名変換サービス」に対応できない。つまり、出品者が商品を発送する際には、郵便局に持ち込まねばならなかった。
郵便局が近くになかったり、コンビニと違い、郵便局は休日や夜には閉まってしまうところも多いため、ネット競売のコアユーザーと思われる20、30代にとっては、なかなかに使いにくいサービスだったと見る向きもある。まさか仕事をサボって、平日に競売品を郵便局に持っていくわけにもいかないからだ。
今回、「あんしん取引」に従来の郵政の「あて名変換サービス」だけでなく、ヤマトの「オークション宅急便」の併用を決めたことで、楽オク出品者は従来から利用していた全国約2万4000の郵便局のほか、全国約3700のヤマトの配送拠点「宅急便センター」や、ヤマト運輸の「宅急便」取扱店である全国約2万の主要コンビニ店舗へも商品の持ち込みが可能となる。また、ヤマト運輸の配送員による自宅までの商品引取も選択できるようになる。ネット競売を販路として利用する法人も多く、「多くの商品を発送する事業者にとっては利便性はかなり上がるのではないか」(渡辺部長)としている。

ゴルフ用具、スノーボードも競売品に

ヤマトとの提携は配送拠点の拡大だけでなく、これまでは配送の問題で、出品できなかったものも、取引できるようになるようだ。要はヤマト運輸が展開する「ゴルフ宅急便」や「スキー宅急便」を利用して、ゴルフバッグやスキー板、スノーボードなども競売対応品となるわけだ。
ちなみにヤマト運輸出品者が負担する配送料は通常の「宅急便」と同じ金額で、コンビニ等に持ち込んだ場合は100円引きとなる。郵政との料金比較については「同じサイズ、同じ配送先でも地域によって高くなったり、安くなったりするので一概に比較できない。価格面よりも、今回の提携はユーザーの選択肢の拡大が大きな目的」(渡辺部長)としている。
 「最近ではエスクローが認知され始め、『安心』のほかに『簡単』という声も多くなっている。まずは匿名エスクローのサービスを広めることによって、売り上げを上げていきたい」。楽オクの渡辺部長は、「エスクロー以外の選択肢はないのか?」との問いについてこう答えた。今回のヤマトとの提携で一応、選択肢ができたのは確かだが、商品のサイズやものによっては、ほかの配送手段の方や安く効率的なのかも知れない。これは銀行振込とカード決済にとどまっている決済面も同様だ。
 果たして楽天が言う「エスクローの良さ」に皆が気がつき、結果として「楽オク」が大きく伸びるか。安全性は「補償金」で安全を担保しつつ、利用者主導による取引を進める「ヤフオク」がより伸びるのか。どちらのやり方が正しいか、今後の結果が注目される。
【編集部・鹿野利幸】




           楽オクとヤマト運輸との業務提携におけるサービスの流れ

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