2006.09 無料公開記事      ▲TOP PAGE

有力サイトの「一本釣り」でモール運営に参戦

アマゾンJは日本のECポータルになれるのか?!


 「仮想商店街事業の参入時期と詳細を教えてください」――。
 サプリメントやコスメ、飲料、調味料などを販売する11番目のストア「ヘルス&ビューティー」の開設に伴い、アマゾンジャパン(本社・東京都渋谷区、ジャスパー・チャン社長)が8月3日に開催した記者発表の席では新たなストアに関する質問よりもむしろ、冒頭の質問が各媒体の記者から集中した。

沈黙守るチャン社長

 発端は全国紙が報じたアマゾンジャパンが仮想モール事業開始を検討しているという記事。当該記事ではチャン社長が「(小売店などが)自分たちの商品をアマゾンで販売していく仕組みを導入することを検討している」と言及しており、仮想モール事業に参入を示唆しているが、8月3日の会見では各記者たちの問いかけに対し「すでに米国では『Mercha
nts@』(仮想モール事業)を展開中だが、日本では状況を見極めながら開始時期を考える」と明言を避け続けた。

 しかし、年内中の開始を目指し、秘密裏のうちに着々と「日本版Merc
hants@」、つまり仮想モール事業の構築を進めているようだ。事実、複数の有力な衣料品メーカーやEC企業に出店営業を進めている。アマゾンの仮想モール事業の詳細とは。また、アマゾンの参戦で日本のネット通販市場にどのような影響を与えるのだろうか。

公募ではなく指名で

 本誌が入手した、アマゾンが今夏から一部の大手メーカーや有力EC企業に配布していると見られる「Merchants@プログラムのご案内」によれば、出店方式は「楽天市場」や「ヤフー!ショッピング」のように出店舗を募集する方式ではなく、有力なECサイトに絞り、アマゾン側から指名し、参加を促す形。

 楽天やヤフーでは出店社に対し、専属スタッフによる販売支援やノウハウの提供などサポートがあるのに対し、アマゾンの場合、一定の知名度やノウハウを構築した有名大手に限定しているため、ECのやり方自体は出店社にほとんど任せる。つまり、仮想モールといっても「出店」というより「amazon.co.jp」という人の行き交う場所を貸す「テナント出店」的な要素が強いようだ。

 そのため、既存の仮想モールのように「出店料」という形で初期費用や月額固定費を徴収するかどうかは不明だが、手数料として出店舗の販売実績から数%を徴収する成果報酬型を採用している。

まずは「スポーツ&アウトドア」

 アマゾンの要請を受け、出店を決めた企業はアマゾンが用意した出店社向け管理画面「Seller Central(セラーコントロール)」でテンプレートを使い、専用ページを作る。各社の専用ページに誘導する「入り口バナー」が、「ホーム&キッチン」などそれぞれの「ストア」ページのトップに貼られる形となる。なお、「Seller Central」はページデザインのほか、出品作業や商品カテゴリー管理や受注処理、売上管理、サイト分析などもできる管理ツールだ。

 出店社の商品データはアマゾンのデータベースに組み込まれ、アマゾン商品と分け隔てない扱いとなる。つまり、アマゾン内の全サイト検索の結果画面やレコメンデーション(ユーザー評価)」に出店社の商品が反映される。検索に反映されることで月間1500万人のユニークビジターを誇るアマゾン顧客に商品を露出できることや、レコメンデーションによるクロスセル効果などを「売り」に出店要請を強化していくようだ。決済はアマゾンが代行、商品出荷は出店企業が行なう。なお、配送料金や納期は出店企業側で設定できるようだ。

 アマゾンが声をかけている企業群から推測すると年末に予定している「日本版Merchants@」のスタート時点では「スポーツ&アウトドア」のカテゴリーから開始する模様で今後、同じく各分野でのトップに他のカテゴリーへと拡大していくと見られる。(つづきは月刊「ネット販売」9月号にて)【鹿野利幸】

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