2006.08 無料公開記事      ▲TOP PAGE

新潮流・通販を変える◇ネットビジネスの開拓者に聞く

中橋義博・サーチテリア代表取締役社長兼CEO

「公式」優位の時代はもう終わっている


 「auとGoogle」の提携や「ドコモと検索サービス実施9社連合」など携帯電話の「検索」を巡る動きが活発化している。「検索」が携帯電話でも一般化した場合、モバイル通販においてもPC同様、ショッピング導線のメーンになる可能性出てきた。であるならば、モバイル通販実施企業にとって携帯での検索エンジン対策も今後、必須条件となりそうだ。モバイル検索広告の老舗、サーチテリアの中橋社長は「有名な公式サイト」ではなく「無名の勝手サイト」にモバイル上での検索対策のカギがあると断言する。(聞き手は本誌・鹿野利幸)

有名サイトをいくつ集めても
無形サイト1つに及ばない

広告主は800社を突破

――電通の調査では05年度のモバイル広告の市場規模は288億円。成長市場と言われています。事業者としての肌感覚ではどうなのか、モバイル広告の第一人者の一人として伺いたい。

モバイル広告全体は把握していませんが、当社での広告主の増え方や売り上げの伸びを考えると成長分野と言えるのではないでしょうか。当社の年商が2億円くらいですが、今期は2桁億くらいはいきそうですから、成長している市場には間違いないと思います。

――他社に先駆けて、2004年8月からモバイル検索連動型広告事業を開始されました。現在までの状況は。

開始当時、広告を配信する媒体は10もなかったですが、現在はポータルサイトやニュースサイトなど160くらいで、毎月10サイトのペースで増えています。これに伴い、広告主も増加傾向で現状、通販企業など約800社にご利用頂いております。事業開始から2年目としては媒体サイト数、広告主数ともに順調だと言えそうです。
 モバイルはPCに比べてまだ小さな市場です。PCと同じ手間が必要だったら、通販企業などの広告主が使いにくいわけです。ですから、パソコン(PC)上での検索連動型広告の問題点や、携帯電話の特徴を考慮に入れた使いやすい仕組みを構築し、広告主に提供できたことが支持を受けたのではないでしょうか。
当社では提携する媒体サイトの検索サービスの検索結果画面上に、ユーザーが入力した検索キーワードに関連の高い広告主のテキスト広告を配信しています。これはPCのリスティング広告と同じです。ただ、PC上のように「特定キーワード」に入札をして入札金額の高い順番で広告を掲載するのではなく、当社があらかじめ類似するキーワードをまとめ、カテゴリーとし、そこに入札する方式を採っています。これにより、PC上では何千というキーワードの管理が必要でしたが、そうした手間を省きました。
また、入札金額の大小は広告を表示する「順位」ではなく、「確率」を決定する基準で、入札金額の低い企業でも一定の割合で広告が表示される仕組みにしたことも大きいと思います。
 加えて、リスティング広告の特性として、PCのリスティングと同じで費用対効果が他のモバイル広告と比較して明らかによい。実際、広告主のほとんどは継続的に出稿頂いています。こうした部分が大きいのではないでしょうか。

――PCと比べ、広告主から人気のあるキーワードは異なりますか。

ちょっと違います。PCにはない携帯電話特有の「着うた」とか「iアプリ」とか「デコメール」などの人気が高いですけね。それ以外だとあまり変わらないですが、やはり若者が多いので、例えば「転職」よりも「バイト」が多いとかの違いはありますね。

――モバイルは通販の媒体として成立するところまで来ているのでしょうか。

広告主の立場に立てば、若者を対象としている商品やサービスでしたら、効果的なのは間違いないですね。使われ方としては、別の商品を、というよりも現状のモバイル通販での売れ筋商品がより売れるように関連するキーワードを買い、見込み客をさらに増やすという方法をとっていらっしゃる広告主さんも多いです。
そのほかの世代の人たちには現状は厳しいですが、それはあくまでも今だけで、その人たちが大人になったらと、いうところまで見据えねばならないと思います。

「公式サイト」のトラフィックは全体の3割しかない

――広告主に継続的にかつ購入見込みの高いユーザーを送客するには媒体サイトの選定が重要です。ただ、モバイルサイトのトラフィックは実情が見えません。現状、どういったサイトにトラフィックが集まっているのでしょうか。

まず、モバイル上のトラフィックの現状を整理すると、「公式サイト」のトラフィックは「勝手サイト」のトラフィックと比べると小さくなってきていて、(全体の)3割程度。その3割のトラフィックをNTTドコモ、au、ボーダフォンの3キャリアで分けている状態です。残りの7割は勝手サイトのトラフィックです。
ですから、我々としても今後、8割、9割と伸びてくるであろう勝手サイトのトラフィックをどう取り込むかが重要だと考えています。

――携帯電話ではポータルであるキャリアの「公式サイト」がトラフィックを集めているような印象がありましたが。

公式サイトが減っているのではなく、勝手サイトがもの凄い勢いで増えているためです。例えば、PCで作ったブログは携帯で見れますよね。ブログが増えた分、ほぼそれだけ勝手サイトのトラフィックが増えるわけです。そうすれば、やはり「検索」のニーズも増えてきます。トラフィックがあり、そこにいるユーザーにマッチングした広告を配信できれば公式でも勝手でもあまり関係はないと認識しています。

――トラフィックの高い勝手サイトというのはどんなサイトですか。

無名なサイトです(笑)。名前の知られる有名なサイトをいくつ集めても無名なサイト1つに及ばない状態です。「掲示板」とか学生の間でクチコミで広がったようなサイトがとてつもないトラフィックを持っていて、月間ページビューが数億PVとかいうのはザラにあります。我々も驚くのですが、配信契約をして半年してからトラフィックが何十倍になるサイトも結構あります。嘘みたいな話ですが本当です。
僕らもそれが何でなのかまったくわかりません。東京にある会社が別に凄いわけでもなく、聞いたことがない無名のサイトがいきなりポンとPVがあがる。非常にインターネット的だなあという印象です。我々はひたすらネットサーフィンをして、そうした知られざる媒体者を見つけ、約束を取り付け、契約することを地道に続けています。リストなんてないですから、手探りで苦労しています(笑)。

(続きは月刊「ネット販売」にて)

▲TOP PAGE ▲UP