2006.07 無料公開記事      ▲TOP PAGE

新潮流・通販を変える◇ネットビジネスの開拓者に聞く

島元大輔・セシール執行役員ネットマーケティング本部長

成すべき「本質」は、商品改革


 セシールのネット販売改革が始まった。総合ネット企業のライブドア傘下となった今、ネット販売はいち早くその"効果"が発揮される分野として注目を集める。著名なWebディレクターで、改革を指揮する島元大輔執行役員は、商品改革こそ与えられた使命の本質と宣言する。(聞き手は本誌・島田昇)

まずは「スピード」、次いで「精度」。
すでに企画の更新数は10倍。
走りながら"ヒット率"も上げる。

セシールは「すごい!」

――敏腕Webディレクターとして有名な島元さんですが、セシールに入社するまでの経緯について教えて下さい。

 当時、学生時代に始めた運送会社での肉体労働を、学校を卒業した後も続けていました。それを5年続けた後の23歳の時、単純に「夏はクーラーの効いた部屋で、冬は暖房の効いた部屋でデスクワークがしたい」という希望と(笑)、当時インターネットというものの存在に衝撃を受けたことから、パソコンの勉強を始め、大阪でWebディレクターとして働き始めました。

 大阪のウェブ制作会社で3年くらい、東京のウェブ制作会社の老舗となるキノトロープに3年くらい勤め、その後ライブドアからスカウトを受けて同社に入社しました。ライブドアの本体には半年くらい所属しましたが、会社が法人向けサービスは関連会社のライブドアマーケティングに移管するとの方針を打ち出したことにより、仕事の内容は変わらずにライブドアマーケティングに移籍したというわけです。
 
その後はご存知の通り、ライブドアマーケティングがセシールを買収し、役員を何人かライブドアマーケティングから派遣するということになりました。そうした中、ネットマーケティングについても詳しい人間が必要だということで、私を含めて3人候補があったのですが、私が自ら手を挙げて四国入りし、今に至るというわけです。

――セシールに移籍されてからの率直な印象はいかがですか。特に、カタログ通販企業のネット販売はこれまで手がけてきたウェブ制作とは全く文化の違う世界だと思いますが。
 
「すごいな!」と思ったのが最初の感想です。ライブドアマーケティングがセシールを買収した時の報道では、「セシールのネット販売は遅れている」などの指摘がありましたが、年間で150億円も売っているネット販売サイトなんて数えるほどしかありませんよ。国内ではかなり珍しい大規模なサイトであることは確かですし、私自身、これほど大規模なサイトを手がけたことはありませんでしたから。
 
特に、バックオフィスの部分には驚きました。最初に物流倉庫を見学しに行ったのですが、すごい数の商品が効率よく流れているところを見て、仕組みとしてかなり出来上がっているなと感心しました。コールセンターにしても、これまでに見たことがないくらいの受注が日々あるわけです。こんな大きな舞台で仕事ができるのかと思い、非常にやりがいを感じています。

――カタログ通販企業のネット戦略は、紙媒体を持っているという強みを生かした紙媒体の受注ツールという使い方と、紙媒体に頼らないネット完結の販売サイトとしての展開、という2つの大きな柱を軸にする考え方が主流です。カタログ通販とは別の文化を歩んできた視点から、セシールのネット販売はどんなことに取り組むべきだと思いますか。
 
やはり、一番重要なことは商品でしょう。セシールのネット販売サイトは商品を売っているサイトなのですから。Webディレクターの私がこんなことを言うのもおかしいですが、結局、サイトのある部分をいじくっても、肝心の商品に直接的な手を加えなければ、それほど劇的な効果や変化というものは望めないであろうと考えています。

 確かに、サイトのユーザビリティーを向上するために各所の細かな調整を積み重ねることは非常に重要ですし、当然、やるべきだと思います。しかし、本質の部分と言える商品で、"セシールならでは"のものを展開できなければ、劇的な売り上げやサイトの見せ方の向上にはつながらないと思っています。

 私はどんなことをやるにしても、「本質」というものの大切さを重要視しています。例えば、ウェブ制作において方法論や技術を重要視される人は多いですし、実際に重要ではあるのですが、そういった部分は日々の業務をこなしていく中で嫌でも覚えていくものです。むしろ、それらをこなすためのベースとなる本質的なモノの考え方や立ち回り方こそ大切だと、私は思っています。

 残念ながら、すでに私の頭の中にある商品に関するいくつかの具体策についてお話することはできませんが(笑)、長い目で1〜2年かけてやっていきたいと思っています。

活発になった社内会議

――例えば、「ウェブ限定商品」などについての取り組みは行っていますか。
 やっていますよ。今年1月から4人の専門部隊を組織して積極的に取り組んでいます。ただ、まだ組織的な仕組みとしての部署で回っているわけではないので、今後は各商品カンパニーともっと連携しやすい体制を作っていかなければならないでしょう。

――サイトのユーザビリティー向上ではどのようなことをしてきましたか。
 
やはり、スムーズに商品の魅力を伝えて見てもらえるようにすることが大切なので、そのコンセプトに基づいた細かい変更などを積み重ねていっています。そのための組織改正はこちらに来てからすぐに行いましたし、サイトも4月にリニューアルしました。
 
よく自動車業界などで言われるのが、A社は技術力があっていい車を作ることを前面に押し出すが、B社の場合は同じ技術力があるにもかかわらず、その技術力を前面に出さない。結果的にB社の方が売り上げも利益も高い。どういうことかというと、それは営業力やプロモーション力に差があるということです。
 
それと同じようなことがネット販売サイトにも言えます。もちろん、商品ありきなのですが、見せ方においても長けていないと駄目です。商品と見せ方は両方とも必要ですからね。

(続きは月刊「ネット販売」にて)

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