2006.03 無料公開記事      ▲TOP PAGE

「ビジネス」から「エンジニア」視点へ

山田進太郎●ウノウ代表取締役社長



 CGM(消費者主体型メディア)の通販活用が話題を集める一方、ウノウはすでに数年前からそれを実践していた。時流はビジネス視点からエンジニア視点へ――。技術畑の最先端を歩む山田進太郎社長はそこに、日本発の世界規模なネットサービスの誕生を見る。(聞き手は本誌・島田昇)

日本発で世界規模のサービスが
出てこないわけはない

――映画情報サイト「映画生活」とその通販サイト「DVD生活」は2003年頃から展開していたようですが、2004年から約1年間米国に行かれ、2005年に帰国してウノウを株式会社化しました。間に米国に行かれたのはなぜですか。

 単純に学生の頃から米国シリコンバレーに行きたいと思い続けていたからです。ヤフーにせよアマゾンせよ、ほとんどのネット関連サービスは米国発で世界中に広まっていますよね。一方、日本発のサービスが世界中に広まった例はありません。それで米国に行かなければ駄目なのではないかと。

 しかし、米国に行って思ったのは、そこで一からビジネスを始めるのは日本のように人脈がないと大変だということ。それに、技術やサービスで米国と日本はそれほど大きな差があるとは感じられませんでした。それであれば、日本発のサービスを世界中に広めるのも十分に可能だろうと思ったわけです。

 「日本では駄目」という考えが間違っている顕著な例は、野球などスポーツ分野で最近よく見られます。野茂英雄選手が米国に行くまでは、「日本人がメジャーリーグで通用するわけない」と考えている人がほとんどでしたよね。でも、実際そうではなかった。

 次々と日本のアスリートが世界を舞台に挑戦し始めています。今はその臨界点に達しようとしている時期なのではないでしょうか。身体面で欧米人と比べて不利なところもあるスポーツで「日本発」が世界に広まっているのですから、アイデア勝負のネット関連サービスでそれができないわけがない。

 そう思い始めたとき、当社の副社長となる石川篤(サイバーエージェンント創業メンバー)から「一緒にやらないか」と誘われたこともあって、2005年2月に帰国し、会社として本格的な活動を開始したわけです。

――「日本発」の世界規模のサービスはどんな形で展開するつもりですか。

 当社は「映画生活」以外でも写真共有サービスの「フォト蔵」などを展開しています。

 写真のコンテンツは各大手ポータル(玄関)サイトが提供してはいますが、現時点で大きなイノベーションがないという状態。米国の「Flickr」(フリッカー)のようにオープンな写真を友達同士で共有できるようなサービスを日本で展開しているのが「フォト蔵」で、これは海外展開を視野に入れて言語ファイルなどを分類してシステム構築してあるので、今年の早い時期には海外展開します。

 もう1つは迷惑メールフィルター「クイックPOPFile」のサービスで、インストールなどもすべて自動で行う初心者でも簡単にできるようにプログラムされているものです。これも海外展開を視野に入れた事業となります。

 こうした技術寄りのサービスは、次々と打ち出していく方針です。

 国内でビジネス展開するには、会員数やコミュニティー参加者数は数百万人程度が限界値ですが、世界展開すればそうではない。例えば、SNS(紹介制コミュニティー)であれば国内では数百万のサイトが1つくらいしかありませんが、海外では1000万規模のSNSは10個くらいあります。規模感が10倍くらい違わけです。

 サービスを作るエンジニアというのは、自分が作ったサービスをより多くの人に利用してもらいたいという思考が強い。「言語を超えて」ということに魅力を持っているので、当社としてそのメッセージを発信しているうちに、各方面から注目が集まり、優秀な人材も集まってきました。

 実は、当社の社員は半分以上がエンジニアです。今まではビジネス的観点から出てきた発想をネット上に具現化したサービスが多かったと思うのですが、最近はエンジニアから「こんなこともできる」という観点のサービスが徐々に人気を集めてきており、その最たるものがCGMなどですよね。ユーザーの力を使ってサービスを形成するものを、最新のネット技術を使ってインテグレーションするというのが最近のトレンド。それが「web2.0」(次世代ネット社会の総称)というような大きな流れになってきているわけです。

 当社に集まった人たちにその能力を最大限に出してもらい、次々と新しいサービスを作っていきたい。それらがすべて大成功するかどうかは分かりませんが、すべてそこそこの成功はさせます。常に世界に目を向けてサービスを作ることで、職場全体もそういうムードを保てればいいと思っています。

 一方、世界規模でオープンソースプログラムに参画するという領域においては、すでに世界規模のサービスを創出することに日本人が貢献しているという例も出てきています。これはこれですごいのですが、僕は日本でそのすべてを作って、それを世界に持っていくということをしたい。だって、それができたら面白いと思いますし、やはり日本人が使うものは純国産にしたいですから。
(続きは月刊「ネット販売」にて)


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