2006.03 無料公開記事 | ▲TOP PAGE |
金額の大きさや設立意義への疑問で 理事会内にも不満の声 ECOMは2001年11月から2005年10月まで、ADR(裁判外紛争処理)の実証実験を実施。実験終了後この成果を民間主導に引き継ぐべきだというのが経済産業省の意向であり、「通信販売の新たな課題に関する研究会」が昨年まとめた最終報告書にもその旨が記載されていた。 この点を踏まえ、経済産業省消費経済政策課は今年1月に「ECネットワーク」の設立案をJADMA幹部会に示し、資金拠出を要請。幹部会では正式に決められないため、2月に臨時理事会を招集し検討する運びになった。しかし、1月の幹部会の時点でも設立意義が明確でないことや、年額1500万円という大規模な拠出金に対し、理事たちからは疑問の声が挙がっていた。 ECOMの「ADR実証実験」を 民間主導へ 設立案ではECOMが手がけていたのと同様に「ECネットワーク」がインターネット取引における消費者トラブルについてEメールを中心に相談を受け、助言・あっせんを行うことを提案。3人の専門相談員および国際担当・事務スタッフ1〜2名で対応する案を示している。 ADR以外に「ネット取引相談」「トラストマークの付与」「国際トラブルに関する連携」「リサーチや会員への情報提供」を事業として計画。経済産業省がADRの調査委託費用として1500万円、JADMAが運営資金として年間1500万円、モール出展者やモール・オークション事業者、ASP・ASP事業者などが年会費として2000万円を拠出するという運営案を描く。 見えてこないJADMA側のメリット 経済産業省は民間主導を強く主張しているが、JADMA側としては資金拠出に逡巡するだけの理由がある。 まず、JADMAには消費者からの電話相談に対応する「JADMA110番」が存在するという点。現在5人で対応しているがインターネット通販に関する相談は年間900件程で、特に他の機関に依頼する必要はない状況だ。 確かに今後ネット通販は増えると捉えているものの、必要であれば相談員を増強すれば済む。拠出金分の年間1500万円という予算があれば、かなりの人員拡充が可能になるわけだ。さらにJADMAには既にオンラインマークもあり、新たなトラストマークを付与してもらう必要はない。 さらに全体から見ても、まだ疑問点が挙げられる。ECOMの実証実験では4年間の相談件数が4687件と少ないため、数人程度で対応できた。しかし、ヤフーや楽天などにはおそらく1日で1000件規模の問い合わせや相談があるとされ、これら膨大な件数を「ECネットワーク」の数人の相談員が果たして処理できるのかという懸念がある。さらに、既にこれら大規模な相談に対応している大手モール運営事業者などが、新たな中間法人に参加する必要はあるかとの疑問も生じる。 6月の総会議案に盛り込む 流動的な判断必要 このように組織の中身がはっきりしないことや他のネット関連事業者の参加意向、さらにJADMAの参加意義・位置付けが明確でないことなどを踏まえ、JADMAは臨時理事会の総意として拠出には「実績の状況次第で」との条件を提示。年会費というのではなく協力・配慮という位置付けから、上限で要請金額の3分の1程度に当たる金額を拠出するとの意向を経済産業省に伝えた。1500万円という金額や毎年払うことになる「年会費」という名目では、とうてい会員に受け入れられないと判断したためだ。総会での議案に盛り込む予定でいるものの、ネット関連事業者の動きなど状況次第ではまだまだ流動的な判断が必要になるとみられる。 (渡辺友絵) |
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