2006.02 無料公開記事      ▲TOP PAGE

すべての消費者の「母」になる

堀主知ロバート●サイバード代表取締役会長兼代表執行役員



 有力コンテンツプロバイダーとして名を馳せてきたサイバード。次へのステップとして広告事業と通販事業を軸とした中期経営計画を発表、08年3月期までに現在の年商の約6倍となる売上高600億円を目指す。中計成功のカギ――。それは同社が構築を急ぐモバイルでの「史上最強のマーケティングプラットフォーム」の実現だ。【鹿野利幸】
原点回帰で事業を再定義

――一昨年、中計を発表し、物販や広告事業など従来事業にとどまらないビジネスを開始することを打ち出しました。なぜこのタイミングで戦略変更なのですか。

 そもそも当社を創業したきっかけは"モバイル"というメディアが出現したで産業構造に大きな変化が起こり得るだろうと思い、その可能性に魅力を感じたためです。インターネットがパソコン(PC)で始まった時よりも、もっとそれが細かなところまで落ちてくるだろうと。要は消費者個々人と世の中の付き合い方まで変わるだろうと思い、この世界に身を投じました。

 そこでまずはデジタルコンテンツの提供から入りました。デジコンの販売をしながら少しずつ会社が大きくなり始め、では次にどの方向にビジネスを向いていくかと考えた時に、「モバイルが世の中を変えていく」という元々の原点に回帰しようと思いました。その上で「今の自分たちでどこまで出来るのか」と考え、事業の再定義を図ったのが中計です。ユーザー視点から見たモバイルの拡張性を追及するという方向性で次のステップを考えました。既存事業に人を増やし、チームをたくさん作ればもっと伸びるとは思います。しかし、限られたリソースを考えると、将来に対して拡張性の高いものに力を入れるべきだろうと。

――モバイル市場を巡る環境も大きく変わってきています。

 そうですね。我々の立場からすると、将来に対して色々な意味で不透明さがあります。デジコンに関して言えば、課金のあるモバイルの世界と、課金モデルがあまり存在しないPCの世界が完全に融合することは無かったとしても、垣根が下がってくるところもあります。そうすると携帯が守ってきたデジコンでの課金モデルというものも変わってくる可能性があります。

 また、これまでのようにキャリアが用意するプラットフォームを使わなくとも、ビジネスができるようになってきたとも言われ、競争激化に拍車がかかると思います。どういうことかというと、キャリアを中心に伸びてきたこのコンテンツビジネスには、大きな特徴があります。それは「集客」「認証」「課金」です。

 ところが、ここにきて「集客」は各社とも独自で持ってこられる力を持ち始めました。「認証」と「決済」は表裏一体で、それも「Edy」や「suica」などさまざまなものが出てきています。そうすると月額課金で成り立っていたキャリアの仕組みを軸とした世界が、1回1円が成り立つ世界になってきます。すると今までの自分たちの販売するものが、形式上、「コンテンツとしては売れなかった」けれど、「環境が変化すれば売れる」という人たちも増え、それによってますます競争が激しくなると思います。

 これまでを振り返ってみると、公式コンテンツプロバイダーというのは1つのビジネスモデルに執着しすぎたと思います。コンテンツビジネスはこれまで通りに行っていきますが、それ以外のビジネスをそろそろ見直す時期に来ていると思います。要は課金手段が多様化すればビジネスモデルは多様化するということです。長期のトレンドで見たら公式コンテンツ事業というのはビジネスモデルの中の単なる1つになると思います。

――では具体的には今後、どういった戦略を考えているのですか。

 我々はかなり長期までの事業イメージを作り上げています。それは中計の基本戦略でもあるのですが、「史上最強のマーケティングプラットフォーム」を作るということです。

 主にリアル企業(さまざまな業種で顧客接点を持ってビジネスを展開している企業)にモバイルを活用した顧客サービスや来店促進などにつながる便利な仕組みを提供し、我々はこのビジネスを通じて、サイバードとしてもコンタクトをすることができる数多くのユーザーを獲得。獲得したユーザーには提携先の情報のほか「天気予報」「占い」「ニュース」など便利なサービスの会員を固定化を図ります。そのプラットフォームに物販や広告を乗せていくのが中計の骨子です。

 それを構築しさえすれば、そこでできる商いは多岐に渡ってあります。モノも広告もデジコンも売ることができます。ユーザーが継続的に喜んで使ってもらえるサービスを提供しながら、一方でこのプラットフォームを使い新しいビジネスを展開していけば、非常に長い間の企業成長が期待できるはずです。(続きは月刊「ネット販売」をお読み下さい)

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