2006.01 無料公開記事      ▲TOP PAGE

郵便振替の手数料料金改定でネット販売への影響は?

――4月から通常払込み手数料30円値上げに




「窓口」の混雑緩和で40年ぶりに料金引き上げを敢行

4月からの郵便振替の手数料改正は郵便局の受付窓口の混雑緩和を理由としたものだという。「電信振替」「電信払込み」は窓口手数料を据え置く一方で、ATMやパソコン利用などの場合は手数料料金を現行から10〜20円引き下げる。近年、通販実施企業でも決済手段として採用され始めた「Pay−easy(ペイジー)サービス」、また現状、ネットやカタログの通販事業者が多く採用する「通常払込み」の場合、ATMなどを据え置くか値下げする一方、窓口手数料は30円値上げする。要は窓口払いの手数料を上げることで、ATMなどに利用者を振り分けようとの考えのようだ。

4月からの郵便振込料金の改正で特に影響が大きいと思われるのは、「ネット決済等の手数料値下げ」ではなく、むしろ通販の決済方法として利用が普及している「通常払込み」の窓口手数料の値上げに関してだろう。現状、その手数料の安さから多くの通販事業者が採用しており、かつ「通常払込み」の9割近くがATMではなく、窓口払いとなっているためだ。後述するが、この手数料は多くの場合、通販事業者が負担しているという側面もある。その窓口払いの手数料は4月以降、取扱金額が1万円以下では現行の70円から100円に、10万円以下では120円から150円、100万円以下で220円から250円となる。

「利用者をネットやATMに促し、受付窓口の混雑を緩和する」――。もっともな理由を挙げて、窓口手数料の値上げに踏み切る郵政公社。通販業界に大きなマイナス面のインパクトをもたらしそうだが、及ぼすであろう影響度の割には、郵政公社が値上げに踏み切る要因として挙げる理由は、あまりにも安易かつ不明瞭であると言わざるを得ない。なぜなら、窓口払いの手数料を値上げしたからといって、「窓口の混雑緩和」に結びつくとは思われないからだ。

ATMの多くは「通常払込み未対応」という整備不足

 2005年3月時点で日本全国の郵便局には2万6000台のATMが配備されている。しかし、「通常払込み」対応機、つまり通常払込みができるATMは半分以下の約1万台となっている。しかも、これは全国を均した平均値だ。都内など大都市圏では恐らく7割以上の郵便局でATMによる通常払込みを行うことができるが、逆に地方ではその整備状況は3割以下となるはずだ。また、銀行のように1店舗内にかなりの台数が設置されていれば、話は分かるが先の設置台数からも推測されるように、1局あたりのATM設置台数は1〜2台程度であると推測される。つまり、窓口手数料を上げてATMの利用を促しても、結局、利用者は引き続き、窓口でしか支払いをすることができないということになるわけだ。

 しかも、郵便局のATMは「操作が面倒で利用者からの不満の声は少なくない」(某決済サービス提供会社幹部)。銀行やコンビニが普及する都市部であれば、利用者は決済時に別の支払い方法を選択できるが、地方の場合には近くの金融機関は郵便局しかない場合もあり、消費者は手数料の負担だけを求められるばかりか、特に機械の操作な不慣れな高齢者などにとっては複雑なATMの前になす術がなく、やはり依然として窓口の利用を続けることになりそうだ。「3年後には通常払い対応ATMを設置台数を増やし、地域の9割程度をカバーする」と郵政公社では説明しているが、少なくとも3年間はこうした状況が続くわけだ。

通販事業者が「通常払込み」手数料を負担するという現実

 加えて現状、サービスの一環から通常払込みの手数料のほとんどは利用者本人ではなく、通販事業者負担となっている現実がある。利用者自らが手数料を負担するのであれば、いざ知らず、手数料の額すら意識しない利用者に対して、手数料を値上げしたからといって、また設置台数が極端に少なく、かつ操作が複雑で分かりにくいATMに誘導することなどできるのだろうか。常識的に考えれば当然、窓口の混雑緩和には結びつくわけがない。本来の目的である「窓口の混雑緩和」は改善されることなく、いたずらに通販事業者のコスト負担を強いるような郵政公社による身勝手な値上げはネットを含む通販市場の拡大に深刻な影響を与えかねない危険性をはらんでいる。

 他の決済手段ならば、別にそれを利用にしなければ済む話ではあるが、郵便振替はネットバンクなどを除く決済手段の中で負担する手数料は最安値であり、また全国の消費者を対象とする通販において、大都市から過疎の村からまで全国津々浦々を網羅する「郵便局」という金融インフラの活用は不可欠だ。そのため、通販事業者の多くは郵便振替を決済の手段として採用しなければならないという問題がある。

 消費者と事業者の犠牲を考えない一方的な郵便振替手数料の改正は、重要な決済を提供しているという自覚を忘れた行為で、許されるものではない。完全民営化を控えて、民間の金融機関や配送業者に挑んでいくのであれば、利用者を無視した振る舞いはなるべく避けた方がよいのではなかろうか。このままでは、事業者はコンビニ決済などにシフトし利用者離れが加速するだけのような気もするが…。

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