2006.12 無料公開記事      ▲TOP PAGE


オークションに死角あり!?

ドコモが公式競売サービス開始




 「ナンバーポータビリティも始まり、ますます競争力を強化していかないと今までのシェアすら守れない。ドコモとしては『端末に死角なし』『コンテンツに死角なし』の攻めの姿勢で臨んでいる。『楽オク』は『コンテンツに死角なし』の最終兵器みたいなもの」――。
 NTTドコモは楽天と都内で記者会見を開き、両社の共同出資会社、楽天オークションを通じ、11月20日からドコモの公式競売サービス「楽オク」を開始すると発表した。ドコモの夏野剛執行役員は冒頭のように公式競売サービス開始の意義を説明し、月間2億PV、ユニークユーザー数は2100万人(FOMAのみ)を誇るiメニューのトップに公式競売サービス「楽オク」のリンクを掲載。iメニューの圧倒的な集客力と楽天のノウハウを組み合わせ、すでに公式サービスとしてオークションを展開するau、ソフトバンクモバイル(SBM)などの競合に対抗していく考えだ。
 auの独壇場でもあり、立ち遅れていた音楽配信では先日、タワーレコードグループのナップスタージャパンを通じ、ドコモの公式音楽配信サービスとして音楽配信を開始。確かにドコモならではの「力技」で競合との差を確実に縮め、「コンテンツに死角なし」は現実性を帯びてきた。ただ、皮肉にも「最終兵器」たる「楽オク」こそ、"コンテンツの死角"になる可能性がある。

匿名取引導入で安全性を


安全性――。「楽オク」の"売り"のひとつだ。オークションの取引に「楽天あんしん取引」と呼ばれる匿名エスクロー(仲介取引)を導入。落札後の商品・代金の受け渡しを「楽オク」が仲介する形を採った。
競売品の落札後、@落札者が三井住友銀行の「楽オク」専用口座へ入金A「楽オク」から出品者に入金通知B出品者はオークションID(「楽オク」参加に取得が必須)と送付先の都道府県を記入し商品発送C商品到着確認後、落札者が「楽オク」に通知D出品者の個人口座に「楽オク」から入金――という仕組みだ。
「楽オク」におけるオークション取引はすべてこの「楽天あんしん取引」を介して行われる。このため、落札者と出品者は個人情報を互いに開示せずに取引が可能。これで個人情報の公表を懸念する参加者の不安を払拭するほか、「偽ブランド品」など落札商品に問題がある場合も、支払いを行う前に「楽オク」に通知することで、被害を防ぐことができるという。

「安心・安全」の代償


 「楽オク」のこうした仕組みはネット競売に詐欺行為が跋扈する危険な場所とのイメージを持つ「ネット競売初心者」には有効に働きそうだ。また、iメニューのトップで展開するメリットから、これまでネット競売の参加に二の足を踏んでいたユーザーを取り込める可能性は高そう。ただし、今後、問題となってきそうなのは安心・安全の代償として参加者が負わねばならない「制約」だ。
まず参加者が支払わねばならないコスト。確かに「楽オク」の参加は出品、落札ともに月額利用料などは無料。また、システム利用料として出品者から落札後に徴収する手数料もPC版では落札金額の3.15%となるが、iモードでは無料だ。
月額固定費もまた実質的に出品手数料も徴収しない「楽オク」はネット競売を行う他社サービスと比べ点も、その部分での優位性は高いように見える。ではどの部分にコスト負担があるのか。「楽オク」では取引に「楽天あんしん取引」を必ず使わねばならないことは先に述べた通りだ。
この「あんしん取引」は日本郵政公社のネット競売商品用に匿名配送サービス「あて名変換サービス」を利用している。特別なサービスであることから通常の「ゆうパック」料金に加え、150円の特別料金を負担する必要があるのだ。
これについて楽天では「直接、郵便窓口に持ち込むと(150円が)100円引きとなり、実質負担は50円。そもそも『ゆうパック』は他の配送サービスと比べ、価格優位性があるため、(50円を負担しても)格安」と説明する。

500円で落札したけど配送料は…


確かに「ゆうパック」はヤマト運輸や佐川急便の宅配便サービスと比べると、割安なのは事実。サイズにもよるが荷物の縦横高さ3辺の合計が60cm以内であれば同一県内への配送料金は持ち込み割引が加わり、500円だ。匿名配送料金が加わり、550円になったところでやはり割安だと言えよう。
では、これがネット競売で相当量の取引があると見られる「チケット」など、小型の商品である場合はどうだろう。「ヤフオク」など他社のネット競売を利用したことがあれば分かると思うが。「チケット」や「株主優待券」等の場合、通常郵便などで送るのが一般的。この場合、出品者が負担するのであれ、落札者が負担するのであれ、送料は「80円」だ。
チケットはまだしも割引券などの場合、比較的少額で落札されることも少なくない。例えば、500円で落札した商品の配送料が550円では目も当てられないだろう。決済にしても銀行への振り込みやカード決済のみしか認められていないが、他のネット競売サービスでは手数料の兼ね合いから「切手」などでの支払いも多い。「確かに安全かも知れないが、配送や決済の選択肢ないことについてユーザーは本当に納得するのだろうか」と競合他社は「楽オク」について口をそろえる。(つづきは月刊「ネット販売」12月号にて)【鹿野利幸】
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