2006.12 無料公開記事      ▲TOP PAGE

新潮流・通販を変える〜ネットビジネスの開拓者に聞く〜

問題の根本は互いの「礼儀」にある

ティム・ウィリアムズ●日本アフィリエイト・サービス協会会長



 効果の高い販促手法としてEC事業者の間で定着したアフィリエイト広告。ある試算では市場規模は今後も拡大を続け、3年後には現在の3倍超の1000億円を突破する見通しだ。ただ、一方で報酬を得たいがためにルールを無視する媒体者や、報酬を支払わない広告主など不正行為も跋扈し始めている。成果報酬広告仲介業者7社で組織する日本アフィリエイト・サービス協会(JASK)は同広告の関係者が遵守すべき業界統一基準「アフィリエイト・ガイドライン」を発表。同広告の更なる成長を妨げる不正行為の排除に向けて動き出した。(聞き手は本誌・鹿野利幸)

掲示板に勝手にリンク貼るアフィリエイター、報酬を払わない広告主

欧米ようにはなりたくない

――先ごろ、JASKからアフィリエイト広告に関するガイドラインが発表されました。

まずは我々、アフィリエイト広告仲介事業者7社がなぜ、JASKを設立したのかを説明する必要があります。ここ数年でEC市場は急激に拡大を遂げました。これに伴い、アフィリエイト広告市場も右肩上がりに拡大し、2005年度の市場規模は314億円程度になりました。
 とは言え、日本のアフィリエイト広告は誕生したばかりの黎明期と言えます。これから更なる成長を促すには「業界」を作り、ルールを整理し、一定の基準を策定する必要があると思いました。先を行く欧米では仲介業者がそれこそバラバラに事業を展開したため、「業界」がなくルールもありません。ただ、日本はそうなりたくないと感じていました。
黎明期のうちに「業界」を作り、健全な形のアフィリエイト広告とすること我々、仲介事業者にとっても、また広告主、アフィリエイターにとっても結果、利益をもたらします。そう考え、当社(ウイリアムズ氏はバリューコマースの会長)が中心となる形で、主要な仲介事業者に呼びかけ、賛同を頂き、今年5月にJASKを発足、10月のガイドライン発表に至ったわけです。この指針を一般ユーザー、広告主、アフィリエイターに公開し、アフィリエイト広告に関する基準遵守と啓蒙を行い、それぞれが最低限のルールを守ることが、実は市場や効果の拡大につながると考えています。

――JASKの立ち上げにはアフィリエイト広告の「誇大表現」を問題視し規制強化を考える行政サイドの先手を打ったとの声もありますが。


確かに昨年、経済産業省の呼びかけで「ネット通販推進協議会」ができ、そこでアフィリエイト広告などに関し問題点などの話し合いはありました。また、JASK立ち上げやガイドライン策定時にも経産省に伺って意見を求めました。その時の経産省はアフィリエイト広告に対して、非常に研究はされていましたが、必ずしも否定的な見方ではありませんでした。誇大広告に対しては、懸念を持っていられましたが、我々の自主的な動きに対して、歓迎するというものです。JASK立ち上げの趣旨は先ほど説明した通り、あくまで我々からの自主的なものです。

――指針を策定しなければならないほどアフィリエイト広告市場は荒れているのでしょうか。


多くはありませんが、不正行為があるのは確かです。自身のサイトではなく勝手に公開掲示板やSNS等に広告を貼り、不正に報酬を獲得しているアフィリエイターや、逆に成果が発生しているのにも関わらず、「客質が悪いから」などといって報酬を支払わない広告主などですね。
アフィリエイトネットワークを提供する仲介事業者によって、広告主やアフィリエイターを承認するルールが異なるため、A社で不正行為を行う広告主やアフィリエイターが締め出されても、A社よりもルールの緩いB社に移動。そこも駄目になればC社、D社と不正行為を行う業者は「ネットワーク」を変え、根絶は難しいのが現状です。
とは言え、仲介事業者によって事業のスタンスなどがそれぞれ異なりますから、当然、管理の仕方も異なり、「何が良い」「こうしたほうがいい」とは一概には言えません。ただ、最低限のルールは共通しているはずです。何が迷惑行為でそれをどうすることが望ましいのか。まずはこれを決めることが、「業界」の健全発展につながっていくと思います。これがガイドラインを策定した理由のひとつです。

報酬発生時点をあいまいにするな


――アフィリエイト広告はEC事業者にとって有効な販促手法です。指針策定でEC事業者に何か"縛り"は出てきますか。


 あくまで最低限のルールを明文化したものですから、今回の指針によって、何かEC事業者に特別な"縛り"が生じるわけではありません。今回のガイドラインは細かいところをいちいち指摘するというよりは、「姿勢」の大枠を提示したものです。当たり前のことですが、EC事業者など広告主にお願いしたのは「成果報酬が発生する時点」を明確にしてもらいたいということです。
 資料やカタログの請求が発生した時点なのか、実際にサービス契約や物品販売が成立した時なのか。これをアフィリエイターと提携する前にあいまいにせず、誤解が生まれないよう分かりやすく事前に説明して欲しいわけです。
逆に今回のガイドラインではアフィリエイターにはスパム行為、不正クリックのようなことやめるということを盛り込んでいます。
アフィリエイトというと、アフィリエイターにとっては「不労所得」という表現をされることがあって、逆に広告主側も「成果に対してだけ払えばいい」という思いがありますが、考え方として「成果に対して払わなければいけない」わけです。今、言ったことは当たり前のようなことなのですが、お互いに対しての「礼儀」というのが実は根本にあると考えています。

(続きは月刊「ネット販売」にて)

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