2006.11 無料公開記事      ▲TOP PAGE

アマゾンJ、コンビニで買い物券の販売開始
――ネットで捕り尽した新客獲得策、第二ステップへ



ネットだけでは捕れない層

アマゾンジャパンは10月3日から、商品代金の支払いに使用できるプリペイド型買い物カードの販売をローソンなどのコンビニ店頭で開始した。米社などでは展開しておらず、日本発の試みとなる。アマゾンの買い物券と言えば、以前からアマゾンのECサイト上で販売されるオンラインギフト券が有名だ。
だが、今回の「買い物券」はネット上でアマゾンJが直接販売するのではなく、コンビニを介して販売する。こうした販売形態を採れば、少なからずアマゾン側の儲けは目減りするはずだ。それでもアマゾンJがコンビニでの買い物券販売に踏み切った理由――。それは未だ一般消費者の大半がそうであろう「ネット通販初心者」の獲得強化にありそうだ。
ECの先駆者として、独自開発のアフィリエイト広告や商品DBの後悔など様々なネットプロモーションを展開。ブログにもうまい形で入り込み、ネット上で取れるユーザーの多くは取りつくした感のある同社が、今後も継続的に新規顧客を獲得していくには、「ネットショッピングに不慣れな層」の取り込みが必要となる。
コンビニという一般消費者の生活に密着した「接点」を基点に、ネット通販を日常的に使わないため、ネットショッピングに興味があるものの、不安を抱く潜在顧客へのリーチ手段。今回のアマゾンJの動きの背景にはそうした狙いがあるようだ。

ローソンを中心に3チェーンで


アマゾンJが販売を開始したプリペイド型買い物券は「Amazonショッピングカード」。全国のローソン約8400店舗での販売のほか、フランチャイズ店舗のオーナーが取り扱いを決めたミニストップやエーエム・ピーエムの一部店舗でも販売を開始している。
プリペイド式カードで3000円と5000円分の2種類を用意。コンビニ店頭で購入後、カード裏面のスクラッチ部分を削ると、16桁の番号が記載されている。アマゾンJの通販サイト(PCおよびモバイル)で決済時に当該番号を入力すると、カード金額分の買い物ができる仕組み。同時に何枚でも使用でき、不足分は他の決済手段を足しても支払いができるという。 

購入実績者から未経験の友人へ


「Amazonショッピングカード」は企業のキャンペーンの景品のほか、贈答ニーズを想定。単独ECサイトでは国内最大規模のアマゾンJには、すでに相当数の固定顧客がおり、「アマゾンの便利さ」を享受している消費者が贈答用に友人にプレゼントするケースは多いと見られる。
当然、これまでのオンラインギフト券でもこうした「紹介」はあるにはあったが、オンライン上のギフト券である以上、贈答するにも誰でも良い一定以上のネット通販経験のある人に限られていたはずだ。
「Amazonショッピングカード」は手に取れる形のある買い物券。これならば、ネット通販の初心者の友人にも抵抗なくプレゼントでき、また貰った側もアレルギーはそれほどないだろう。アマゾンでの初回購入を誘発するリアル上での一種の「クチコミ効果」を生む可能性はある。
また、身近なコンビニで購入できることから、自らの決済手段として購入する消費者も増えそうだ。一般的になったとは言え、まだまだネット通販に不安を抱く層は少なくない。特にクレジットカード決済に抵抗を感じている層には有効と見られる。また、クレジットカードを持たない若年層など、これまでリーチし難かった新たな層を引き込む強いアプローチ手法になるのかも知れない。

日本だからこその決済手法


「Amazonショッピングカード」はアマゾンJ独自の決済手段。米本社を含む世界各国のアマゾンでは導入していない。これについて同社のチャン社長は「日本は図書券なども広く認知されており、効果的だと判断した」と説明している。同カードの販売の見通しについて「実数は非公表」(アマゾン広報)としているが、同ギフト券を販売するローソンでは年間で60億円程度を計画しているとコメントしている。
「Amazonショッピングカード」がどこまで普及し、ネットだけでは獲得できなかった層の開拓のトリガーになれるかは現状、不明だ。ただ、同社の貪欲なまでの新規顧客開拓の行方は、他のEC事業者も注視する必要がありそうだ。(つづきは月刊「ネット販売」11月号にて)【鹿野利幸】


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コンビニで現金で購入できる買物券「Amazonショッピングカード」の販売でネットだけでは捕れない「ネット通販初心者」の開拓を本格化する
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