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サービス力が勝敗分ける時代に突入

NTTデータ経営研究所
田村直樹氏(経産省BtoC調査担当者)



 経済産業省などが調査してまとめた「平成16年度電子商取引に関する実態・市場規模調査」概要〜情報経済アウトルック2005〜によると、ネット販売を中心としたBtoC市場は2004年度、前年比28%増の5兆6430億円だった。
 ネット販売は市場の拡大に伴い、徐々に一般化。通常の小売と近い概念になりつつあり、商品の価格や希少性だけではない総合的なサービス力が重要になってきた。同調査を担当したNTTデータ経営研究所の田村直樹氏に聞いた。

「横に広い市場」と「縦に深い市場」

――2004年度のBtoC市場規模が5兆円を超えました。実際に調査を行い、最も大きな特徴は何だと感じましたか。

 これまでは、商品の「安さ」と「限定感」が"ネットならでは"の特徴を生み出し、それがネット販売の需要をけん引する2本柱となっていました。しかし、2004年度はネット販売が通常の買い物と変わらない存在になりつつあることを強く感じました。

 例えば、売り上げの規模が大きいとされるヨドバシカメラですが、その伸びの要因は単なる価格訴求だけではありません。送料無料や設置サービスなどのサービスを強化することで、今までネットでは売りづらかった白物家電などが売れ始めていることも大きいのです。

 その辺を考えると、今後はサービス力が競合サイト間での勝敗を分ける大きな要因になると思っています。実際、商品分野別で見て成熟度が高い書籍では、アマゾンジャパンが「送料無料」「24時間発送」をいち早く打ち出し、圧倒的優位に立ちました。

 つまり、消費者の手元に商品が届くまでの間に、価格だけではない満足感をいかに最大化して提供できるか――ということです。これが重要になってきているのかなと強く感じます。

――ファッション・雑貨や食品など売り上げ規模が突出している企業が見当たらない商品分野もあります。

 結局、万人に受け入れられる商品分野ではないということなのではないでしょうか。

 例えば、判子やドックフードの専門店が年商1億円以上売っていたら、当該マーケットから考えてヨドバシカメラに匹敵する需要をネットで獲得しているとも考えられます。ですから、書籍や家電などを取り扱う企業と、それら企業の売り上げ規模を単純比較できないと考えた方がいいでしょう。

 こうした専門分野に特化した市場は、購入者に大きなこだわりがあり、価格やサービスとは別のところで購買意欲をかき立てられていることが多いと思っています。"こだわり"の市場は横に広くはありませんが、縦にものすごく深い。こうした深い穴のようなサイトは無数にあり、それらが束になると、かなりのボリュームにはなると思っています。
(聞き手は島田昇)

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