2005.8 無料公開記事    ▲TOP PAGE

「放送と通信の融合」

番組配信で具体化も
なお横たわる著作権問題



 「(ネットが)既存のメディアを殺す」(ライブドア・堀江社長)――。
 「テレビがネットを飲み込む」(フジテレビ・日枝会長)――。

 ニッポン放送の買収をめぐり、ライブドアとフジテレビの間で繰り広げられたトップ同士の舌戦は、ネットとテレビという新旧メディアの将来像をめぐる「イデオロギー論争」にまで発展した。ただ、対立の一方で何度も連呼されたキーワードが「放送と通信の融合」。互いに無視できる相手でないことは分かっていた。

 しかし、騒動の渦中でこの言葉を具体化する「青写真」はいずれの陣営も示せなかった。実態がない言葉だけが「一人歩き」していた感が強い。

 その後、ライブドアとフジテレビの戦争は、フジがライブドア保有のニッポン放送株を買い取る形で「玉虫色」に決着。これと歩調をあわせるかのように、「放送と通信の融合」を進める動きが加速している。地上波キー局が、自社のテレビ番組をネットで配信するビジネスに着手しているからだ。フジテレビは7月から、日本テレビ放送網は10月から一部番組の動画配信を開始。他局もこれに追随する動きと意欲を見せる。

 ただ、放送と通信がベストパートナーとなることをなお妨げる要因がある。「著作権」だ。

日テレ、映像のモールを構築へ
来年までに各社が一斉参入へ

 「第2日本テレビ」。日本テレビ放送網はネット上に、新たなチャンネルを設ける意気込みで「放送と通信の融合」に臨む。

 7月19日に発表した「VOD(ビデオ・オン・デマンド)への本格参入では、ネット上に「第2日本テレビ」という名称で映像コンテンツの商店街(モール)」を構築し、パソコン、携帯などへ向け、自社番組を配信するとした。

 まず、バラエティやドキュメント、ニュースを3〜15分流す。テレビと違い、コンテンツの内容を凝縮させていることが特徴だ。また18万本ある既存の番組コンテンツを再構成して放映することやテレビ放送との連動も視野に入れる。さらに、日テレが有するキラーコンテンツ「プロ野球巨人戦」の配信も検討するという力の入れようだ。

 入会は無料で一番組当たり100円前後の料金設定とする模様。まず、100万人の会員獲得を目標としており、3年後には、同ビジネスで100億円の売り上げを目指すという。

 また、日テレのモデルは、サイト上での広告収入も視野に入れる。会員への登録時に、性別や年令、住所などの会員属性を得ることで、ターゲット広告を展開するというものだ。テレビ番組というソフトを切り口に、新たな広告メディアを獲得しようとする戦略とも言えよう。

 フジテレビは、「フジテレビオンデマンド」を七月から開始。OCNやソネットなど大手プロバイダーを通じて、まずCS放送向けに放映しているスポーツやライブ番組をネットで流す。視聴価格は2百―5百円。

 将来的にはフジの既存コンテンツやオリジナル番組も放映するという。視聴はパソコンが中心で携帯には対応していない。課金、決済はプロバイダーが行う仕組み。ただ、このモデルでは日テレのようにネットからの広告収入は期待できないことになる。

 また、東京放送はパソコンとケーブルテレビへ向けた、動画配信を準備中。テレビ東京は、アニメの配信をまず先行させて様子をうかがっている。テレビ朝日もこうしたネット配信を検討中で、来年までに各社が一斉に参入する方向と言えるだろう。「放送と通信の融合」の第1段階は動き出した。(つづく)
(野田靖)

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